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迷い込んだ異世界で彼と  作者: kkkkk


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18.ポール:ユキの世界

「僕を一人にしないで」


 ポールはベッドに横たわるユキの手を握っていた。いつものように温かい手。ユキは握り返そうとしたけれど、握力を失っていた。


「大丈夫だよ。また会えるから」


 ユキは力なく笑うと、目を閉じた。


 **


 ユキの夢を見たのは久しぶりだった。きっとハンナと会ったからだ。

 ユキの言葉を信じて、ポールは待ち続けた。二百年待った。そして、ハンナを見つけた。


 魂の転生にはルールがある。人は死ぬと他の世界に転生する。どの世界に転生するかは選べない。前世の記憶がある転生者が約二割。転生時に覚えていなくても、後で思い出す場合もある。


 ハンナはポールのことを覚えていなかった。でも、あのシステムが認証したのだから、ハンナはユキだ。それは間違いない。

 可能性は高くないかもしれないけれど、何かをきっかけにハンナがユキの記憶を思い出すことを、ポールは期待していた。

 ユキの母の指輪を渡した。二人で空を飛んだ。二人で暮らした場所に連れてきた。他に何をすれば思い出すだろうか?

 ポールは小さくため息をついた。


「ちょっと、いいかな?」


 顔を上げると、扉の前にハンナが立っていた。考え事をしていたポールは、ハンナが部屋に入ってきたことに気付かなかった。


「いいよ。どうしたの?」

「あの兵器は使うつもりだったの?」

「使うつもりはない。君を殺したくないから。あの兵器は君がユキかどうかを、確かめるために使った」


 ハンナは「そう」と呟いて窓の外を見た。


「誓約はあったの?」

「ごめん、そんなものはない。君をここに連れてくるための嘘だ」


 ポールは頭をかいた。ユキの生まれ変わりであるハンナに、今さら隠す必要はなかった。


「じゃあ、母さんのところに帰ってもいいの?」

「もちろんだよ。送ろうか?」

「まだいい。しばらくここにいる」


 ハンナは窓の外をぼんやりと眺めていた。


「訊きたかったのは、その二つ?」

「いや、もう一つ。これがユキの世界?」


 ハンナは古い写真を持っていた。ユキが大切にしていた写真。父と母が写っていた。


「そうみたいだね」

「ユキは何度か元の世界に戻ったんだよね。私も行けないかな?」


 ユキがこの世界にきた扉は、ポールが管理していた。壊れていないし、まだ使えるだろう。


「行けるはずだけど……行ってみる?」


 ハンナは嬉しそうに飛び跳ねた。

 ハンナがユキの世界にいくと、何が起こるかわからない。不安はあったけれど、ユキの記憶を思い出す可能性にかけることにした。


 **


「よし、安定しているみたいだ。行こう」


 ポールは扉を開けた。何もない広い空間。遠くに見える光の方向へ進んだ。


「手、つないでもいい?」


 いつもより早口なハンナの声がした。緊張しているのだろう。何も言わず、ポールはハンナの手を握った。薄暗い空間、吐く息が白かった。


 突き当りの階段を上がると地上に出た。出口は公園の中にある白い像だった。周りには高い建物が見えた。

 空に突き刺さるような、高層ビル群。ガラスの壁に空が映っていた。鉄と硝子でできた構造物、ガラスの中を雲が泳いでいた。ここが別世界であることを実感した。


「すごい! 大きいね」


 ハンナは建物を見上げた。

 ユキからこの世界のことを聞いたことがあったけれど、想像を遥かに超える大きさだった。ビルを見上げるハンナは、首を傾けすぎて、後ろに倒れそうになっていた。


「あまりキョロキョロすると、怪しまれるよ」

「ポールもね」


 ハンナは笑った。ポールは「そうだね」と苦笑いした。


 ポケットから紙を取り出した。そこには、ユキが暮らしていた場所が記されていた。

 公園を出て通行人に場所を尋ねると、丁寧に経路を教えてくれた。この世界の人は、いい人だ。


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