第18話 北条家に嫁が来る1
時は遡る事、数十年前、1946年3月午後
北条一凜のおじいさん。
北条一の館に、突然、70歳ほどかと思われる
仙人を名乗る老人男性が訪ねてきた。
汚い身なりの老人は、やせ細っては居るもののギラギラとした目には他者に物言わせぬ迫力があった。
「北条一殿は御在宅か?至急、面会したい私は日本の仙人代表の者じゃ」
北条一は社員の報告を聞き、今時、仙人を語るとは宗教の勧誘か詐欺師かと考えたが、何かピンと来るものが有り、仕事を中断して、
その仙人様と面談することになった。
この時代の日本では差別用語としてホームレスを仙人と呼んで揶揄したりする者もいた。
北条は仙人様を応接室に案内して椅子を勧めたが
「このままで良い」と立ったまま話しだした。
「お初です、突然の無礼、お許しくだされ、わたくし名前は厳道と申します。
少し私の話に耳を貸してくだされ。
いきなりですが先月の事、私の夢枕に異形の者三人が現れ
蝦夷地・箱館に居る北条一氏を訪ね、
私の娘と結婚させろと言うのであります。
それで、お恥ずかしい話、実は私、元・破戒僧なのでございます」
「ハイ、それで?・・・」
「私は厳しい修行をなしとげ、それなり僧の地位と名誉があったのですが、下山した時、出会った女人に心奪われてしまい、子を授かりました、その女人は巫女として神仏に使えておりましたが、私が愚かなばかりに私と、その女人と子供、三人共、それぞれ破門となり、現在に至ります」
北条一は物分りが良いほうだが突然の身内話。
「はぁ…」
「それで要件は、とにかく私の娘と会っていただき、よければ嫁に娶っていただきたいのです」
「はぁーあぁーあーっ?」
この時、北条一は開いた口が塞がらなかったが、すぐに
『さてはナムサン何かやりやがったな』と思った。
その時、北条館の執事がやってきてドアをノックした。
「旦那様、今、外に、おそらく、こちらの方の連れと思われる
若者が二人、門前で座禅を組んで座っております、いかがいたしましょう」
「あぁ、それは私の従者の二人でございます。気にせんでいただければ良いです」
「お連れの方が、いらっしゃいましたか、おい、その二人にも入ってもらいなさい」北条は召使に指示を出した。
「かしこまりました」
執事は下男に指示を出し、その場に残った。
北条が言う
「さて仙人代表様、お見受けしましたところ風呂や食事など、いかがでしょうか大した歓迎も用意がなく恐縮ですが、いかがでしょうか?
おい、三人分の洗面道具、それと私の服一式を三人の着替えに用意して風呂と食事だ。
仙人さまか…
食事は梅と山菜わさびの具で味噌醤油の海苔を巻いて、おにぎりを50個、大根とわかめと油揚げの味噌汁、そうだ餅、餅を買ってきてくれ大福もだ。今日の仕事は打ち切りだ。みんな集めろ。
あと豆腐に納豆、離れのふたりに至急、買い物に行かせてくれ、おい、精進料理だ、魚、肉はいらないからな、ええーい、あとカツオ・煮干だしはいかん、昆布出汁で、そば、うどん、そうめんをたくさん用意してくれ、あと酒、酒だ!」
「心得ました、では離れの者たちと、至急、風呂と食事を御用意いたします」
「それと、お前たちは肉魚でも食べたいものを見繕って食事に同席してくれ、俺の結婚の前祝いだ、金をケチるな、みんな家族として
今夜は宴会だ、そうだ、みんなの家族も年寄りから子供まで全員呼ぶんだ、
この日のために100畳の大広間があったんだ、いいな、わかったな」
「ガッテン承知いたしました、旦那様、みんなも喜びますぅっー!!」
召使は、下働きのものたちにも声をかけ、全員集合をかけた。




