第76話 聖女謁見
一話から全部読んでる方は御存知だと思いますが、あのジャックを保護して聖油の活性化教えたマリーは、オイランダやバビローナといった新教国では、水源地を共有財産とするための同盟の盟主で名目上の水源地の君主という名義貸しをしている、新教国内では結構えらい人で古狸ベアトリーチェにこういう席に引っ張り出されます。
勇者一行は、同盟国オイランダ女王直属の近衛騎士団長であるエリーヌのすすめに従い同盟の盟主たるマリージェーン聖女猊下へ魔王城攻略について相談に待ち合わせ場所の聖マリー・ジェーン公堂へ行く。
運河があるメルヘンチックな街に溶け込みながらも明らかに他とは一線を画す手入れの行き届いた重厚な公堂の扉を開くと、地面を揺るがすような重低音とエコーの効いた裏拍のギターの爆音、そしてガンジャの煙が吹き出してきた。
場所を間違えてるはずはない。勇者たるものこの程度のことで気が動転するなどあってはならないのだ。
気を取り戻して堂内を見渡す。演壇に聖女らしき姿は見つからず、演壇があるであろう奥の一角はステージとなっておりドレッドヘアに緑黄赤のバンダナをしたミュージシャンたちが演奏し、ステージ上にあるミキサー卓では全身に緑黄赤の小物をこれでもかと纏った老人がガンジャを吸いながら操作してる。
ステージと対角にある手前突き当たりにある売店脇の休憩所にエリーヌとタイダイ染めに身を包んだ老婆と気怠そうなお姉さんと、以前パーティーから追放したジャックがハーブティーを飲んでいた。しかもこともあろうにエリーヌすらジャックにヘコヘコしている!!
勇者たるものこの程度のことで気が動転するなどあってはならない。エリーヌが居る以上、今出来ることはエリーヌに聖女猊下へと取り次いでいただくことだけだ。余計なことに気を取られてる余裕はない。
「オイランダ王国近衛騎士団長エリーヌ殿。マリウス、ロムルス、スラ、レムスの四名にてバビローナ帝国より魔王討伐のため領内を通行させていただいております。」
エリーヌは立ち上がり、礼を交わす。
「用件は伺っております。我が主君女王ベアトリーチェともどもお待ちしておりました。」
「それでは、ご先導お願いします」
木を隠すには森の中へ。機密性の高い合流は雑踏のなかへ。ここで会って王宮なりそれなりの場所へ行く算段なのだろう。いくらなんでもこの爆音と煙まみれで作戦会議などできるわけがない。
「こちらは、聖女猊下、女王陛下の全員揃っております。ビットリオ陛下からの親書によると勇者パーティーは五名で、あと1人足りてないようですが?ハーブティーでも飲んで到着をお待ちしましょうか?」
エリーヌの提案にマリウスの背筋に冷たいものが走る。マリウスはジャックにチラっと視線を送るが、ジャックはひたすら気怠いお姉さんの方を見ておりこちらのことなど気にもとめてない様子だ。
「たぶん、どこかで1名解雇したのでしょう。先方は現在四名で間違いありません。それでは聖女猊下お願いします。」
1名の欠員とはジャックのことだが、本人は特に気にする様子もなく淡々と説明する。
すると気怠そうなお姉さんが、ジャックを軽く叩く。
「ジャック、まだ慣れてないから仕方ないけど、あなたは身内なんだからわたしを聖女猊下とか呼ばないようにね。よそ様の前ではマリーと呼び捨てか、役職つけるなら『私どもの店長マリー』と呼びなさい」
場面では空気となって名前が出てきませんが、給仕してるのはボブランドール店長、ステージではホレスやネスタ、ミキサー卓はレインフォードです。勇者視点からは名前知らないので名前で参照できないのです。




