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魔法 - 3

読んでいただきありがとうございます。


日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。


もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

「私は裕福な家に生まれたんだ」


ロランは静かに語り始めた。


「五歳になる頃には、すでに魔法の才能が現れていた」


「両親は大喜びだったよ。私の才能を伸ばすために、たくさんの魔法教師を呼んだ」


ロランは懐かしむように微笑む。


「上達は早かった。コウズロにある最高峰の魔法学院へ入学できるほどにね」


「天才だとも言われていた」


「私は新しい魔法を学ぶのが大好きだった。だから魔法の研究を始めたし、魔法書も集め続けた」


その声音が少しだけ柔らかくなる。


「――あの日までは」


エリンが慎重に尋ねる。


「どんな事故だったんですか?」


「ある魔法書に、『光魔法』について書かれた章があったんだ」


「光魔法?」


「ああ。例えばこんな感じだ」


ロランは片手を持ち上げる。


「Light Sword」


淡い黄金色の光が掌に集まる。


光はゆっくりと伸びていき、剣の形を作り出した。


「わぁ……」


エリンが思わず息を呑む。


ロランは苦笑する。


「今ちゃんと剣になっているかは分からないけどね」


やがて光の剣は消えていった。


「私はこの魔法に夢中になった」


「光を形あるものへ変える。その発想が面白くて仕方なかった」


「だから限界を知りたくなった」


「何度も、何度も研究した」


ロランの声は変わらない。


だがその内容だけが重かった。


「そしてある日、制御を失った」


「光が暴走したんだ」


「眩しすぎる光だった」


「――それが私の目に映った最後の景色だ」


部屋に沈黙が落ちる。


「それで今の私がある」


ロランは小さく笑った。


「魔法に人生を捧げた男が、本すら読めなくなった」


「……ごめんなさい」


エリンが小さく呟く。


「気にしなくていい」


ロランは首を振った。


「君のせいじゃない」


「目が見えなくなった今でも、私は魔法の研究を続けている」


「そんな時にローラが魔法へ興味を持ち始めた」


彼は扉の方へ顔を向けた。


「魔法を教えてほしいと言われたんだ」


「だが私は教師じゃない」


「知識はあっても、人に教えるのは苦手だ」


ロランは二人へ向き直る。


「だから君たちに頼みたい」


「どうだろう?」


エリンは少し迷った。


「わ、私にできるか分からないですけど……やってみます」


「助かるよ」


ロランは微笑んだ。


「では明日も来てくれるかな?」


エリンはアウエルを見る。


アウエルは肩をすくめた。


「今は依頼も受けてない。問題ない」


「よかった」


エリンは立ち上がった。


「ごちそうさまでした」


二人が帰ろうとすると、


「ああ、待って」


ロランが声をかける。


「本を忘れているよ」


エリンは慌てて受け取った。


「で、でも本当にいいんですか?」


「もちろん」


「ありがとうございます」


ロランは最後に言った。


「焦らないことだ」


「え?」


「学ぶのと教えるのは違う」


「無理をすれば、教える側も教わる側も苦しくなるだけだ」


エリンは本を抱きしめた。


「はい」


「それじゃあ、また明日」


家を出ると、市場の喧騒は少し遠ざかっていた。


エリンは本を胸に抱えながら歩く。


「アウエル……」


「なんだ」


「私、本当にローラさんに魔法を教えられると思いますか?」


アウエルはポケットに手を入れたまま答える。


「分からない」


「でも、お前なりの魔法の理解はあるだろ」


「仮に教えられなくてもロランに聞けばいい」


「金持ちの家系で、最高峰の学院出身だ」


「知識なら山ほどある」


「……そうですね」


しばらく無言で歩く。


やがて分かれ道へ辿り着いた。


「じゃあまた明日」


「はい」


二人は別々の道を進んだ。


翌朝。


アウエルがロランの家へ向かうと、すでにエリンが待っていた。


「おはようございます」


「おう」


アウエルは頷く。


「なんで外にいる」


「ロランさんに先に会ったんですけど、準備があるから待っててほしいって」


その時、


ガチャリ。


扉が開いた。


ロランとローラが姿を現す。


「おはよう」


「お、おはようございます」


ロランが言う。


「さて、今日はどこで教えるんだい?」


「俺たちが訓練してた場所がある」


アウエルが答える。


「南門を出た先だ」


