第75話 勇者の受難(ざまぁ)
勇者たちはオイランダの集落で、世代を越えて新しい説明を持つ優しい人々に出会います。
優しい人々に出会うことがどうしてざまぁになるのかというと……、世の中には知らないほうが良いこともたくさんあるってところですかね
勇者一行は髪に花を挿すのを忘れて馬車を降りるやいなやハワイアンレイを掛けられハグされて熱烈歓迎された。
ゆめゆめ髪に花を挿すことを忘れるなかれとルキウスに注意された事が脳裏をよぎったが、ちゃんと話が通っているのだろう。取越苦労だったようだ。
「なんだ全然大丈夫じゃないか」
マリウスはほっと一安心した。
翌日、酒場から宿へと馬車で移動してたら子供達がわいわいと笑顔でこっちに手を振っている。
「俺たち勇者パーティーは子供たちの憧れだからな。その期待に恥じないように行動しないとな」
ロムルスは満足げに、マリウスに告げる。
スラは馬車を降りたとき、馬車の窓の下にある金着の花の国章が笑顔のひまわりへと上書きされていることに気がついた。
子供たちが手を振っていたのはこの笑顔のひまわりに向けてだったのかもしれないと思うが、マリウスとロムルスが思い違いにしても上機嫌なので水を差すのはやめておこうと黙っておくことにした。
日を追うごとに、馬車のあちこちに花や虹で落書きされていき、波打つような虹色のレタリングでLove and Peaceの帯が車両の前後をつなぐように描かれ、ついには馬車の天井にデイジーの花が植えられていた。
ある日、馬車に乗ってると奇妙な振動を感じて降りて見るとスポークが中の四本残して折られてホイールが一つの巨大なピースマークにされていた。
作業するために防具を脱いで馬車に載せるとホイールが歪みだし、最後に武器を載せると重さで耐えられず車輪が折れ、どこからともなく「ブラザー!均等間隔にスポーク付いてるなんてヴァイブスが死んじまうぜ……」という声が聞こえてきた。
これでは旅を続けられないので、かわりの馬車を調達する必要がある。
マリウスがベルナルドゥス・ベン・ポンという男の経営する街の中古馬車屋へ行き、積載量が大きく価格が手頃な車両を探していると理想的な個体と出会った。
足回りは質実剛健、極寒の地でも凍結の恐れがない水を使わない空冷式パワーユニット、渋い土のような茶色の下部に真ん中から上天井までうっすらと緑色のツートンカラーのフォルクスワーゲンタイプ2。
これならば上空から襲撃する翼竜からも見つかりにくい。マリウスは即決で契約書にサインをした。
ところが馬車がじわじわと1週間かけて改造された同じ加工がたった一晩にして行われ、渋い茶色のうえにはデイジーや顔のあるヒマワリが咲き乱れ虹やピースマーク、Love and Peaceや、FLAT4 powered by flowerなどのレタリングが軽やかにうねった装飾がこれでもかと施され、なかには、誰かが住み着いてシタールの調べとサンダルウッドの香りが漏れ出してる。
どちらかというとオイランダじゃなくてサンフランシスコ、ヘイト・アシュベリー地区のような気もしますが…。




