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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
風の加護、森に揺蕩う光の風を感じよ
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45-不穏な風

 月の住人、今では月の民と言われており、技術力などは地上のどの国よりもあり、月まで行ける飛空艇を所持している。しかし、その技術をもたらしたのはザレクとマゴクであるため、飛空艇に対しての制空権を完封できる術を持っている。

 実は皇帝国は月の民と通じており、皇帝国はその繋がりから巨大戦艦型の飛空艇や魔法銃といった技術などの提供してもらっていた。始祖龍などもその繋がりを気づいており、皇帝国に対しては始祖竜の眷属たちは風当たりが強く、他国への侵攻など行う際には必ずといっていい程、邪魔されていたのだった。

 14番目の世界の人種族たちとは違い、術式形成を行える力は持ってはいないが、それを補う高い技術力を持っている。





「何万年過ごしてきた中で今回の調子こいてるツノ生えてる小鬼風情みたいなやつは沢山いました」

「こういう都市国家はあってもなくても、どちらかというといらない方ですね」

 ザレクとマゴクはあっけらかんとさっきまでの語っていた真面目な雰囲気はどことやらへとなっていた。


「そういえば天霊種族にはいつなったんだ?」

 ツェリスカはザレクとマゴクに問いかける。話の中で精霊種族になったタイミングの話は出たのだが、天霊種族になったときの事は出てこなかったのだ。


「つい最近ですねー」

「ここ2500年くらい?」

「たしか、そんくらいよね」

「うんうん」


 2500年が最近という感覚にはツェリスカはついて行こうとは思わなかった。というか行けなかったのだった。

「そ、そうか」


 ツェリスカは今の不滅者(プレイヤー)はどこで何をしているのかがふと気になった。ザレクとマゴク、精霊種族や妖精種族は彼らを探知できない。しかし、それぞれの世界で現れたり現れなかったりした為、何かしら調査なりしているはずだと思ったのだ。


「今も人種族なり、隠れ生息しているはずです。総数まではわかりませんが今までも不滅者(プレイヤー)ではないかと思われる何も感じない人種族もいました」

「そういった者は英雄や神と言われる存在になっていったり、神と呼ばれていても本当の神ではなく、禍ツ神であったり、荒神、蛮神、亜神といったものだったりしたね」

不滅者(プレイヤー)だと証拠はありませんが、彼らは何かしら同種族の者と違い突出した才なり力を持っています」


「「ま、でも結局のところ生涯を終え、不滅者(プレイヤー)かどうかわからずですが」」


 ザレクとマゴクはため息をつきながら、肩を竦めた。


 不滅者(プレイヤー)は上位種族である為、自ら名乗るか制限解除ししない限り認識不可能である。その為、死した後でさえ骸を研究した所で不滅者(プレイヤー)かどうかの形跡すら見つからないのだ。

 魂そのものを捕縛すれば、解明できるが魂に触れる領域の術や力は天霊種族のザレクとマゴクでも出来なかった。

 過去、アガルタ時代と呼ばれる最初のツェリスカがいた世界では不滅者が制限解除せざる得ない程、彼らの技術力と文明力が出来上がっていた。その為、識別しなくても認識出来た為、その認識をレーダーなどに転用していただけだったのだ。


「結局のところ、今の今になっても不滅者(プレイヤー)が何を目的としてこの世界にいるのか、根本的な所はわからずじまいか…」


 ザクロ・リリウムは不滅者(プレイヤー)であり、何を目的にしてこの世界に留まっているのか明確だった。他の不滅者(プレイヤー)も様々な目的があって来ている。しかし、その事を彼女は絶対に語らない。


(言いづらい…ていうかきっと間違いなく殺される)


