エルフ王国 - 13
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
すでに朝になっていた。
全員が宿の酒場に集まっていた。
リッカが頭を押さえながら入ってくる。
「おはよう、みんな」
「おはよう」
他の皆が返事をする。
「それで? 少しは楽になったか?」とグラムが笑いながら尋ねた。
「まあ……頭はまだ少し痛いけど……」
「それなら生きてるだけマシだな」
グラムが苦笑する。
「ヴェインを待とう。まだ来てないみたいだからな」
リッカは部屋を見回した。
「……あれ?」
眉をひそめる。
「シルフィーは? いつも一番早く来るだろ?」
ヘレンとアシュリーは顔を見合わせ、それから気まずそうに目を逸らした。
「……」
「……なんだよ?」
誰も答えない。
やがてリッカはアウエルの隣に座り、小声で尋ねた。
「なあ、俺が酔っ払った後、昨夜何があったんだ? シルフィーに何かあったのか?」
「知らない」
アウエルは短く答えた。
「……昨夜、何があったんだ?」
リッカは眉をひそめたが、それ以上尋ねる前に、皆は再びヴェインを待ち始めた。
朝が過ぎた。
昼も過ぎた。
そして、午後も過ぎた。
それでも、ヴェインは一向に姿を現さなかった。
ついにリッカはテーブルに突っ伏した。
「あーもう……ヴェインはどこだよ?」
「昨日の夜、あいつにも何かあったんじゃないか?」
グラムが首を横に振る。
「いや、昨夜ヴェインには何もなかったぞ」
「それにしても、ヴェインが来ないなんて変だな」
「今日は何か用事があるとも言ってなかったし」
「もしかしたら王立図書館で何かあって、ヴェインが対応しなきゃならなくなったんじゃない?」
アシュリーが言った。
「でも、一日中っていうのは変だろ」
グラムが腕を組む。
すると、ヘレンが何かを思い出したように顔を上げた。
「……待って」
グラムを見る。
「昨日の夜、変な悪寒を感じたって言ってたよね? それが枢機卿たちの方から来たって」
「もしかして……私たちがダークエルフの村へ行ったことを、もう知られてるんじゃない?」
「もし、ヴェインに何かあったとしたら……?」
テーブルが一瞬で静まり返った。
グラムは顎に手を当てる。
「うーん……でも変だな。もし本当に俺たちを黙らせたいなら……」
「どうしてヴェインだけなんだ?」
「俺たちを追い出すとか、もっと酷いことをするんじゃないか?」
「ちょっと待て。悪寒って何の話だ?」
リッカが尋ねた。
ギルが彼を見る。
「祭りの最中にドラゴンが現れただろ? その後、誰かに見られているような妙な感覚があったんだ」
「しかも、その方向は枢機卿たちの方からだった」
リッカは目を瞬かせた。
「悪寒? 変だな。俺は何も感じなかったぞ」
「じゃあ、その感覚を感じたのは俺たち三人だけってことか」
グラムが言った。
「三人?」
「そうだ。アウエルも同じ感覚を感じていた」
リッカは、ずっと黙っていたアウエルを見つめる。
「おい、なんでお前は一言も言わなかったんだ?」
アウエルは黙ったままだった。
「なあ、本当に昨夜、俺が酔ってる間に何かあったのか?」
全員が黙り込み、昨夜の出来事を思い出したくないような顔をしていた。
ヘレンは重くなった空気を変えるように口を開いた。
「とにかく、枢機卿たちには何か怪しいところがあるってことよね?」
「なら、調べてみた方がいいんじゃない?」
「そうだな」
グラムが答える。
「でも、俺たちだけで王宮に入ることはできない」
「それを手配できるのはヴェインだけだ」
「だったら、ヴェインの家を調べてみたら?」
アシュリーが提案した。
グラムは外を見る。
「でも、もうほとんど夜だ。明日まで待とう」
「今日は何か忙しかっただけで、明日になれば来るかもしれない」
