エルフ王国 - 14
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
夜もすっかり更けていた。
小さな家の中で、ヴェインは本を読みながら、静かに紅茶を楽しんでいた。
コンコン。
玄関からノックの音が響いた。
ヴェインは本を閉じ、玄関へ向かう。
扉を開けた瞬間、彼は一瞬固まった。
「おお……アウエルか」
「どうして俺の家を知ってるんですか?」
「宿屋の主人に、あなたの住んでいる場所を聞きました」
「そうか……」
ヴェインは薄く笑った。
「それで?」
「こんな夜遅くに、どうしたんだ?」
「少し話したいことがあります」
「今から?」
「明日まで待てないか? 明日、みんなと一緒に話せばいい」
アウエルは首を横に振った。
「まだ、みんなに話すべきことではないと思います」
ヴェインはしばらくアウエルの表情を見つめてから、横へ退いた。
「ずいぶん深刻そうな顔をしてるな……」
「入れ」
「話を聞こう」
二人は居間へ入り、向かい合って座った。
「何か飲むか?」
「紅茶でいいです」
ヴェインはもう一杯紅茶を用意し、アウエルの向かいに腰を下ろした。
数秒間、部屋に沈黙が流れる。
やがて、ヴェインが口を開いた。
「それで、そんなに重要な話っていうのは何だ?」
アウエルはまっすぐ彼を見た。
「王の事件についてです」
「……何が起きたのか、分かったと思います」
ヴェインはゆっくりとティーカップを置いた。
「……ずいぶん思い切ったことを言うな」
「もう分かったのなら、明日みんなに話せばいいんじゃないか?」
「まだ仮説にすぎないからです」
ヴェインは眉を上げた。
「それを俺に話すのか? なぜ?」
「あなたなら、この仮説を確かめて事実に変えられるかもしれないからです」
ヴェインの顔に小さな笑みが浮かんだ。
「面白いな……それで?」
「まず、ダークエルフが犯人だとは思っていません」
「ですが……」
「この事件に関わっているとは思います」
ヴェインは黙って耳を傾けた。
「今日の午後、あなたはダークエルフの村が襲撃されたと言いました」
「それに、今回が初めて盗賊に襲われたわけではないとも」
ヴェインはゆっくりとうなずいた。
「俺は、盗賊の目的は奴隷じゃなかったと思います」
「少なくとも……普通の奴隷ではない」
「どういう意味だ?」
「ダークエルフが必要だったんです」
「毒キノコを育てるために」
ヴェインの表情がわずかに変わった。
「ダークエルフは、そのキノコが毒を持つ前に、いつも処分しているんです」
「だから盗賊は、ダークエルフを連れ去った」
「毒を作るために」
沈黙が落ちた。
「これで、司書を殺害しようとした方法が分かります」
「王の場合も……おそらく同じです」
アウエルは続けた。
「この森の外に、神聖魔法の研究と使用に人生を捧げている小さな村があります」
「そして、いくつかの情報によれば……その村も盗賊に襲われています」
ヴェインの目が細くなる。
「……続けろ」
「もし、二つの村が襲われたのなら……」
「……今、誰かが毒を作れる者たちを手に入れている」
「……そして、神聖魔法を使える者も手に入れている」
「つまり、盗賊がすべての黒幕だと?」
アウエルはすぐに首を横に振った。
「いいえ」
「それでは辻褄が合いません」
「盗賊が、一つの国全体を敵に回すような危険を冒すとは思えない」
「報酬に見合いません」
「だから……」
「……誰かに雇われているだけだと思います」
ヴェインは静かに腕を組んだ。
「なるほど……」
「では、王はどうなんだ?」
アウエルは紅茶を一口飲んだ。
「……まだ生きていると思います」
その言葉に、ヴェインは初めて驚いた。
「……生きている?」
「なぜそう思う?」
「まず、あなたは王冠がなくなったと言いました」