「世界は謎と未知に満ちています。そして、いつかは世界は滅び、再生します。隊長、いちいちあの種族やらあの都市国家が亡くなった所で終わりは決まっているのです」

「マナの力をガブガブ摂取しながら、それが自分の力だと勘違いしてますし、マジなんていうか〜ちょーしのりすぎー」


 次第にザレクとマゴクが元の口調に戻っていった。


「あいつら自分たちの祖先が魔族で死に絶えそうな所を私たちが保護して、マナの力に感化されて変異していった癖に、マジ合成獣(キメラ)だし」

 ザレクとマゴクは次第にテンションが上がっていき、ツェリスカとザクロ・リリウムもドン引きするくらい悪口を言い放っていた。時折、他の都市国家や歴史学者などに公表したらとんでもない事を口走っていた。


 ザクロ・リリウムはどの話も断片的に神話的な話として言い伝えられたものとして知っていた。だが、その知っていた部分がより鮮明になっていくことで伝説はただの都合のいい作り話で、実際はとんでも話だった。


(誰にも話せないよ、精霊の森に来た事を自慢しようにも自慢できない…何喋ったかさえ言えない。間違いなく口封じに角有種族から刺客が来るわ…)


 気が付くと昼ごろになっており、ツェリスカとザクロ・リリウムは昼食をとることになった。





 一方、神聖マナ樹国ドラシアルユースでは蛮神問題について緊急会議が開かれていた。

「蛮神が出現した、と前回報告があり騎士団を連れて調査及び討伐しに行くもおめおめと逃げ帰ってきたわけだ」

真朱(しんしゅ)の旅団、所詮冒険者の成り上がりだけあって撤退だけは早いな」

「臆病な程、生き残れるとは言うが騎士として誇りはないな」

 円形状のホールのように木々が規則正しく整列されているその中心にコーディネイト・アーデル・ラーンブレイズが立っていた。

(くっ、蛮神と退治すらしていない癖にえっらそうに…)

 涼しい顔をしているはものの、コーディネイト・アーデル・ラーンブライズの心の中は荒れていた。五元色の騎士団が位置する場所とは違い、元老院と呼ばれる偉い方々は言いたい放題だった。


「皇帝国の件もありますし、そちらが絡んでいるのでは?」

 話題を変えたのはルゥファ・ルクス・アルスクイン、五元色の騎士団の「翡翠の森」であり、神聖マナ樹国ドラシアルユースの神聖マナ神教の聖女でもある。角有種族のドリアード種であり、美しい翠色の髪の毛と白銀に近い真っ白な角を生やしていた。


「ハハッ、まさかぁ〜だったらわざわざコーディネイト嬢が騎士団引き連れて行かないでしょ?精霊様方から皇帝国については自分たちで対処すると正式に教王様とやり取りを行ったわけだしさ」

 青鈍(あおにび)の衆である仮面をつけフードをかぶり種族が特定できないようにした青年風がコーディネイト・アーデル・ラーンブレイズを煽りながら取り決められたことを言った。


「うむ、確かに騎士団を引き連れて行くとなると先の精霊様との取り決めを無視した事になる。それで?蛮神は如何程の強さだったのだ?そこの紅の守騎士よ」

 外野に座る一人の髭を生やした角有族がコーディネイト・アーデル・ラーンブレイズの後ろにひざまずいてる巨人種族であるシェーフォードに聞いた。


「ハッ、かの蛮神と対峙し防御結界を用い耐えましたがそのあと攻めに転じるのは困難かと」

「ふぅん?…蛮神が現れたのはお前のような奴隷民が精霊の森に踏み入れたからじゃないのか?」

 シェーフォードは無表情のまま俯く、自分はすでに答えるべきことは答えたからだ。

「ラーンブライズ卿、蛮神が現れたのはなぜだ?」

 トロット・バーミュニント・カラビアン、名門貴族カラビアン家であり、エルフ種族ハイエルフ種の男はコーディネイト・アーデル・ラーンブレイズに問うた。鋭く三白眼のキツネ目をしっかりと見開き彼女を見据えていた。