「それでも明日になっても来なかったら、ヴェインの家を調べよう」
するとヘレンがすぐに立ち上がった。
「よし、決まりね。行きましょう、みんな」
アシュリーとエリンもヘレンの後に続いて外へ出る。
「おい、どこ行くんだ?」
リッカが尋ねる。
「悪いわね……女同士の話よ」
そう言い残して、三人はリッカが文句を言う前に宿を出ていった。
そして、再び朝になった。
全員がまた宿の酒場に集まり、ヴェインを待っていた。
朝が過ぎた。
昼も過ぎた。
しかし、やはりヴェインは姿を見せなかった。
ついにヘレンがため息をついて口を開いた。
「ねえ、もう待ちすぎじゃない? そろそろヴェインの家を調べに行かない?」
「俺もそう思う」
アシュリーも続ける。
「ヴェインみたいな人が来ない上に、何の連絡も寄越さないなんて変よ」
「分かった……」
グラムが答えた。
「まず宿の主人にヴェインの家を聞いてみよう」
グラムが立ち上がろうとした、その時。
宿の酒場の扉が開いた。
「ヴェイン!」
全員が一斉に振り向く。
そこにはヴェインが立っていた。
「すまない」
申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「おい、昨日どこにいたんだよ? 俺たちずっとここで待ってたんだぞ?」
リッカが言った。
「本当にすまない。昨日は来られなかったんだ」
「それで、どうして来られなかったの?」
ヘレンが尋ねる。
ヴェインは気まずそうに頬を掻いた。
「実は……ダークエルフの村で大変なことが起きてな。それで、彼らを助けなきゃならなかったんだ」
「厄介なこと?」
グラムが尋ねる。
「何があった?」
「えっと……またダークエルフの村が襲われたんだ。それで、何人かの子供が攫われた」
全員が驚いた。
「何だって!?」
「そうなんだ。夜中に盗賊がやって来てな」
「何人かの子供を攫っていったから、俺も盗賊を追うのを手伝わなきゃならなかった」
「それで、子供たちは? 無事なのか?」
リッカが尋ねた。
「ああ。幸い、王国の巡回隊が駆けつけてくれてな。攫われた子供たちは全員助け出せた」
「死者も出なかった。だから、もう大丈夫だ」
「でも……また襲われたって言ったよな?」
リッカが尋ねる。
「お前たちも、あの村を見ただろ?」
「まともなものなんてほとんど何もない」
「壁もない」
「警備する兵士もいない」
「昔から、あの村は狙われやすいんだ」
「盗賊にとっては格好の標的だからな」
「前にもダークエルフが何人か攫われたことがある」
「でも、もう大丈夫だ」
「今はもう、すべて収まっている」
テーブルから安堵のため息が漏れた。
「……よかった」
リッカが椅子にもたれかかる。
「心配させやがって」
ヴェインは苦笑した。
「ああ……昨日ここに来られなかったことも、何も伝えられなかったことも、本当にすまない」
「そんな余裕がなかったんだ」
グラムが笑った。
「なら、それでいい」
「俺たちのことは気にするな」
「お前は少し休んだ方がいい」
「待ってくれ。本当にいいのか? 今日の調査なら、まだ手伝えるぞ」
ヘレンはすぐに首を横に振った。
「ダメ」
「一晩中盗賊を追いかけてたんでしょ?」
「寝なきゃ駄目よ」
アシュリーも笑う。
「私たちはどこにも行かないから」
ヴェインは少し迷った後、頷いた。
「そうか……ありがとう」
「それと、本当にすまなかった。何も連絡できなくて」
そう言って別れを告げると、ヴェインは静かに宿を出ていった。
「じゃあ……また暇な一日ね」
ヘレンが腕を伸ばしながら言った。
「ああ、そうみたいだな」
リッカが答える。
「でも考えてみたら、ダークエルフの村って盗賊に襲われやす過ぎない?」
アシュリーが尋ねる。