「大きな木もあるから休憩できる」


「いいね」


四人は街を出た。


道中、エリンはロランが持つ本に気付く。


「それって魔法書ですか?」


「ああ」


ロランは頷いた。


「学院時代、教師に読まされた本だ」


「参考になるかと思ってね」


「この本の魔法理論の説明はあまり好きじゃないが、役には立つだろう」


「分からないことがあれば聞いてくれ」


「私なりに説明してみるよ」


「ありがとうございます」


やがて訓練場所へ到着する。


エリンとローラが向かい合う。


「ローラさんは魔法をどのくらい知ってますか?」


「ほとんど知らない」


ローラは肩をすくめた。


「ロランに詠唱を教わったくらい」


「でも何も起きないの」


「やってみてもらえますか?」


ローラは片手を上げる。


「ファイアボール」


しかし何も起こらない。


「ほらね」


エリンは考え込む。


「杖を使ってみます?」


「マナの流れを補助できるかもしれません」


自分の杖を差し出した。


「ロランも試したけどね」


ローラは苦笑しながら受け取る。


再び構える。


「ファイアボール」


――何も起きない。


「やっぱり駄目」


エリンは眉を寄せた。


「本を見てみましょう」


「何かヒントがあるかもしれません」


本を開く。


するとローラが尋ねた。


「本当にその本に答えがあると思う?」


「分からないです」


「でもロランさんがそう言ってたので」


「ロランさん?」


ローラは首を傾げる。


「兄じゃないよ?」


「え?」


エリンが固まった。


「私たち血は繋がってない」


「小さい頃、市場の裏路地に捨てられてたんだ」


「そこでロランが拾ってくれた」


「それで今の名前も付けてくれたの」


「過去を忘れられるようにって」


「……そうだったんですか」


「今は気にしてない」


ローラは笑った。


「ロランは本当に優しいから」


その頃。


アウエルとロランは木陰に座っていた。


「本当に目が見えないのか?」


アウエルが突然尋ねる。


ロランは笑った。


「昨日のことかい?」


「エリンが本を忘れたのを当てた件だ」


「ただ音を聞いただけさ」


「本を持った時の音がしなかった」


「それだけだ」


アウエルは少し黙る。


そして言った。


「ロラン」


「それ、本名じゃないだろ」


ロランが眉を上げる。


「どうしてそう思う?」


「裕福な家の出だと言った」


「なのに姓を名乗らない」


「学院卒なら称号もあるはずだ」


ロランは小さく笑った。


「鋭いね」


そして静かに語り始めた。


「失明した時、家族は必死だった」


「医者を呼び」


「天才を呼び」


「学院まで動いた」


「だが誰にも治せなかった」


「結果は見ての通りだ」


彼は杖を握る。


「やがて皆諦めた」


「天才は消えた」


「残ったのは壊れた秀才だけ」


「学院も私に興味を失った」


「家族も同じだ」


「気にしなかったのか?」


アウエルが聞く。


ロランは即答した。


「全く」


「私が愛していたのは魔法だからね」


「研究できるならそれでよかった」


「そしてある日、あの子を見つけた」


「誰にも必要とされない少女を」


彼は微笑む。


「だから連れて帰った」


「妹として?」


「そうだ」


「顔は見たことがない」


「でも私の中では本当の妹だ」


「それで魔法を教えたのか」


「興味を持ったからね」


ロランは苦笑した。


「だが何をやっても上手くいかない」


「それでも諦めてほしくないんだ」


「気付いたんだよ」


「私の研究も知識も、私一人で終われば意味がない」


「だからローラに継いでほしい」


「私の魔法を」


「私の夢を」


アウエルは腕を組んだ。


「それは押し付けじゃないのか?」


ロランは少し考える。


「昔はそう思った」


「だから魔法をやめろとも言った」


そして静かに笑った。


「でもあの子は断ったんだ」


同じ頃。


ローラもまたエリンに話していた。


「どうしてそこまで頑張るんですか?」


エリンが尋ねる。


「大変じゃないですか?」


ローラはロランの方を見る。


「ロランの光魔法を見るとね」


少し照れながら笑う。


「暖かい気持ちになるの」


「だから私も魔法を使いたい」


「その感動を誰かに伝えたい」


「ロランが作った魔法を世界に残したい」


ローラは拳を握る。


「だからこっそり練習もしてた」


「ロランに内緒で」


そして真っ直ぐ前を向く。


「私はロランの後継者になりたい」


「ロランの魔法も、夢も、全部受け継ぎたいんだ」


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