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クロスタウン・アンノウン  作者: オブチアスマ
第1章 北条財閥と国際函館南警察

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第29話 ドーベルマン1

 この日の午前、警察に通報があった。

あるアパート玄関のドアが開けっ放しなのを不審に思った大家が

部屋で死んでいる親子を発見、管轄は函館市北警察署だった。

 

 坂本はバイクの運転技術これまでの勤務状態を署長に気に入られ

函館南警察署にスカウトされて半年前、神奈川県警から移動してきた。


南署では白バイ隊の機動隊訓練を実施していたが当時の隊長が家庭の事情で惜しまれつつ依願退職し、後釜を探していたところ


神奈川県警・白バイ隊の隊員が県警本部長に組織のあり方などに対して

手紙で上層部にクレームを付け、事態が思うようにならず、

警視庁に乗り込もうとして仲間に捕まり、ちょっとした、いざこざが発生した。


 その噂を、きたいち興信所の情報網で察知した探偵所員が南署の署長・一凜に報告してスカウトが決まった。

おそらくスカウトがなければ坂本梨乃は警察を辞めざるを得なかったと思われる。

 

 坂本は正義感が強く警察官に向いてはいたが、担当部署ともめて問題化してしまう『トラブルメーカー』で公務員としては不向きな性格であった。


当時、勤務態度は優秀にも関わらず同じ署内でも

彼女の理解者は少なく、仲間からも

「じゃじゃ馬」と揶揄され嫌気が差してきていたところだった。


そして、その性格は組織の中でも北海道という目立たない地域にも関わらず

『愚連隊』と全国にあだ名されていた南署に持って来いだった。


 いざ坂本が赴任してみると、南署の警察官たちは喜んで残業をして犯罪者検挙のために知恵を絞り合い、

住民たちの治安のため服務規程違反すれすれであろうと時に厳しく時に寛大に点数や成績など気にしない生き様を見せられ、

噂と実情の違いに南署の署員たちは公務員というより、正義の味方という感想を持っていた。


 三か月前、函館市の街に慣れようと非番の坂本は愛車のスズキ刀250にまたがって市内を流していた。


夕方、地元で産業道路と通称のついた道沿いで、トボトボと下を向き歩いている小さな女の子が気になって声をかけたところ


 様子が変だった。


家に帰りたくないのだという。


女の子は小田ミサキと名乗り、

坂本は

「私は婦人警官だ」と説明して近所のコンビニ駐車場で事情を聴くと


「いえに、こわい、しらいないおじさんがくるから」と言う。


家には母親と暮らしていて、お父さんは遠いところにいると聞かされているようだった。


 坂本は、かつて神奈川県警時代に育児放棄の家庭を見つけ、そこで犯罪が起きてしまい、何も力になれないまま子供が犠牲になった事件を思い出していた。


 その日、ミサキちゃんを保護してアパートに向かうと母親が出迎えたが見たところ顔色が悪く薬物中毒者のようにも見えたので、

南署の生活安全課の同僚に相談し、署長からも管轄の北警察署に調べてもらうようお願いしていたのだった。

 

 そして日々任務をこなし、あっという間に時が経ち、また事件が発生し、自分が無力なまま犠牲者が出てしまった。


 また昔と同(・)じ(・)こ(・)と(・)が繰り返された事に怒りがこみ上げ

判断力を失い同僚を罵り、坂本は、すべて自分の責任として背負い込んでしまった。


 署長室に怒鳴り込んだのは、やり場のない怒りに任せて説明を求める形ではあったが、彼女の心に大きな傷があったのも原因だった。

 

 夕日を背にしながら下を見て、うな垂れ歩く、あのミサキちゃんは、

幼かった頃の自分に似ていたからだ・・・

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