表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/32

エルフ王国 - 5

読んでいただきありがとうございます。


日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。


もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

朝になった。


アウエルとリッカがまだ部屋で眠っていると、不意に扉が勢いよく開かれた。


「おい、お前ら! 起きろ!」


ギルの大声に、リッカは飛び起きそうになる。


「な、何があった!?」


「朝飯の時間だ」


「それだけかよ!?」


ギルはニヤリと笑う。


「はぁぁ……」


リッカは大きくため息をつきながらベッドを降りた。一方のアウエルも、半分眠ったような目でゆっくりと体を起こす。


二人は顔を洗い、宿の食堂へ向かった。


宿の酒場はすでに多くの客で賑わっていた。


そのほとんどはエルフではない。


獣人、蜥蜴人、ドライアド、それに見たこともない種族までいる。


エルフは宿の主人以外、一人も見当たらなかった。


どうやらこの宿は、外部の者を受け入れることで有名らしい。


アウエルとリッカは仲間たちのテーブルへ向かう。


全員すでに席について食事をしていた。


「よく眠れたか?」


グラムが尋ねる。


「最高だったよ」


リッカが笑顔で答える。


アウエルは何も言わない。


その答えは誰もが知っていたため、誰も聞き返さなかった。


「ヴェインは?」


アウエルが食事をしながら尋ねる。


「さあ。今朝から一度も姿を見てないわ」


ヘレンが肩をすくめる。


「待つしかないな」


グラムが言う。


「たぶん、まだ枢機卿たちを説得してるんだろう」


そしてアウエルは、向かいに座る人物へ視線を向けた。


「それで、お前は何をしてるんだ?」


彼の正面にはシルフィが座っていた。


宿の主人を除けば、この場で唯一のエルフだ。


「別に」


シルフィは何気なく答える。


「あなたたちを見張ってるだけ」


「まだ俺たちを疑ってるのか?」


リッカが尋ねる。


「そういうわけじゃないわ。ただ、お客様に何か起きないよう見てるだけ」


「お客様?」


リッカは首をかしげる。


「ここは私の国でしょう?」


それからシルフィはアウエルへ手を差し出した。


「そういえば、私はシルフィ。あなたの名前は?」


「教える理由は?」


アウエルは素っ気なく返した。


シルフィの笑顔が少しだけ引きつる。


「名前を聞くくらい、そんなに変?」


アウエルは少し沈黙したあと、


「……アウエル」


とだけ答えた。


握手には応じない。


それでもシルフィは気にした様子もなく手を引っ込め、微笑んだ。


「よろしくね、アウエル」


朝食を食べ終えても、ヴェインはまだ現れなかった。


「もうっ……ヴェイン遅すぎ!」


リッカが机に突っ伏しながら文句を言う。


「ここで待ってるより、エルフの国を見て回らない?」


ヘレンが提案した。


「でも、ここで会う約束だったよね?」


アシュリーが首を傾げる。


「私たちが外にいる間に来ちゃったら?」


「じゃあ交代で回ればいいじゃない」


ヘレンが言う。


「本当に勝手に歩いて大丈夫なの?」


アシュリーが尋ねる。


「シルフィ、案内してくれる?」


「いいわよ」


シルフィはあっさり頷いた。


「じゃあ決まり。私たち女子が先に回ってくるから、男子はここで待機ね」


「はぁ!? 不公平だろ!」


リッカが立ち上がる。


「なんで女子が先なんだよ!」


「私が言い出したからよ」


「俺だって外に出たい!」


「私たちだって退屈してるの」


「二人とも」


アシュリーが苦笑しながら割って入る。


「じゃんけんで決めれば?」


「それなら公平ね」


ヘレンが頷く。


「望むところだ!」


リッカも腕をまくる。


二人は向かい合い、


「最初はグー、じゃんけん――ぽん!」


リッカはグー。


ヘレンはパー。


「なっ!?」


「勝ち〜!」


ヘレンが笑顔で立ち上がる。


「さ、行きましょ!」


「じゃあね〜。留守番よろしく!」


女子三人とシルフィは宿を出ていった。


リッカは不満そうに席へ戻る。


その頃にはアウエルは、最初から机に突っ伏していた。


「はぁぁ……暇すぎる。やっぱりじゃんけんなんて不公平だ」


「運が悪いだけだろ」


アウエルがぼそりと言う。


「ぐっ……」


ギルが笑い出した。


「でもさ、本当にあいつらだけで歩き回って大丈夫なのか?」


「問題ないだろ」


グラムが答える。


「シルフィも一緒なんだから」


その頃、外ではシルフィに案内されながら、少女たちはエルフの国を歩いていた。


シルフィは建物を指差しながら説明する。


エルフの国は大きく二つの区域に分かれていた。


