税金が怖いです
ユルガ公爵の後、20件以上の貴族に面会をお願いしたが、
実際に会えたのは、2件のみだった。
このまま、フレイナ令嬢のニキビが改善されなかったら、
ジリ貧もいいところだ。
ブンブンと顔を振って、邪念を振り払う。
私が弱気になってどうする。
オセロを買ってくれたなら、別のボードゲームを制作して、
抱き合わせ商法だってある。
今は、貴族を主軸にしているけど、
庶民向けの石けんを前倒ししたっていい。
方法はいくらでもあるのだから、焦る必要はない。
とはいったものの、目の前にある2通の手紙を前には、
ため息をいくらついても足りない。
1通は、南部へ繋げる道の補助についての返答。
なんとなく予想はしていた。
『新規交通路敷設に関して、現状大きな問題が発生していないため、
国からの補助を用いて行うことは、有益になり得ないと判断する』
問題が起きていなければ動いてくれない、
お役人は、どこの世界に行っても同じってことね。
返答に、1か月掛かっているのも同じだ。
軽く鼻で笑いながら、もう片方の手紙を手に取る。
こっちが、最大の悩みの種だ。
『ヴェルデン領において、近頃大幅に収益を上げていると伺っている。
近々、調査団を派遣して、領の運営状況を確認したい』
なにが、『大幅に利益を』だ。
単純に、稼いでいるなら税をたくさん納めろって言いに来るだけでしょ。
「はぁ⋯⋯」
机に身体を預け、だらりと両手を伸ばした。
何も考えたくない。
それなのに⋯⋯
「お父様は、なぜこの手紙を私に見せたんだろう」
私に対応しなさいってことかしら。
ひまわり油のこともやらないといけないし⋯⋯
オイルの契約が10件とか取れていれば、
気分も違うのになぁ⋯⋯
「折角頑張って稼いだのに、税で持っていかれるなんて」
とりあえず、税に関してお父様かセバスに聞かなければ。
身体から抜けきったやる気を、
無理やり湧き上がらせ、重い腰を上げた。
部屋を出て、お父様の書斎へ方に身体を向けたが、
「出来れば、セバスに聞きたいわ」
そう思っていると、ナツがこちらに歩いてきた。
丁度いいわね。
「ねぇ、ナツ」
「リズ様、どうしましたでしょうか」
「セバスはどこにいるかしら」
「セバス様なら、書庫に居られると思います」
「書庫か⋯⋯ありがとう」
駆け足で書庫に向かうことにした。
この屋敷の書庫は、お父様の書斎の隣にある。
何度か入ったけど、6畳ほどと小ぢんまりとしている。
「セバス、いるかしら」
「お嬢様、私はこちらに」
書庫の奥の方から、セバスの声がした。
閉められたカーテンの隙間から差し込む光に、
ホコリが舞っているのが見える。
ジメッとしているのに、ひんやりと冷たいせいで、
息苦しく感じてしまう。
「なにか御用でしょうか」
奥に行こうかと扉の前で悩んでいると、セバスがこちらの方に来てくれた。
「忙しいのにごめんなさいね。
国への税に関して、少しばかり知りたかったの」
「なるほど、それではお嬢様の部屋でお話しましょう」
「助かるわ」
部屋に戻って、質問形式で教えてもらう。
「20年間の帳簿を見る限り、国への税は年々増えてはいるけど、
大枠に関しては、どうやって決まっているの?」
「基本としまして、領地の大きさ、領民の数と収穫物に収穫量、
その他に家畜などによって決まっております」
「結構ややこしいのね」
でも、これはおかしい。
「アタンの街のように、畑がない場合はどうなるの?」
「その場合は、領地の大きさと領民の数に街全体の売上で計算されます」
領地と領民の数を除けば、法人税と同質のようね。
まだ聞きたいことは山ほどある。
「例えば、天災などで収穫量とかが急激に落ちた場合はどうなるの?」
「状況によりますが、基本は過去の収穫量と比較して、
減った分の税を、5年に分割する形になります」
「免除はないの?」
「減った分が、7割を超えた場合は特例として免除されるとはなっております」
無慈悲に、むしり取る感じではないようね。
そして、核心の部分を質問する。
「この領地のように、畑は広げたけど、
それ以上に収益が増えた場合はどうなるのかしら?」
ホウホウと頷いて、少しばかり考え込むセバス。
「この領地の税の対象は、領地と領民とライ麦にりんごだけのはず」
「そうです」
「ジャガイモは、毒イモだと除外されていたけど、
話の流れ次第では、税の対象に含まれると思うの」
「その可能性は高いです」
「でも、それ以上の増加収益は?」
「多分ですが、そういった場合は調査団が派遣されまして、
帳簿などを見て、決められることになるかと思います」
やっぱりか。
だから、調査団が来るのね。
「それは、売上?それとも利益に対して?」
「そうですね⋯⋯、これは不確かになってしましますが、
調査団によると聞いております」
はい?税の計算が調査団の匙加減で変わるっていうの、
売上ベースで算出されたら、一瞬で終わりよ。
頭がクラクラして、手で抑える。
「ありがとう、大体理解できたわ。
ついでに、税に関して書かれいる物があれば見たいのだけど」
「かしこまりました。後ほどお持ちいたします」
どうにか抜け道がないかと、聞いてはみたけど、
最終的には、調査団次第とは。
「いくら取られるんだろう⋯⋯」
やっと、みんなの食事がまともになりだして、
これから、衣食住の衣と住に取り組もうと思っていたのに。
椅子に深々と座り直し、天井を見上げ瞼を閉じた。
頭の中で、現状を整理する。
シードルが好調とはいっても、牛や水車に開墾などの給金で、
今手元に残っているのは400万イェンほど。
ひまわり油の売上を0として考えれば、
残り4か月の予想利益は、大体600万イェンだ。
1000万が最低限手元に残る。
それだって、冬の準備をしたら足りるかすら危ういラインだろう。
考えれば考えるほど、眉間に力が入っていく。
みんなに約束した。
冬を前に、領地を上げた祭りをすること、
今年の冬は、暖かく過ごせるようにすると。
「抜け道がないなら⋯⋯作るしかない」
閉じてた瞼を開け、机に向き直した。
考えられるいくつものパターンを計算し、
税を少なく、その上でこちらがメリットになる方法を考える。
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