出発
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
「追加パーティー?」
「はい」
受付嬢は頷いた。
「報告書の内容を見る限り、別のパーティーと協力した方が安全だと判断しました」
「……分かった」
少し考えた後、アウエルは口を開く。
「だが、知り合いのパーティーはいない。そっちで探せるか?」
「もちろんです。支援依頼をよく引き受けているパーティーがありますので、そちらへ連絡してみます。協力可能かどうかは、明日お伝えしますね」
どこか残念そうに、アウエルは小さく頷いた。
「分かった」
「ってことは、今日は依頼なしってことかー」
リカが肩をすくめる。
「じゃあ、また明日の朝ここで集合な」
「分かった」
「はい……」
二人が返事をする。
「それで」
リカが続けた。
「今日は何するんだ?」
「必要な物を買いに行く」
アウエルが答える。
「ふーん。エリンは?」
「わ、私も……少し買い物をしようかなって……」
「えぇー。二人とも買い物かよ」
どこか不満そうな声だった。
「驚くことか? 依頼前の準備はしないのか?」
「しない!」
リカは胸を張って即答した。
「……それで鉄級になれたのか?」
アウエルは本気で驚いたように言う。
「なれたな!」
リカは笑う。
「じゃ、買い物頑張れよ。俺は鍛錬してくる。また明日!」
そう言って、彼はギルド酒場を出て行った。
「そ、その……何を買うんですか?」
エリンがおずおずと尋ねる。
アウエルは少し考える。
「油と、インスタント魔法だ」
「イ、インスタント魔法!?」
エリンは驚きの声を上げた。
「あれって高いですよね……?」
「高い。だが、今回の依頼報酬なら十分見合う」
「油は……?」
「リカはたぶん炎を扱う剣士だ。どれほど使えるかは分からないが、あれば役に立つ」
「炎術師? どうして分かるんですか?」
「気づかなかったか?」
アウエルは言う。
「頭の鉢巻きだ。模様が“ホムラ”の紋章に似ている。ホムラの一族は炎を刀に纏わせる戦い方をしていたはずだ」
「な、なるほど……」
エリンは納得したように頷いた。
「買い物、頑張ってください」
アウエルはそう言い残し、歩き出す。
「は、はい……ありがとうございます……!」
翌朝。
ギルド酒場は再び開かれていた。
無造作な黒髪の青年――アウエルが中へ入る。
だが、その目の下の隈は昨日よりさらに酷くなっていた。
彼は店内を見回す。
「おーい! こっちこっち!」
ギルドのテーブルから、赤髪の青年が手を振っていた。
リカだ。
アウエルは大きな欠伸をしながら近づいていく。
「お、おはようございます……」
エリンが小さく挨拶した。
「おう。昨日ちゃんと寝れ――」
リカの動きが止まる。
「……お前、寝てないだろ」
沈黙がテーブルを包んだ。
「追加パーティーについて受付に聞くぞ」
アウエルは素早く話題を変え、そのまま歩き出す。
「おい! 先に質問に答えろって!」
三人はそのまま受付へ向かった。
「おはようございます。本日はどうされましたか?」
受付嬢が笑顔で尋ねる。
「依頼についてだ。追加パーティーの件を聞きに来た」
「あっ、赤狼討伐依頼ですね」
彼女は頷く。
「協力を引き受けてくれるパーティーが見つかりました。“黒亀”というパーティーです」
「黒亀?」
「はい。すでに街門の近くで準備しているそうですので、そちらで合流してください」
彼女は続ける。
「それと、各パーティー用にキャラバンも用意してあります」
「助かる」
「いえ。お気をつけて」
三人は街門へ向かった。
「あれじゃないか?」
アウエルが指差す。
そこには、一台のキャラバンの前で作業している男がいた。
黒い鎧を身に纏い、背中には巨大な戦斧を背負っている。
どうやらキャラバンに問題が起きているらしい。
「おーい! あんたらが黒亀か?」
