↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷い込んだ異世界で彼と  作者: kkkkk


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/23

16.ハンナ:ユキ

「ケイは娘に会えたの?」


 ポールからユキの話を聞いて、ハンナは胸の鼓動が高鳴ったままだった。

 戦争を止めるために、ユキは敵の拠点に乗り込んだ。敵の兵士をあっという間に取り押さえた。ユキは強くて、かっこよかった。ハンナとは何一つ似ていなかったけれど、ユキが先祖で誇らしかった。


「会えたよ」

「じゃあ、戦争は終わった?」

「ああ。戦争の原因になったケイが生きていたからね」


 戦争が終わったのに、ポールは浮かない顔をしていた。


「何か問題でも?」

「犯人は夫だった。娘が戻ってケイは喜んだけれど、夫に裏切られたことを知ったんだ。後味が悪かったね」


 ポールの眉間にしわが寄った。

 夫はヴァルミレーン王国に残した両親を人質にとられ、娘の誘拐に協力せざるを得なかった。やむにやまれぬ事情があったとしても、ケイは最も信頼していた夫に裏切られた。その精神的苦痛は大きかったはずだ。

 その後、ケイは夫と離婚し、王族を離れた。娘はケイが引き取ったそうだ。


「母と娘の二人家族。私と一緒だね。二人は幸せに暮らせた?」

「幸せに暮らしたよ。ヴァルミレーン王国が二人を援助したから、経済的にも問題なかったしね」

「よかった」


 ハンナは胸に手を当てて深く息をついた。


「お母さんと暮らすのは楽しい?」

「楽しいよ。うちには援助がないから、贅沢はできないけどね」


 ポールは「ねえ、教えてほしい」と言いながら頭をかいた。


「なに?」

「ハンナの大切なものは何?」


 突然の質問に戸惑ったハンナは「お母さんかな」と苦笑いした。

 もちろん、他にも大切なものはある。学校の友達も大切だし、村のみんなも大切だ。


「ケイの夫も、娘が大切だったはずなんだ。なのに……」

「どちらも大切だったんだよ」

「どちらも?」

「うん。娘も両親も」


 ポールは長いため息をついた。


「人間は大切なものを守るため、別のものを犠牲にする」


 娘も両親もどちらも大切だったはずだ。でも、夫はケイと娘よりも両親を優先した。大切なものに優劣をつけた。それが許せないのだ。

 ポールは遠くを見た。人間の裏切り、騙し合いを長年見てきた、そんな虚ろな表情だった。


「ユキはポールを裏切った?」

「いや。ユキは裏切ったりしない。僕との約束を守ってくれた」


 ユキのことを話すポールの顔は穏やかだった。


「ユキはこの世界の人じゃなかった。でも、この世界の人を助けたんだね?」

「そうだよ。貧しい人を助けた。戦争孤児が住める場所を作った」

「ユキは元の世界に帰らなかったの?」

「何度かは戻ったよ。でも、ほとんどはこの世界にいたね」


 ユキはヨシハルを送り届けた後、この世界に戻ってきた。ポールが理由を尋ねると、「あなたを一人にしたら、かわいそうでしょ」と言った。ユキの知識はこの世界の発展に貢献したそうだ。


「ユキは不安じゃなかったのかな?」

「不安だったはずだよ。でもね、ユキは『なんくるないさ』って、いつも言ってた」

「どういう意味?」

「なんとかなる、って意味。ユキの父さんの口癖らしい」


 ポールの口元は自然にゆるんでいた。

 ハンナの前には人類を滅亡させる兵器がある。ユキはなぜこの兵器を作ったのか?


「ユキはこの兵器を使ったと思う?」


 ポールは四角い金属の塊を眺めながら、首を横に振った。何を見ているのか気になったハンナは、ポールの持つ端末を覗き込んだ。

 それは、黒髪、切れ長の目をしたハンナによく似た写真だった。


「それ、ユキの写真?」


 ユキが遠い先祖だとしても、あれだけハンナと瓜二つのはずがない。


 ポールは、ユキをハンナの先祖と言った。が、ポールを先祖とは言っていない。

 つまり、ハンナはユキの血族であるが、ポールの血族ではない。


 目の前の兵器のシステムは、ハンナをユキとして認識した。ユキだけの遺伝子を引き継いだハンナ。


 これらから導かれる結論は一つ。

 ハンナはポールを真っすぐに見て、息を吐き出した。


「私がユキなんだね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。