第1話 エイトハンドレット計画
一凜には前世の記憶が残っていた。
それは幼い自分が自殺する直前の記憶だった。
一凜の前世の名は『北条静華』だった。
静華、数えて八歳。影雛の咲、数えて九歳。
「姫様・・・」
「咲・・・我、無念なり」
戦国の世で追い詰められ自害する自分と大勢の仲間たち、一族、最後の記憶だった。
やがて長い年月が経ち、静華は生まれ変わって北条一凛に転生、自分の望みを叶える日がやってきた。
今から5年前、一凜が警察署と興信所の代表になる日、
ナムサンの三人と一凜は大型UFOでタイムスリップして過去の自分と大勢の仲間を破滅から救い、全員を2020年にアブダクションして一緒に世界平和のために活躍しようと企んでいた。
北条家の再興、前世の自分自身を救出する事。
これが「エイトハンドレット計画」だった。
「準備できたかな?」と一凜署長。
「アイヨ、死体型アンドロイド男女総数888体」サンさん。
「よし、服装や血糊もいいな?」
「バッチリよ」ナーさん。
「小物や金子も持たせたままだな?」
「はいよ、遺言書・遺恨無限祈願も持たせたぜ」ムーさん。
「よし、じゃ周辺の飛び入り人たちも保護できるな」
「まぁ実際は300くらいの死体で間に合うんだけど、会社に工場に警察に興信所じゃ何人いてもいいくらいだぜ、なぁ姫」
「んふふ、みんなの驚く顔が楽しみだな」
「まぁな、まさか俺たちが神になる日が来るとはなぁ・・・」
「あははははっ!鎌倉時代にジャンプだナムサンッ!」
「了解、ジャンプ・スタートします、かまあーーくらーーっ!」
過去、鎌倉、腹切りやぐらでは絶望した北条家一族とゆかりの者たちが今か今かと自害の気持ちを固めていきつつあった・・・
その時
逢魔ヶ刻の寺院裏山上空に眩しい大きな光が現れ天下ってきた。
「なんだ、なんだあれはっ」
「おおっ」
皆が騒ぎ出した。
大きなUFOは低い位置まで下がると静止した。
北条家一族の集団には唄が聞こえてきて
一人の女神と三人の異形従者が姿を現し皆に響き渡る声で言った。
その影でムーさんが言う。
「サン、なんだって、この歌なんだ?」
「うん、なんでも姫が子供の時に合唱コンクールで聴いて感動したんだってよ」
「ふーん」
「その時に、この日が来たら、この曲かけてくれって・・・」
「そうだったんだ・・・・」
「うん」
―いまー わたしのー ねがーい ごとがーあー
―かなうーなーあーらばー つばさがぁーほしいーいーーいー
―このおー せなかにーぃー とりの ようにーいー・・・
一凜が警察の制服のままマイクを通して言った。
「皆の者、私たちは神の使いだ。お前たち誰ひとりとして死んではならぬ、お前たちには使命がある、今すぐ、この神の浮き船に乗り込み我らと一緒に来るのだ、さぁ遠慮はいらぬ、命を無駄にしてはいけないと神が我々を遣わしたのだ、安心して船に乗れ」
―このおおぞらに つばさひろげ・・・・
今、皆が自害しようとしていたところに神の使いが降りてきて困惑した。
「おのれ妖怪変化めっ!」
無謀な侍が一凜めがけ弓矢を放った。
―ビュンッ!
防御シールドに矢が刺さり、空中で静止、やがて地面に落ちた。
―ポトン
「おおおぉーーーっ」
皆が驚きざわめいている。
一凜はポイント・スタンガンで侍を撃った。
―スンッ
侍は「ウグッ」と言って倒れ、UFOの牽引ビームに包まれ空中を浮きながら入口より内部に収納された。
「ああぁっ!!」
「おおおっーーーおおっーーーーっ!」
「神様じゃっ!」
「神なのか?」
「あれは、あれは・・・・」
「おおおおーーーっっ!」
一凜が前世の自分、静華姫に話しかけた。
すると
「寄るな無礼者っ!」幼い姫と同い年くらいの女の子が短刀を構え、静華姫の前に立った。
遠い記憶をたどり一凜が言う。
「咲、久しぶりだなぁ、幼き、お前も、ようでかした、偉いぞ褒めてつかわす」
「えっ、なぜ、わたしのなまえを、ほんとうにかみさまなの?」
護衛の幼き忍影雛の咲は一凜の制服に光る桜の代紋バッチに目が行った。
続いて一凜
「静華姫、私たちと、お出でください。姫様は、まだまだやることがあります。楽しい未来が待っています。
神が我らを遣わしました、一族、皆の命も救えます。
どうか姫様、皆の者に命令してください。
そして静華姫様、どうぞ神の遣わした、この浮舟に乗ってください」
「皆の命、救うて下さるのか?」
「はい」
「皆に浮舟に乗るよう、言えば良いのだな?」
「はい」
「あいわかった、皆の者っ!」
―つばさぁー はためーかーせぇーー・・・
あらかじめ用意しておいた死体アンドロイドを現場に置き、
800名以上をUFOに乗せ現代にタイムスリップ。
本物の北条一族は皆、現在の北条グループに勤務している。
散々あったが、現在、皆、一凜に感謝し忠誠を誓っていた。
一凜は前世の自分自身を救いだし、タイムマシンで幼き前世の静華と咲だけは、時代を少し遡って離れた親戚に預けることにした。
タイムスリップ後の静華姫の活躍は私の別作品
ジョリーン・Y字路の女神、参照ください。