リカが声をかける。
男はこちらを振り返った。
「ああ。俺はグラム。黒亀のリーダーだ」
彼は軽く笑う。
「“黒鱗”って呼ばれてる」
「で、お前たちが赤狼討伐を受けたパーティーか」
三人は頷いた。
「キャラバンどうしたんだ?」
リカが尋ねる。
「積み込み中に少しな。車輪が一つ壊れた」
アウエルは荷台へ視線を向ける。
「……赤狼討伐にしては、随分積んでるな」
「ああ、これは狼用じゃない」
グラムは答える。
「鉱石運搬の依頼も受けててな。場所が近いから、先に狼を片付ける予定だった」
「だったら俺たちのキャラバン使うか?」
リカが提案する。
「スペースは足りるか? それに、うちの連中は今代わりの車輪を探しに行ってる」
「でも時間かかるんじゃね?」
「いや、交換するだけだ。すぐ終わる」
グラムは腕を組みながら言う。
「仮にキャラバンを共有しても、村に着くのは午後になる。なら先に周辺を調査して、翌朝に狼を狩ればいい」
リカは少し考え込む。
「確かに」
そして頷いた。
「分かった。準備頑張ってくれ」
リカはそのままキャラバンへ乗り込み、エリンも後に続く。
アウエルも乗り込もうとした時、グラムが呼び止めた。
「受付から聞いた。今回の依頼に違和感を持ったのはお前らしいな」
「……ああ」
「なら理解してるはずだ。この依頼は普通じゃない」
グラムは真剣な声で続ける。
「調査中に何か見つけても戦うな。俺たちを待て」
「分かってる」
「よし。調査、頼んだぞ」
アウエルは小さく頷き、キャラバンへ乗り込んだ。
キャラバンは村へ向けて動き始める。
道中、リカが口を開いた。
「そういや、昨日二人とも何買ったんだ?」
「わ、私は回復薬を少し……」
エリンが答える。
「俺はインスタント魔法と油だ」
「油?」
リカは眉をひそめた。
「なんで油?」
「お前、炎術師だろ?」
アウエルが言う。
「っ――まぁ、そうだけど。なんで分かった?」
「その鉢巻きだ。ホムラの一族なんだろ?」
リカは額の鉢巻きへ触れる。
「あー……これか。いや、ホムラなのは合ってる。でも、これは俺のじゃない」
アウエルは目を細める。
明らかに納得していない表情だった。
「昔の知り合いの物なんだ」
リカは続ける。
「その人がホムラの一族だった」
「あ、あの……」
エリンがおそるおそる口を開く。
「ホムラ一族のこと、私あまり知らなくて……。その鉢巻きって、そんなに大事な物なんですか……?」
「い、いや! そこまで大したもんじゃないって!」
リカは慌てたように笑う。
「ただ、その……昔ちょっと色々あっただけで」
「色々……?」
エリンは首を傾げる。
だがリカは視線を逸らした。
「ホムラ一族は全員殺された」
アウエルが淡々と言う。
「……え?」
エリンの顔が固まる。
「ど、どうしてですか……?」
「正確な理由は誰も知らない」
アウエルは続けた。
「だが、王の命令だったって噂されてる」
そしてリカの鉢巻きを見る。
「それを身につけてるってことは、ホムラの関係者だと示してるようなものだ。狙われてもおかしくない」
リカは苦笑した。
「まぁ大丈夫だって。もう俺がホムラじゃないことくらい皆知ってるし」
彼は冗談っぽく笑う。
「仮に王様本人が来ても、返り討ちにできるけどな!」
空気が重く沈んだ。
「そ、そうだ!」
リカは無理やり笑顔を作る。
「二人はなんで冒険者になったんだ?」
「わ、私は……兄を探したくて……」
エリンが静かに答える。
「兄?」
「はい……。小さい頃、一緒に冒険者になるって約束したんです。でも、お兄ちゃんだけ先に旅に出ちゃって……だから、もう一度会いたいんです」
「……二つ名とかないのか? 二つ名持ちなら探しやすいだろ」
「わ、分かりません……」
「ふーん」
リカは今度はアウエルを見る。
「お前は?」
アウエルは迷わず答えた。
「金だ」
「……うわ、夢なさすぎだろ」