「つまり、今も犯人が王冠を持っているはずです」
「ですが、今まで犯人が王冠を使えるほど相応しい人物だという兆候はありません」
「それに、犯人の目的は王になることではないと思います」
「むしろ……王という地位そのものを消したかった」
「王が殺された場合、王冠は相応しい人物と共鳴して、新しい王を選ぶんですよね?」
ヴェインはゆっくりとうなずいた。
「そして、それは犯人にとって都合が悪い」
「新しい王が誕生すれば、その王に対処しなければならない」
「だから、王座を空席のままにした」
部屋が完全な静寂に包まれる。
アウエルは続けた。
「つまり……王は今も生かされたまま、犯人に捕らえられている」
一拍置いて、アウエルは言った。
「……いや」
「犯人に捕らえられたのではなく、その直前に逃げたのだと思います」
ヴェインの目がわずかに見開かれた。
「逃げた?」
「あなたは重要なことを教えてくれました」
「王冠は、身につけた者の姿まで変える」
「そして、王は一度も王冠を外したことがない」
「なら、犯人が王の本当の顔を知らない可能性があります」
「どんな神聖魔法を使ったのかは分かりません」
「ですが、王は最後の瞬間に逃げることができた」
「犯人は王冠だけを持ち去ることになった」
ヴェインはゆっくりと椅子にもたれた。
「王は逃げた……」
「……王冠を持たずに」
「どこにでもいる普通のエルフになった」
「しかし同時に、何もできなくなった」
「王冠がどこにあるのか分からない」
「それに、自分が王だと名乗っても……」
「誰も、彼の言葉を信じない」
「そして犯人はすぐに動き、彼を捕らえようとする」
「だから、王は今も身を隠している」
ヴェインは何も言わず、アウエルを見つめた。
「……面白いな」
「だが、なぜ王が隠れていると思う?」
「犯人が王を逃がしてしまう可能性なんて、かなり低いだろう?」
「その通りです」
アウエルは冷静にうなずいた。
「だからこそ、あなたなら俺の話を確かめられると言ったんです」
そして、アウエルはヴェインを指差した。
「俺がそう考えた理由は……あなたです」
「あなたは、俺たちがここへ来た時からずっと怪しい」
「まず、王を探すためのクエストを作ったのはあなたです」
「司書がそんなことをするのは、少し妙だ」
「二つ目」
「あなたはこの事件について、あまりにも多くのことを知っている」
「……いや、知りすぎていると言ったほうがいい」
「あなたが王宮の王立図書館で働く司書だということは知っています」
「でも……どうしてそこまで詳しい?」
「最初は、ただの変わった人間だと思っていました」
「ですが、今日あなたはダークエルフの村が襲撃されたことまで知っていた」
「司書が、なぜダークエルフの村の襲撃に関わっている?」
「それに、トバリが言っていたことを思い出せば……」
「この村を訪れるエルフは、衛兵と枢機卿、そして王以外には一人もいない」
「いや、衛兵と枢機卿、そして王以外には一人もいない」
「それなのに、トバリはあなたと親しそうだった」
「あなたは多くのことを知っている」
「ダークエルフの村を訪れ、彼らもあなたを知っている」
「そして、外から来た俺たちに自らこの事件を調べるよう頼んだ」
アウエルはゆっくりとカップを置いた。
「だから……」
「……答えは一つしかない」
アウエルはヴェインをまっすぐ見つめた。
「あなたが行方不明になった王なんですね?」
沈黙。
数秒間……。
……二人の間に、誰も言葉を発さなかった。
そして――
ヴェインが笑った。
静かで、心からの笑いだった。
「はは……」
「まあ、外から来た者たちにこの事件を手伝ってもらえば、王を見つける助けになると思っただけなんだが……」
「まさか、こんなに早く見抜かれるとはな」
