スパイ。
「で?スパイが来たんだって?」
「らしいですよ」
監視員さんには速やかにお帰り頂いた。
で、話を再開する。
「ふむ。でも俺等に関係あるの?」
「いや、校長が所属してる学校に何か要求する為の素材になるでしょうし、あんまりないんじゃないですか?」
――1時間後――
「あの、土田先生?」
頭を抱えてうずくまる。
薄暗い急造の地下室で目の前にいる椅子に拘束された女を見て、俺が呼ばれた理由が分かった。
「なんでさぁ……なんで君はそんなに俺を困らせる事をするのかなぁ……」
元教え子である。
全体的に天才だがなんかどっか抜けてる女である。
猪飼直里。それが彼女の名だ。
「お前なんで見つかったの!?前国会議事堂とかに侵入してた時見つかってなかったじゃん?!」
「いやー……爆発音で驚いちゃって」
テヘペロしてくるが、馬鹿、というかマヌケである。
「お前さぁ……変装とかも出来るんだから……しかも捕まる時抵抗できたろ……?」
「そういえばそうでしたね!」
なんでこの状況でニコニコ笑いながら話を聞いていられるんだろうか?手足完全に縛られて行動不能なのに。普通なら焦るはずなのになんでだろうか?
頭のネジまで抜けてしまったのだろうか?
「あ、なんか失礼な事考えましたね!私分かるんですよ!」
そういや読心術みたいなの使えたっけな。
「はぁぁぁぁ」
「むぅ~なんですか?感動の生徒との再会ですよ!もっと喜んでください!」
「椅子の上に縛られている上にスパイとして侵入してきた生徒との再会に感動する要素ってあると思うのか?」
「いや、久々の再開なんですから。ほら。こう、あるじゃないですか?ハグとか?感動とかそういうの関係なく」
「(そんなこと一切)ないです」
話が尋常ではなく逸れている気がするので即刻話の方向を修正する。
「さて、とりあえずなんで、俺の部屋に侵入していたのかを教えてもらおうか」
何故かこいつスパイ行為に来たと思ったら、発見されたのは俺の部屋だったそうだ。で、俺に匿ってた疑惑がたったらしい。で、まぁ他の奴が尋問しようとしたらしいんだが、一切口を開かないどころか眼力だけで追い返したらしい。
「いや、先生が帰ってきたら、こう、ド―ン!って驚かそうとですね」
「はぁ~」
再度深いため息が漏れ出ると同時に頭を再度抱える。
本人は綺麗な童顔でニコニコと笑っている。
「なんでお前は変なところで頭悪いかなぁ……」
「いやいや、しっかりと準備してたんですよ?手作りのパイも用意してましたし」
「で?それをどうする予定だったんだ?」
「部屋に入ってきた瞬間顔面に投げつけます!」
こめかみのあたりにピクピクと青筋が浮かぶ。
なんでこいつこういう無駄な行動力があるかなぁ…




