第77話 勇者覚醒
マリー、いきなり実力行使します。
ジャックが既に聖女の身内となっていることに勇者たちは冷や汗を垂らしながらマリーに目をやると、 めんどくさそうに、しかし、この勇者パーティーとやらの無自覚な戦争屋に人々が動かされてしまう前に新しい説明が必要だとばかりに地面を揺るがす重低音の中小一時間暑苦しく説教を始めた。
「平和はその成り立ちからして作ることも育てることもできるけれども勝ち取ることだけはできません。それは冷蔵庫の中に温かい飲み物を探すようなもの……(中略)……要するに勝った瞬間、お目当てだったはずの平和は壊れるのよ。わかる?……。」
一通り説教を終えたところで勇者パーティーの目を見てため息をもらし、
「言葉で説明してもわからないなら身体でわからせるしかないわね…ジャック、例のものを」
ジャックが持ってきた琥珀色の聖油を焚き、香りを満たし謎詠唱を始める。
♪〜ὃν τρόπον γὰρ ἐκείνη πᾶν τὸ ἐνιστάμενον καὶ ἀντιβαῖνον ἐπιπεριτρέπει καὶ κατατάσσει εἰς τὴν εἱμαρμένην καὶ μέρος ἑαυτῆς ποιεῖ, οὕτως καὶ τὸ λογικὸν ζῷον δύναται πᾶν κώλυμα ὕλην ἑαυτοῦ ποιεῖν καὶ χρῆσθαι αὐτῷ, ἐφ οἷον ἂν καὶ ὥρμησεν.
煙に巻かれたマリウスたちは脳が蕩けるような多幸感に満たされ宇宙意識との合一を体験した。
マリウスはバスに帰るやいなや「この街に来るなら髪に花を挿すのを忘れないで」と叫ぶ側になり、 ロムルスとレムスはこの付近のあるコミューン・リーダーであるシルビアのファミリーとなった。
かつての勇者の鞘にはデイジーが活けられ、聖剣と鍔のを囲う強固な環がピースマークのかたちに溶接され、食材を輪のなかに入れてしか決して使えない料理用のスライサーと、余りはハサミへと改造されていった。
そんな中、スラだけはまだ使命を覚えてマリーたちの前にただ立っていた。
「しかし魔王を放置していて良いのでしょうか。仰せのように我らが魔王をも自らの役に立てるにはどのようにすればいいのでしょうか?」
マリーはようやく芯のある者を見つけたとばかりにいままで勇者パーティーの一員を見るのとは違う眼差しを向けて、切り出した。
「まず、魔王がどのような存在なのかを先入観を排して知ることが第一歩よ。知る糸口がなければ、作用因・形相因から。質料因は深く交わらないと分からないし目的因は主観で変わるから。」
ちなみに、ローマ建国神話のロムルスとレムスの産みの親はレア・シルビアと言います。
でもこの話のシルビアはあのタイスと高位魔族と共に帰農運動始めた少女です。




