第86話 勇者凱旋
いやねぇ……。将軍の凱旋って当たり前に事前調整してるはずですよ。武器持った殺伐とした奴ら引き連れて突然クーデター起こされても困りますからね。
調整を済ませてバビローナ帝国の帝都ローナ市にて勇者凱旋パレードが行われる運びとなった。調整と言ってもベアトリーチェとビットリオの親書による日程の調整があった程度で、勇者本人たちとの事前の対面打ち合わせは行われていないぶっつけ本番のパレードであるが、勇者たちの進退に関する連絡はベアトリーチェの計らいで角が立たない形に取り繕われた。
街は、三人欠けたとはいえ勇者パーティー二人の帰還を歓迎するお祭りムードでパレードの順路の脇には所狭しと香具師の屋台が並び、たこ焼き、ベビーカステラ、焼きそば、カルメ焼き、わたあめ、べっこうあめといった食品、射的やボールすくい、金魚すくいなどのゲームの屋台も並び市民たちは家族連れで楽しんでいる。
軍楽隊による勇壮な入城のファンファーレの演奏が行われ城門が開くと、花馬車ならぬ虹と笑顔のひまわり、花だらけの完全フラワー仕様のワーゲンバスがバタバタバタとエンジン音を轟かせて門から入り、軍楽隊の演奏を完成させるような絶妙なタイミングでぷっぷ〜とクラクションを鳴らして入城する。
勇者マリウスは瞳孔が開ききって虚ろな目でハンドルを握り、聖騎士スラは苦悩を隠しきれない表情で外から見えにくい中央の席を陣取り俯いている。出発時メンバーのなかで堂々と観衆に手を振っているのはジャックだけだ。後部座席には謎の男がシタールを弾き、助手席では玉衣に包まれたベアトリーチェが窓から手を振っている。どうしてこうなった……。 エリーヌは騎乗し女王が乗っているパレードを護衛しつつ、マリーは香具師に紛れて癒しのハーブスパゲッティとチョコブラウニーの屋台を出店し、いい匂いをさせている。
ビットリオの宮殿に近づくにつれ、当初から気分の悪そうなスラがついに我慢の限界を超えた。
「すいません。吐いてきます。降ろしてください。」
そして降りた場所は最も会いたくない人物。そう。マリーの屋台の前だった。
「あら、いらっしゃい。」
「もう無理です。宮殿への道程が処刑台の階段にしか思えません。」
悪い未来を想像してるところにハーブはバッドトリップに繋がる。スラにはちゃんとした説明が必要みたい。
「あなたは迷いはしたけど、結果としてひとつも間違ったことしてないわ。考えてみて。一人の死にゆくはずだった生命を繋いだ。これはすごいことなのよ?それにこの街の市民たちの笑顔を作ったのはほかでもないあなたたちが魔王の実体を知り危険がないという事実をつたえたからじゃないの。もっと自信持ちなさい。」
「しかし……」
「しかしもへったくれもないから。何のためにベアトリーチェが同行してるのよ?もしバビローナがあなたを不要と言ったならその場でオイランダには必要だと拾ってくれるわよ。」
凱旋の花馬車がフラワーバンってのやりたかっただけです。




