第8話 日常
喫茶・十字街の二代目マスター、蝶名健一は
今日も元気に働いていた。
だが、あの事件以来、健一の目つきは変わっていた。
壁のショットガンとグロックは知らぬ間に元の位置に戻っており
健一は警察に連行されることもなく、いつもと変わらぬ状態に戻った。
UFO事件のあった後、営業準備のため三日間、店を休んだだけで
今は通常営業しており相変わらず南警察署の警官が入れ替わり昼ご飯を食べに来ていた。
健一は店に出入りする警察官のおかげで物騒な状況なのに随分と安心感を手に入れていた。
函館南警察署に食堂は無く代わりに署の食堂として指定されているのが、ここ十字街で、あとは近所のそば屋やラーメン屋、デリバリー弁当など食事は自由だ。
ところが最近、南警察のお抱え医師が署員の栄養面でクレームを入れてきて
健康管理の観点から、亜硝酸Na禁止になり、グルテン見直し、そばや低糖質・低コレステロールの献立に変更が必要だということになったが
血液検査の結果が芳しくない者のみに細かい指導が行われるということで決着がつき二代目マスター健一は少し気持ちが軽くなっていた。
「ヘルシーメニュー追加だな・・・」
日曜日・月曜日と毎週二日、喫茶店は定休日だが南警察の北条署長が
「土曜日の夜は大事な話があるから予定は完全に空けて次の日も約束などを入れないように」と健一は命令されていた。
『オーバーだけど一体何の話があるのかな?』
喫茶・十字街にはパートさんが3名いる。
土曜日、夕方5時には店を閉め、パートのえっちゃんと洗い物と床清掃、ごみ出しをして夜7時前にはエプロン姿のまま健一は、ようやく缶ビールを口にしていた。
先代の頃より一番永く勤めている、えっちゃんは、とにかく働き者で朝は健一より先に出勤して仕込みを開始、ほかに2名いるのパートさんの指導もこなしてくれて実働8時間以上。
見た目は30・40代に見えるのだが実際は50を超えているらしい、あらゆる面で健一のかゆい所に手が届き助かっていて、
その分、月給も30万払ったが
「こんなに要りません」半分、金を突き返してきて
「では車は店で買うから自由に乗ってください」というも納得してもらえず
「先代マスターにも恩が、ありますから・・・」
と一点張りの大和撫子で
先日など仕事中に、えっちゃんのお尻や胸をぼんやり見つめていた健一は
「こらっ」と、えっちゃんに軽くゲンコツをもらったりと不思議な魅力のある姉さんだった。
まったく・・・恋人もいない健一は欲求不満もピークらしい。
だがパートの悦子には大きな声では言えない過去があった。




