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魔王は出ただけ。

本当に出ただけです。

校門の前に立つ男。魔王。

圧倒的なパワーで全ての存在に恐怖を刻み込んだ化物。


それが今はまるで宅配屋のような恰好をしてテレビを運んでいた。


「いや、お前こそ何やってんだよ。お前家電屋でバイトだったろ」

「うちの会社って配達まで全部自分の手でやるんだと。まぁそんなんで配達係な訳だ」


なるほど。場がめっちゃ白けてる。戦う気がおきない。だが色々な風圧とかでついた傷から血液は相変わらずダラダラと流れ続けている。


「というか校庭凸凹しすぎだろ。運びにくいんだけど」

「ICBMばら撒いたからな」

「何?勇者でも来たの?」

「いや、生徒と模擬戦」


なんだろう。この空気。戦闘していたはずなのにそんな雰囲気が一気に消えたぞ。


「へー。まぁいいや。とりあえず俺が帰るまで戦闘開始するなよ」

「おう」


そのまま魔王が校門からテレビを運び込み、出てくるまで待機する。


「あの……先生?あの人誰です?」

「俺の叔父」

「いやいや、魔力がどす黒いですしなにより「俺の叔父だ。いいね?」アッハイ」


とりあえず即座に戦闘開始できるように魔力は集中しておく。


「それじゃあ頑張れよー」

「おう」


魔王がさっさと帰って行った。トラックに乗って。魔王が乗るトラックて大分シュールだな。


「エクスカリバー」


と思ったらいきなり横から極太ビームが飛んできた。死ねる。


というかこいつらは格ゲーしてんのに俺だけ残機のない弾幕シューティングやってるのは何故だろうか。


とりあえずジャンプして回避。空中に避けるのはそこまで上策ではないが、まぁそれしかできなかったし仕方ないね。


「とー」


と思ったら衝撃波が飛んできた。もちろん当たったらばっさり足が落ちる。


土壁結界アースウォール!」


ただ土壁を展開するだけの簡単な結界だが、土などを扱うプロの錬金術師が使うとミスリルもかくやというほどの強固さを持つ。


ズバン!


その壁が真っ二つに切断される。これでも一応ドラゴンのブレス耐えたんだぞ…


「おいおい冗談だろ?」


衝撃波が俺の体を両断する。胴体が下半身と上半身に見事ばらばらになってしまった。


「あぶないじゃあないか」


いつの間にか武神の真後ろに立っているのはこの俺である。


「足元注意、ですよ」


背後から声が聞こえたと思ったら足の感覚が消えている。死神である。


「完全無敵移動からの即死はずるいんじゃないか?」

「ははは、戦いに卑怯もクソをありませんので」


まぁ足が消えた程度で喚くほどの素人でもない。死神が鎌を振りあげる。黒いを通り越して闇そのものになり果てた刃が俺を切り裂こうと迫るが、まぁ余裕を見せたのが運のツキだな。


武神は一応静観に徹しているから楽でいい。どうやら他の奴らの戦いを邪魔をするのが嫌なタイプらしい。


死神の鎌が振り上げた状態のまま静止する。


「かかったなぁ阿呆が!」


死神の腕の筋肉は完全に石化している。表面上に出ている訳ではなく、筋肉だけが完全に石化している。


石化をさせるには一度俺が触れて、相手を弄りまわさなければならない。じゃあどのタイミングで触れたのか?


魔王と話している最中である。魔王と会話している最中に俺の吹き飛んだ血が死神に付着する。俺の血には石化の特殊効果を付与してあり、それは表面に触れると肌をカサカサにする程度だが、直接飲み込むと数分後には筋肉が硬化し始め、任意のタイミングで相手の筋肉を石化させることができる。


「……一本取られましたね。腕が完全に動きません。僕の負けです」


死神はこれでリタイア。


俺は全身ボロボロな上に足が無い。


「おらぁ!俺の事忘れんじゃねぇぞ!」


巨神が剣を振り上げ、叩きつける。それだけで地面が波打ち、俺に土の弾丸が襲い掛かる。


「おめでとう。でも負け」


武神が衝撃波を連射する。それ連射できたの!?


「バルムンク」


聖剣の幅が明らかに広くなり、黄金の輝きを纏う。


魔力の塊じゃないですかヤダー。


「ドラゴンブレスACT2」


ドラゴンブレスが両腕から射出される。


「ブレスって腕から出すもんじゃねぇから!」


だが威力は単純に倍、爆風合わせて3倍以上に膨れ上がる。


まさに絶体絶命。無理ゲー。だが負けるわけにはいかない。


絶体絶命ですね。

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