「そうね。警備兵もいないし、村を守るための設備もほとんどないみたいだし」
「それに、前回の襲撃もちゃんと対処できなかったって言ってたわ」
ヘレンが付け加える。
「でも、どうして盗賊はダークエルフを攫うんですか?」
エリンが尋ねた。
「どういう意味?」
ヘレンが首を傾げる。
「そんなの決まってるじゃない。奴隷として売るためよ」
「そうね。身分の高い人の中には、他種族の奴隷を欲しがる人もいるから」
アシュリーも続けた。
「う、うん。それは分かってるけど……」
「私、ダークエルフを攫っている盗賊なんて見たことないんです」
「何を言ってるのか分からないんだけど?」
「俺には分かった気がする」
リッカが答えた。
「俺たち三人は、いつも盗賊討伐の依頼を受けてただろ?」
「その経験から言っても、ダークエルフを捕虜にしている盗賊なんて一度も見たことがない」
「う、うん。そういうこと」
「だったら、盗賊がダークエルフを攫わないのなら……どうしてこの村を襲うんだ?」
ヘレンが尋ねた。
沈黙が落ちた。
グラムはアウエルを見る。
「ヴェインが戻ってきてからずっと考えてただろ」
「何か分かったか?」
アウエルは数秒間黙った。
そして、ようやく口を開いた。
「……盗賊は、ダークエルフのオーラの秘密を知っているんじゃないか」
「だから、ダークエルフそのものは攫わない」
「彼らのオーラが自分たちや他の奴隷に害を及ぼすことを恐れているんだ」
「盗賊と戦えるほどの力はなくても、オーラだけで盗賊を怖がらせることはできる」
「でも、ヴェインが言ってた襲撃は?」
ヘレンが尋ねる。
「分からない」
「ただの推測だ」
「どんな?」
アウエルはしばらく黙った。
「確認したいことがある」
「だから、明日ヴェインともう一度話そう」
リッカはため息をついた。
「はぁ……じゃあ今日は、また待つだけの日ってことか?」
「仕方ないだろ。ヴェインも疲れてるんだ」
グラムが言った。
「今日は休んで、明日の話し合いに備えよう」
そうして、皆はそれぞれ別のことをして過ごすことになった。
エリンが部屋を出ようとした、その時。
「エリン」
彼女は振り返った。
「少し聞きたいことがある」
エリンは目を瞬かせる。
「……今?」
「ああ」
それ以上何も言わず、彼女はアウエルについていった。
部屋に入ると、アウエルは静かに扉を閉め、外の様子を確認してから鍵を掛けた。
エリンは首を傾げる。
「……何ですか?」
「三年前のことを覚えているか?」
彼女の表情が強張った。
「三年前……?」
「ああ。君の村が襲われた日のことだ。覚えているか?」
エリンは頷いた。
「君の村を襲った連中のことを覚えているか?」
「重そうな鎧を着ていたか?」
エリンは慎重に記憶を辿る。
「うーん……はっきりとは覚えてないけど……たぶん、着てなかったと思います」
「旗は?」
「何か旗を掲げていたか?」
エリンは首を横に振った。
「馬は?」
また首を横に振る。
アウエルは視線を落とした。
「……盗賊だったと言えるか?」
「……た、多分……」
「でも、分かりません。あの時は夜だったし……すごく怖かったので」
「いや、もういい。ありがとう」
「これって……王様の件と何か関係があるんですか?」
「分からない」
「だが、それを確かめられる人がいる」
アウエルはドアノブに手を伸ばした。
「ま、待って」
アウエルが止まる。
エリンは彼の背中を見る。
「一つ聞きたいことがあります」
振り返らず、アウエルは尋ねた。
「何だ?」
「どうして……三年前に起きたって知ってるんですか?」
部屋が静まり返った。
長い間、アウエルは答えなかった。
そして、振り返ることなく、
「……ただの推測だ」
そう言って、扉を開けた。
……そして、エリンにさらなる疑問だけを残し、そのまま部屋を出ていった。




