第2話 ローリング・レスキュー隊
南署内で異風を放っていたのが例の居酒屋『さなだ』の調理師たちで過去の荒くれぶりを買われ、なんと作戦当日に向け医療班への配置が決まっていた。
彼らも防弾シールド付きのヘッドギアと各種、武器の取扱いを入念に訓練していた。
「これ・・・すげぇな」
「んだぁ・・・」
もちろん居酒屋の調理師たちに医学の知識などない。
彼らの役目は赤十字を身に付けドクターや看護師たちを警護する事と
作戦遂行時、署内通称『レスキュー班』とよばれる四輪救護トラックに勇気ある看護師たちを乗せ仲間の怪我人を現場にトラックで救出に行き、敵の弾にひるむことなく怪我人を回収し、時に襲い来るかも知れぬ敵とのいざこざをかわしながら、何度でも現場とセーフティエリアを行き交うことを要求されていた。
普段であれば南署の交通機動隊や秋葉の愚連隊の出番だが今回の戦闘・逮捕劇には、もっと重要な配置を望まれていた。
なぜ民間人まで?それというのも、かつて極道ものだった真田の子分、あのタバコ野郎こと中野以下6名は
函館市内でも有名な伝説になっているローリング族『魔滅路死』の出身で函館山のチキンレースで何人も病院送りにしたというドライブテクニックの持ち主たちが揃っていたからだった。
彼らの希望はエンジンの防弾と燃料タンクの防弾、パンクしないタイヤに強化サスペンションと強化ワイヤー・チタン仕様の強化サイドブレーキ、シリンダー強化ギアミッションの採用だった。
レスキュー車両の走行テストと看護師たちとの合同練習は南署の地下空間で行われた。
「よろしくお願いします!!」
整列する真っ白な制服姿の女性看護士たちに挨拶されたローリング族は
彼女たちより年上の中年だったが
「うっす」と言ったきり、別世界に生きる可憐な彼女たちを前にして皆、きおつけ状態で棒立ちになり緊張で顔が真っ赤だった。
それを察した看護師たちは皆「クスクス」と笑った。
レスキュー班専用トランシーバー付きの白いヘッドギアには赤十字がつけられ赤い顔の中年ローリング族は訓練を真剣に行っていた。
「俺、ピエロの意味、わかったよ」
「あ?どした中野?」
「いや、いいんだ、あの娘たちにスゴイって言われるだけで、それ以上は望まないし、何か少しでも俺の生き方が役に立てば、いいんだ、もしあの娘たちに何かあったら・・・俺は・・・」
全長1キロにも及ぶ南署地下施設で時に走りながらの無線会話が、彼らには何より昔に戻ったようで楽しかったが、恐らく当日には修羅場が待っている。
臨時レスキュー班の誕生の裏には北条病院の独身女性たちと、この荒くれたちを一緒にしたら面白そうだという一凜の悪い癖も一枚かんでいた。
異例の採用に真田の女房は
「姫様、うちの連中で役に立つんなら死んでも本望です」と言い
一凜は
「死なれちゃ困るんだ誰ひとりとしてな」と言った。
訓練の時間帯は真田・高橋と女衆で店を守った。
真田ふじ美は、御年45歳、人望ある「美人女将」だった。
その昔、つまらぬ喧嘩が元で右目が少々不自由だったのを聞きつけた一凜は彼女を北条病院へ連れていくとアガルタテクノロジーの義眼を移植し女将の目を直したのだった。
アルバイトには内緒だったが、多少スペックダウンされたアガルタの装備品・防弾着、拳銃や散弾銃が居酒屋に複数配給され女将さんは店や姫様に何かあったら、本気で、やるつもりだった。
「あぁバイクが欲しいな・・・」と、ふじ美は静かに呟いた。
真田の息子、正明は
「父ちゃん、いや・・・えええっと、父上、尊敬いたします」
すっかり、武将の息子のような言葉を言うようになった。
「あはは、ありがとうな正明。でもな尊敬するのは一凛署長だ」
「えっ?」
「わかるだろ…父ちゃんは姫様に救われたんだ、お前もな…」
「うん」




