第85話 勇者への進退意思確認
設定の整合性を保ちつつフィナーレの凱旋に向かうための挿話的なエピソードです。
少年はロムルスとレムスたちによる継続的な樹液採集に支えられ他特殊な必須栄養素が充分に摂取されており、一見するともはや健常者となんら変わらない。
そうなるとファミリーであるロムルスとレムスは置いていくにしてもスラとマリウスについては後顧の憂いを絶つためにも一回、ビットリオの任務を完了したことにしたほうが良い。
しかし少年の病気は奇跡の治癒などではなく、摂取を欠かしたらすぐ崩壊する薄氷の上を歩いているような状態である。少年も仕上げの熱処理くらいは自分で出来るが山に樹脂を取りに行くのはロムルスとレムス頼みであり、いずれは自分のことは自分で全部なんとかするということで、少年自ら樹脂または花穂を採集して自分で加工して、食べるという事ができるようになって一人前だが、何かのはずみで途絶えたら詰みだ。
かと言って聖油は置いておくと劣化して眠り薬になってしまうから保存はそれほど効かないし、ロムルスとレムスに渡したら山に取りに行く仕事から解放されたとばかりに採集をサボるだろう。これは少年にとって毎日欠かすことができない食事だから毎日毎日の継続が大切なのだけど、健常者には全く必要がない食材を一品多く毎食摂らないといけないのでそれなりに面倒ではある。
マリーは密封保存容器をひとつだけシルビアに託し古くなる前に定期的に交換するという運用で緊急時の備えとし、マリウスとスラにミッション終了報告について意思を確認することにした。
さりげなく聞いてみたところ、瞳孔が開ききったマリウスはこちらを見て「シスター・マリー!猿山の大将の意思なんかどうでもよくね?それより仲間がブラザーの少年を救うのを手伝うほうがよほど今の俺の生き方として価値があるぜ」。
スラは流石に思慮があり「われわれが突然居なくなったってなったら向こうも捜索隊をまさなくてはと言う話になるでしょうし、それは我々の安寧の日々を脅かす不安要素なので、一件落着という報告をして筋を通す必要はありますね。私たちの進退の意思表示とともに報告に参りましょう」
魔王の自生地の隣国であるオイランダで女王の通行許可を経て進軍したって開始地点からいけば勇者一行の凱旋の調整は形式的にはベアトリーチェに先頭に立って交渉してもらうことになる。
あとはベアトリーチェとエリーヌの都合だけど、あの二人に関してはわたくしの指示をほかのすべてに優先する癖があるからこっそり聞き出して迷惑かけないようにこっちで計画しないといけないから、都合聞くのもめんどくさい。あの人たちにとってはわたくしとは対等じゃないのよね。
こういうことなので店どうなってるとか、聖油の補給切れるんじゃないかとかはご心配無用です。きっとマリーは定休日のうちから候補を洗い出して提案してます。