そう言って、彼は立ち上がり、窓へ向かって歩いた。
「君は本当にすごいな」
月明かりに照らされた街を見つめる。
「俺の依頼を、適任の人たちが引き受けてくれたようだ」
「じゃあ……君は枢機卿たちを疑っているんだな?」
ヴェインはうなずいた。
「俺も枢機卿たちを疑っている」
「彼らは、これまでの代の枢機卿たちとは違う」
「外から来た者たちを、本当に嫌っている」
「外から来た者たちに危害を加えないよう、何度も注意したんだが……」
「まさか、その憎しみがこんなことにまで発展するとは思わなかった」
アウエルは彼を見た。
「ところで、まだ一つ気になることがあります」
「何だ?」
「彼らは、どんな神聖魔法を使った?」
「それに……どうしてあなたは生きていて、しかも逃げられたんです?」
「俺は神聖魔法について、あまり詳しくない」
「覚えているのは、図書館に入ったことだけだ」
「中は静かで、誰もいなかった」
「そして……その後、何も感じなくなった」
アウエルは眉をひそめた。
「どういう意味です?」
「本当に変な感覚だった」
「自分の身体がまったく感じられないんだ」
「腕も、脚も……何もかも」
「まるで、身体だけが突然その場で死んでしまったような感覚だった」
「でも、意識はあった?」
アウエルが尋ねる。
「ああ」
「だが、何も見えなかった」
「音も聞こえない」
「すべてが真っ白だった」
「それから突然、また身体を動かせるようになった」
「その時、王冠がすでになくなっていることに気づいた」
「だが、部屋には誰もいなかった」
「誰も……」
「ただ……」
「誰かの気配を感じた」
「呼吸する音だ」
「ものすごく荒い呼吸音だった」
「だから、本棚の一つに隠れた」
「だが、誰の姿も見えなかった」
「枢機卿たちが来るまではな」
「たぶん、使者がすでに彼らへ知らせていたんだろう」
「彼らが去った後、俺はそのまま王宮を出た」
「普段のヴェインとしてな」
「なるほど」
アウエルは黙り込んだ。
「それと……ドラゴンは?」
ヴェインは頬を掻いた。
「あれは個人的な問題だ」
「今回の事件とは関係ない」
「分かりました」
「では、今のところ最大の候補が枢機卿たちだと分かったわけですね」
「なら、彼らを調べるためにあなたの協力が必要です」
「それなら任せろ」
「君たちが調べられるように、方法を考えておく」
「まずはどうなるか様子を見よう」
ヴェインは窓の外へ目を向けた。
夜はさらに深くなっていた。
「もう夜も遅い」
「今日は帰って休め」
彼は玄関の扉を開けた。
アウエルが外へ出ようとした時、ヴェインが突然声をかけた。
「ああ、そうだ」
「一つ聞きたいことがある」
「何です?」
「君は神聖魔法について、ずいぶん詳しいようだな」
「君は、彼らが神聖魔法を使ったと言った」
「それに、盗賊に襲われた村があることまで知っている」
「どうしてそこまで知っている?」
アウエルは数秒、その場に立ち尽くした。
「……すみません」
「それは俺の事情です」
それだけ言うと、彼は夜の闇へ歩いていった。
ヴェインは静かに彼の背中を見送った。
扉を閉めようとした、その直前――
何かが視界の端に映った。
壁の陰に……
誰かが隠れていた。
その人物はすぐに振り返り、走り去った。
ヴェインは眉をひそめた。
「……ただ通りかかっただけか」
そう呟き、静かに扉を閉めた。
その頃、外では――
街は静まり返っていた。
一人の人影が、暗闇の中を必死に走っていた。
荒い息を吐きながら。
彼女は自分の家に辿り着くまで、一度も立ち止まらなかった。
扉を勢いよく開ける。
「……ヴェイン……」
シルフィーは扉にもたれかかり、息を整えようとした。
震える手を胸元に当てる。
「……ヴェイン……」
彼女はゆっくりと床へ視線を落とした。
「……王だった……の?」




