エルフ王国 - 6
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
少女たちはそのままエルフの国を歩き回っていた。
いくつかの店を巡り、途中で土産物も少し買っていく。
しばらく歩いたところで、シルフィがふと皆に尋ねた。
「ねぇ、みんなってアウエルと仲がいいの?」
「アウエル?」と最初に答えたのはヘレンだった。
「ああ、たぶん勘違いしてるわ。実は私たち、別々のパーティーなの」
「私とアシュリー、それからグラムとギルが同じパーティー。エリンがアウエルと同じパーティーなのよ」
「だから、彼のことを知りたいなら、エリンに聞くのが一番ね」
シルフィはエリンへ視線を向けた。
「う、うーん……一緒にいるようになって、もうしばらくになります」
「どれくらい?」
「えっと……もう二か月くらいだと思います」
「二か月……」
シルフィは驚いたような表情を浮かべた。
「彼って、いつもあんな暗い顔をしてるの?」
エリンは少し考えてから頷く。
「は、はい。初めて会った日から、ずっとあんな感じです」
「で、でも悪い人じゃないんです」
「どうしてそんなこと聞くの?」
アシュリーがにやりと笑った。
「もしかして気になってる?」
ヘレンもすぐに乗っかる。
「えっ、もしかして私たちの巡回隊長さん、恋でもしちゃった?」
「ち、違うわよ!」
シルフィは慌てて首を振る。
「そんなわけないでしょ。ただ……あの人、昔の知り合いにそっくりだから」
「昔の人?」
「……うん」
その頃、宿では男たちがまだヴェインを待っていた。
リッカは退屈のあまり今にも倒れそうになっている。
そこへようやく宿の扉が開き、ヴェインが姿を現した。
「おはよう、みんな」
「おっそい!」
リッカが真っ先に叫ぶ。
「ずっと待ってたんだぞ!」
ヴェインは苦笑しながら頭を掻いた。
「ごめんごめん。枢機卿たちとの話が終わったのが遅くてさ。家に帰ったら寝過ごしちゃった」
「それで?」
グラムが尋ねる。
「説得できたのか?」
「うーん……」
ヴェインは頬を掻いた。
「説得はできなかった」
「はぁ!?」
「いや、頑張ったんだよ? でも簡単じゃないんだ」
「じゃあどうするんだよ」
「でもね」
ヴェインは笑みを浮かべた。
「会ってくれることにはなった」
場が静まり返る。
「待て」
リッカが顔を引きつらせる。
「つまり俺たちが直接説得しろってことか?」
「まあ、そんな感じ」
「無茶苦茶だろ……」
「でも枢機卿に会えるだけでも奇跡なんだよ。特に人間にとってはね」
「外の人間を嫌ってるからか?」
グラムが尋ねる。
「……うん」
ヴェインはため息をつく。
「昔からそうなんだ」
「どう? 説得できそう?」
男たちはしばらく黙り込む。
やがてアウエルが口を開いた。
「選択肢はない」
全員が彼を見る。
「説得できなければ、この依頼は終わらない」
「よし、それじゃあ枢機卿たちに会いに行こう」
出発しようとしたヴェインが辺りを見回した。
「そういえば女の子たちは?」
「観光中」
ギルが答える。
「シルフィが案内してる」
「シルフィが?」
ヴェインは目を瞬かせた。
「あの子、何してるんだろう」
「さあ」
「まあいいや。せっかく国を見て回ってるんだし、俺たちは枢機卿を説得しよう」
男たちは宿を出て王宮へ向かった。
歩きながら、リッカがヴェインに尋ねる。
「なあ……シルフィっていつもあんな感じなのか?」
「どんな?」
「俺たちについて回ってること」
ヴェインは少し考え込んだ。
「いや、違うと思う。長い付き合いだけど、あんな姿は初めて見た」
「やっぱ変だよな」
「……たぶん理由は分かるよ」
全員がヴェインを見る。
「何だ?」
「君が昔の仲間にそっくりだから」
ヴェインはアウエルを見ながら言った。
「はぁ!?」
リッカが驚きの声を上げる。
「何言ってるんだ。俺は人生でエルフなんて会ったことないぞ」
アウエルは即座に否定した。
「もちろん、そういう意味じゃない」
ヴェインは首を振る。
「昔、シルフィも冒険者だった」
「エルフの国を出て、外でパーティーを組んでいたんだ」
「でもある依頼で……」
「仲間全員を失った」
空気が一気に重くなる。
「一人だけ生き残ったんだ」
「そして、その後に不思議なことが起きた」
「何だ?」
リッカが尋ねる。
「ある日、ギルドで泣いていた彼女に、一人の男が声を掛けた」
「新しいパーティーに誘ってくれたんだ」
「その人は、前のパーティーリーダーとまったく同じ顔をしていた」
誰も言葉を発しない。
「ただの偶然じゃないのか? 似てる人間なんて珍しくないだろ」