「決まってるでしょう、あの奴隷民が精霊の森に入り精霊様たちを誑かしたからでしょう」

 彼女は前を見据えながら答える。


「へぇ?私の団員から聞いた話だと精霊たちが彼らを精霊の森へと招いていったと証言があるんだが」

 青鈍(あおにび)の衆の仮面とフードを被った青年がニヤけながら言う。もちろん、仮面で顔は見えていないのだが、彼の口調からははっきりとそれが伝わるかのように言っていた。


「大方、幻覚でも見せられていたのでは?」

 コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズは売り言葉に買い言葉で返した。

「中々、面白いことを言うな。我が団員は幻覚にかかるような者たちと?」

 青鈍(あおにび)の衆からひんやりとした風がなびき、険悪な雰囲気ではじまった会議はさらに険悪さを増していった。


「はぁー、それで逃げ帰ってきたのは置いておこう。これからどうする?」

 エルフ種族のハイエルフがため息をつき、コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズに誰もが聞かなかった事を聞いた。

「無論、我が騎士団が討伐致しますよ」

 コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズはそれが当たり前であり、撤退したとしても再度戦い、討伐するのが自分の任であると考えていた。


「如何致しますか、教王様」

 髭を生やした角有族が台座に座る教王と呼ばれた者へ聞いた。

 教王、この神聖マナ樹国ドラシアルユースの実質トップであり、全ての民を束ねている者である。


「ラーンブレイズ、家名と騎士に恥じぬように務めよ。私はあなたに期待しております」


 会議はそこで終了し、コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズは汚名をすすぐが為、再度、精霊の森へと向かう事になった。


 会議が終わり、退出していく中でシェーフォードは蛮神の攻撃に耐え切れたものの、それは外面だけであり身体はぼろぼろだった。

「身内に甘えるのはわかりますが、ドロを塗らないでくださいよ(チッ」

 コーディネイト・アーデル・ラーンブライズは舌打ちしながら綺麗で端正な顔が醜悪に歪んでいた。その声はひとりごとではあったが、シェーフォードに聞こえるものであった。


 シェーフォードは決して彼女に甘えたわけではなかったが、結果が全てであると彼自身重く受け止めていた。しかし、コーディネイト・アーデル・ラーンブライズ本人が自分の責任で精霊の森へ行き、騎士団を動かしていた。あの時、シェーフォードが防御結界を貼らなければ、死傷者は出ていただろう。

 しかし、上手くいかなかったら部下の所為にするのが彼女であった。今までもそうするのが当たり前で、それが生き抜くコツでもあるかのように呼吸をするようにしてきたのだった。当人にそれに罪悪感もないし、自分がそういった事をしているという自覚もない。

 ただ、自分がされた場合はずっと覚えておくような性格をしていた。そういった性格から彼女は自分のクビを締めていることには気づいてはいなかった。なぜなら残っている幹部は彼女のイエスマンであり、彼女の行動を咎めるものはもう居なくなっていたからだ。


 彼女は優秀な術師であるが、他種族旅立つ時に一緒に居た団員以外は真に心を許してわけではなかった、

(またクソなヤツらがあらぬ噂や晒し立てるあの奴隷の所為で)


 彼女は思い通りにならない事に腹を立て、自分の道理に合わないものは敵であり、障害としか見てない。一度でも彼女が感じるとそれ以降は信用することは絶対にない。最初から従順で強いものにしか信頼しないのだ。異を唱えるものは敵であり、例え身内の者であっても「裏切者」として認識し続ける。

 それを知っている者は彼女に近寄らない、元仲間はそれを知り去っていくのだった。不平不満を撒き散らし、自分のやり方に固執し続ける様は老害であった。


(まあ、私も悪かったとは思っていますよ。もう少しちゃんと戦力差を認識すべきだと反省していますしね。だからあのタイミングで撤退したのですが…本当にムカつきますねぇ)


 彼女は自分が悪かったと思ってはいるし、反省もしている。しかし、それが他者から見ればそうは見えないし、そもそも反省して改善された事など一度もなかった。


 彼女とその騎士団たちは精霊の森へと向かった。

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