13.マナミ:魂の循環
夜間の移動は危険を伴う。夜が明けてから娘をケイの家に送り届けることにした。
ヴァルミレーン王国の兵士を拘束したけれど、さすがに全員同時に寝るわけにはいかない。ケイの夫と娘を休ませることにして、ポールと私は交代で仮眠をとることにした。
先に仮眠をとることになった私は、ソファーで横になった。でも、この世界のことが気になって眠れそうになかった。
真相を確かめるために、リビングのポールに話しかけた。
「ねえ、教えてほしいことがある」
「どうしたの?」
「ここは死後の世界なの?」
ポールは目を大きく見開いた。
私が二年前に亡くなった叔父に会ったことを話すと、「なるほどね」とポールは少し眉をひそめた。
「そういう捉え方もできるかもね。でも、ちょっと違う。魂は世界を行き来する。僕の一族ではそう伝えられている。君の世界からこの世界に転生した人がいるし、他の世界に転生した人もいる。行先は選べない。ランダムだ」
ポールは首をすくめた。
ポールの話によれば、死は別の世界での生を意味する。しかも、魂は一方通行ではない。
「たとえば、この世界の人が死ぬと、私の世界に生まれることがある?」
「あるよ」
「私が死んだら、この世界でポールと再会できる?」
「できるかもね」
ポールは照れたように頷いた。
死後にイケメンと再会する。なかなか嬉しいかもしれない。
「ポールが死んだら、私の世界にくるかな?」
「どうだろうね。僕の魂は他の世界にはいけないと思う」
「どうして?」
ポールは頬杖をついてテーブルの一点を見つめた。虚ろな表情をしていた。
心配になって顔を覗き込んだら、「近いよ」とポールの口元がゆるんでいた。
「僕たちは寿命が長い。君の十倍生きられる。人間の寿命は短いから、魂が何度も転生できる。でも、僕の寿命は長いから、死んだら終わりだと思う」
「私が十回転生した寿命の合計と、ポールの寿命が同じってことだね」
「そういうこと」
「寿命が長いと、親しい人がみんな死んでいく。寂しくない?」
「もう慣れたよ」
ポールは愛想笑いを浮かべた。
慣れるはずがない。ポールはたくさんの人と別れてきただろう。それでも、生き続ける。
「ポールは人間に深く関わるのを避けてる?」
「そうかもしれない」
ポールは首をすくめた。人に深く関われば、それだけ傷付く。長命種の防衛本能かもしれない。
「私が死ぬまで一緒にいてあげようか? この世界に転生した後も、一緒にいてあげる。そうすれば、あなたの人生の二割は寂しくない」
「考えておく」
「ねえ、泣いてる?」
ポールは笑いながら上を向いた。目から、光るものが見えた。
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