汎用引力発生刀身ムラマサ
両者の距離は100m、魔法使いの射程からスタートであり、これは村正が自分から提案した事である。
軽くステップを刻むかの如き手軽さで前方10mほど一気に飛び出す村正に対し、バックステップで上空に退避、滞空をし始める前田君。
「空中要塞でもやるのかアイツは」
空中要塞とは、魔法使いが滞空を使用し、自らの精神力が切れるまで上空から爆撃をすると言うある種ゴリ押しのような戦法である。地上でしか行動不可能な魔物に対し非常に効果的ではあるが、空中でのドッグファイトや対空手段に優れているモンスター相手だといいマトになる。
村正との高度差は約10m、直線距離30m程度の地点で前田君の魔法が発動する。
1発の火球が杖から放たれる。
これだけ見ると基礎的な魔法、火球だが、前田君が使ったものは恐ろしい副効果が備わっている。
火球が2発に分裂し、さらにそれが4発、8発と2の累乗のように増殖していく。
「鼠算式分裂火球弾」
本来の鼠算式ほどではないしろ、倍々ゲームで増えていく炎の弾丸は村正の眼前を埋め尽くす。
だが村正は、その手に持つ本体を一振りする。
すると何という事だろうか。全ての炎がブラックホールに吸い込まれる光のように軌道がねじ曲がり刀身に殺到し、刀身はその炎を吸収したかのように深紅に染まった。
村正は刀身を一閃、すると内部のエネルギーが放出され、巨大な炎の刃となって上空の前田君に襲い掛かる。
前田君はさらに上空へ退避、太陽を背にし村正を睨みつけ、岩石の砲弾を連射しながらカッターのような切れ味の極細の水流を放つ。
一定の速度が無ければ村正の吸収を避けられず、炎のような不定形なものでは刀身に吸収されてしまうのだ。よって前田君が最も得意とする炎系統が使えず、必然的に他の属性を使っての戦闘を強いられる。相性は悪いと言い切ってもいいだろう。
何発かの岩石弾が地面に突き刺さり、水流は地面を切り裂き村正に迫る。
「――ハァ!」
吸収能力の汎用性は底が知れない。なんと常時薙ぎ払われる地面を切り裂くほどの威力を持つ水流を踊るように回避しながら岩石のみを手繰り寄せ、引力の発生している刀身を回転させる事によりハンマー投げの要領で岩石を撃ち返したのだ。
しかし太陽を背にしている前田君を狙うなどという芸当は流石に難しかったらしく、前田君の髪をかすめて飛んで行った。
これには前田君も冷や汗が垂れる。
引力ってホント便利。スランプが続かなくて良かった(出来は知らん)