アウエルが淡々と言う。
「まあ……それだけならね」
ヴェインは頷いた。
「でも、一度だけじゃなかった」
全員が再び彼を見る。
「そのパーティーが解散したあとも……」
「また同じ顔の人に出会った」
「その次も」
「そのまた次も」
「仲間を失うたびに……」
「必ず同じ顔の誰かと出会った」
「そのたびに新しいパーティーを作って、新しい思い出を築いて……」
「そして、そのたびに――」
「また失った」
誰も口を開かなかった。
「最後には耐えられなくなって」
「冒険者を引退して、今は街の巡回隊をしている」
「つまり……」
「冒険者を辞めたあとに……」
「また同じ顔の人間が現れたってことか」
「そういうことになるね」
アウエルは興味なさそうに呟いた。
「面倒な話だな」
「……それだけ?」
「他に何て言えばいい」
リッカは呆れたように肩を落とす。
「俺はあいつのことなんて知らない」
やがて一行は王宮区へ到着した。
王宮区にいるのはエルフだけで、外の種族は一人もいない。
そして、ほとんど全員が彼らへ視線を向けていた。
「ここに来るの、やっぱりまずかったんじゃないか? みんな見てるぞ」
リッカが小声で言う。
「大丈夫」
ヴェインは落ち着いたまま答えた。
歩きながら、グラムが別の質問をする。
「そういえば枢機卿について聞きたい」
「本当に会うのってそんなに難しいのか?」
「うーん……今の枢機卿たちならね」
「『今の』?」
リッカが首を傾げる。
「枢機卿は百年ごとに交代するんだ」
「そして今の世代は……」
「歴代でも一番厳しい人たちかもしれない」
「外の者を本当に嫌ってる」
「その枢機卿って誰が選ぶんだ?」
ギルが尋ねた。
「えっと……最終的には国王だよ」
「えぇっ!?」
リッカが叫ぶ。
「そんな目で見ないでよ」
ヴェインは苦笑した。
「国王はあの人たちとは全然違う」
「本当はエルフも他種族も仲良くしてほしいと思ってる」
「じゃあ何でそんな枢機卿を選んだんだ?」
「国王にも好き勝手に選ぶ権限はないんだ」
「候補者はまず国民が選ぶ」
「国王はその中から最終決定をするだけ」
「だから自由には選べない」
グラムはさらに尋ねた。
「国王も百年ごとに代替わりするのか?」
「うーん……そこは少し説明が必要かな」
ヴェインは頭を掻く。
「エルフ王は国民が選ぶわけじゃない」
「王冠に選ばれるんだ」
「……王冠?」
リッカが聞き返す。
「エルフ王になるには二つの条件がある」
「一つ目は、その王冠を受け継ぐこと」
「そして二つ目――」
「王冠に認められること」
「待て、その王冠って……まさか《統べる者》の?」
グラムが目を見開く。
「そう。それ以外に何があるの?」
ギルも驚いた。
「本当に存在するのか……」
「《統べる者》って何?」
リッカが尋ねる。
「説明は長くなるけど、昔、この世界には四柱の守護者がいた」
「森を守る《フォレストエルク》」
「海を守る《ジャイアントホエール》」
「山を守る《バハムート》」
「そして空を守る《ブラックドラゴン》」
「でもフォレストエルク一体だけでは森全体を守れなかった」
「だから自らの力を一部の種族へ分け与え、共に森を守らせた」
「そこで選ばれたのがエルフだ」
「フォレストエルクは王冠を創り、その中へ自らの力の一部を宿した」
「その王冠を戴く者がエルフ王となる」
「でも、それならみんな王になろうと争うんじゃないか?」
リッカが言う。
「その通り」
「だから王冠は、自らが相応しいと認めたエルフだけを選ぶ」
「認められた者は莫大な力を授かり、その姿さえ変化する」
「そして王となる」
「つまり王が相応しい限り、王は代わらないってことか?」
「そうだね」
「あるいは王が死ねば、王冠は新たなエルフを選ぶ」
「ただ、その力は王の寿命も延ばす」
「普通のエルフは五百年ほど生きるけど、エルフ王は千年近く生きられる」
ギルが尋ねる。
「でも王がいなくなったなら、《統べる者》はどうしたんだ? 探してくれないのか?」
「うーん……正直分からない」
ヴェインは首を振る。
「もう何百年も姿を見てないんだ」
「それに、このエルフの森だけが守るべき森じゃないだろ?」
「世界中には王のいない森だってたくさんある」
リッカはアウエルへ近づき、小声で囁く。
「なあ、何かおかしくないか?」
「シヒルが本当にバタラで、あいつの話が本当なら……」
「何で《統べる者》の話を一度もしてないんだ?」
アウエルはしばらく考え、ため息をついた。
「さあな」
「あいつ、まだ何か隠してる」
「しかも、かなりな」