王宮や行政機関が集まる王都区画。


そして一般のエルフたちが暮らす居住区画。


歩きながらシルフィは一つひとつの建物について説明していく。


すると、不意にエリンが足を止めた。


小さなお土産屋だった。


店先には、三枚の羽を模した飾りと、小さな緑色の宝石が付いた白い髪飾りが並んでいる。


エリンはそっと手に取った。


「かわいいじゃない。付けてみたら?」


ヘレンが笑う。


エリンは髪飾りを付けて皆へ振り返った。


「ど、どうかな?」


「すっごく似合ってる!」


ヘレンが即答する。


「うん、可愛いわ」


アシュリーも微笑んだ。


エリンも嬉しそうに笑う。


そして店主へ向き直った。


「す、すみません。この髪飾りはいくらですか?」


店主のエルフはエリンを一瞥し、


「銀貨十枚だ」


と冷たく答えた。


「えっ!?」


ヘレンが目を見開く。


「髪飾り一つで銀貨十枚!?」


アシュリーも驚く。


「そうだ」


店主はぶっきらぼうに答えた。


シルフィの表情が一気に険しくなる。


「……外の人だから値段を釣り上げたわね?」


「嫌なら帰れ」


店主は吐き捨てた。


「今なんて――」


シルフィが胸ぐらを掴もうとした瞬間、


「だ、だめ!」


エリンが慌てて止める。


ポケットから銀貨を取り出し、


「これ……銀貨十枚です」


店主へ差し出した。


店主は金を受け取り、小さく舌打ちする。


「ちょっと、今の聞いた!?」


シルフィが再び詰め寄ろうとするが、


「い、いいから行こう」


エリンが必死に止めた。


シルフィはなおも店主を睨みつけたが、やがて諦めて店を離れた。


「どうして買ったの?」


シルフィは腕を組む。


「どう見てもぼったくりだったじゃない」


「うぅ……その……人と揉めたくなくて……」


「でもあいつ、完全にあなたを見下してた!」


シルフィの声が強くなる。


「ああいうエルフには遠慮なんていらないの!」


「で、でも……どうして?」


「向こうが先に失礼だったからよ」


エリンは首を傾げる。


「でも……どうしてあんな態度を取るの?」


ヘレンは小さく息をついた。


「エルフは昔から他種族を見下す人が多いの」


「特に人間をね」


エリンは驚いた。


「エルフって……人間を嫌ってるの?」


「知らなかったの?」


アシュリーが尋ねる。


エリンはゆっくり首を振った。


「う、うん……初めて聞いた」


「英雄伝説は知ってる?」


ヘレンが聞く。


「うん。小さい頃、お兄ちゃんとよく読んだよ」


「じゃあ英雄パーティーのメンバーは覚えてる?」


「えっと……勇者、エルフ王、竜王、海王、ネフィリム、それからオロニス族……だよね?」


「その通り」


ヘレンは頷いた。


「でも、人間だけは誰もいなかったの」


「え?」


エリンは目を丸くする。


「でも勇者って、人間じゃないの?」


「実は、それは誰にも分からないの」


アシュリーが説明する。


「勇者は孤児で、人間の孤児院で見つかったでしょう?」


エリンは頷く。


「だから見た目が人間なだけで、本当に人間かどうかは分からないって言われてるの」


「他の種族は、勇者は最初に人間に拾われたから人間として育っただけだ、って考えてるの」


シルフィも続ける。


「最初に見つけた種族こそが、勇者の種族になるって考えられてるの。だから、もし最初にエルフの孤児院で見つかっていたら、勇者はエルフだったってこと。他の種族でも同じよ。」


「だから勇者は人間じゃなくて、人間の姿をした半神だって考える人もいるの」


ヘレンが言う。


「つまり英雄パーティーには、人間の代表はいなかったってこと」


「だからエルフは人間を見下すの」


シルフィが苦々しく言った。


「エルフ王は英雄パーティーの一員だった。でも人間は違う」


「もちろん、人間だけじゃないわ」


「英雄パーティーに代表者がいなかった種族は、みんな見下されることがある」


「皮肉なのは」


アシュリーが苦笑する。


「人間は世界で一番人口が多いのに、それでも英雄パーティーには一人もいなかったことね」


エリンは困ったように眉を寄せた。


「やっぱり分からない……」


「どうして人は誰かを見下さなきゃいけないの?」


「それで何かいいことがあるの?」


「みんな仲良く生きればいいのに……」


「私にも分からないわ」


シルフィは寂しそうに笑う。


「それは昔からエルフの国の問題だった」


「エルフ王も何百年もかけて、他種族を受け入れるよう皆を説得してきたの」


「王様は、本気で他種族と共に生きようとしてた」


彼女は苦笑する。


「でも何も変わらなかった」


「みんな、相変わらず他の種族を見下したまま」


そう言ってシルフィは賑やかな通りへ視線を向けた。


「こういうエルフなら、この国ではいくらでも見つかるわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