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クロスタウン・アンノウン  作者: オブチアスマ
第1章 北条財閥と国際函館南警察

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第9話 パートのえっちゃん

 20年程前の事、きたいち興信所・厳道(げんどう)の前に刺客がやってきた。


厳道にしてみれば、もう幾人の人間を殺(あや)めたか数え切れなくなっており、いい加減、自分に対して恨みを持つ者が何人いるのか想像もつかなくなっていた頃。


 きたいち興信所・東京出張所で確認事項をクリアしてビル街の裏通りをJRの駅に向かって歩いていた時、背中から銃声が聞こえ厳道は2発くらった。

―ビシッ、ビシッ

振り返ると、夕陽を背にして銃を構える女が1人立っている。

―ダダッ

サイボーグ化されている両足で素早く走り寄ると、更に2発撃ってきたが厳道は怯まず相手の両手首を掴むとギュッと締め上げ女の顔を見た、彼女の顔は涙でグシャグシャに濡れていた。

「あっ、いっ」

腕の痛さに悲鳴ともつかぬ声をあげると彼女はあっさりと銃を地面に落とした。


「どこかで会ったか?」厳道が問うと同時にぐったりと彼女は座り込んでしまった。


 その日の丁度一年前、厳道は、ある不良グループに襲われ、正当防衛で若者を2名殺害し6人ほど病院送りにしていた。


その不良グループは、もっと大きな組織の使い捨て鉄砲玉で上の人間に「厳道を殺れ」と命令されただけの当たり屋みたいな者たちだったが、その死んだ若者の一人が今回襲ってきた女の一人息子だった。


 それはパートのえっちゃんこと悦子だった。


若気の至りで15歳で出産し、親に勘当され悪い友人に誘われるまま夜の世界に入り新宿で、なんでもやって子供を育てた。


 自分の子供は惨めにしたくない一身だった。


やがて、銀座でも少しは知られたママにまで上り詰めた頃

潤沢なお小遣いを持った高校生の息子は目の届かない隙に悪い仲間に入り、成り行きで殺されてしまった。


 厳道に・・・


 銀座のママは息子が死んで行方をくらました。

警察の死体安置所で冷たくなった息子と対面して

怒りと悲しみで気が変になり、人脈の伝手(つて)で拳銃を手にいれ

息子を殺した犯人を一年がかりで見つけ出した。


「この女は死のうとしておる・・・」


 処分に困った厳道は北条一行(ほうじょうかずゆき)に相談し彼女の身柄を預けた。


最初は話し合いにもならなかったが北条の独断で一緒にタイムマシンに乗り、過去に彼女を連れて行き、今は亡き過去の息子を見学させ、北条の嫁にも協力してもらい

降霊術「イタコ伺(うかが)い」を行った。

彼女の息子の霊を呼び出し悦子と話をさせた。


 北条にはアガルタのテクノロジーで既に霊体を目視し会話のできる霊視ゴーグルがあって超能力など開花していなくとも自分の周辺にいる霊体は確認できたし妖怪、妖精とよばれる物の姿や神のエネルギーフィールドも目視できる代物だった。


 現れた死んだ息子は反省しきりで

「今に、また生まれ変わるので心配しないでください」

精神のおかしくなってしまった母親に最後の言葉と育ててもらった御礼を宣べると、あの世に逝ってしまった…


 しばらく彼女は息子の供養を続け、そのまま東北の小さな寺で過ごしていたが

元・僧の厳道と時間をかけ話し合い、和解した後、厳道も供養に同行して歩くうち、

きたいち興信所の事を知り、悦子は諸悪の根源である組織壊滅の為、興信所の所員となって格闘技・銃器・サバイバルの訓練を受け暗殺者に生まれ変わって過ごしてきた。

 

 そして函館の喫茶十字街・初代マスター安次郎の失踪に備え

早くからパートのおばちゃんとして潜入していた。


健一は知らないが、それがパート従業員・えっちゃんの正体だった。


 道理で厳道や戒道、力道が喫茶店に来ると、いつも愛想よく、お酌などして世間話が長かった。

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