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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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勘違いって誰でもあるよね

宴会の翌日、私は脱穀機と搾油機の製作を一旦止める事態に陥った。



「潰しすぎだな」


石臼から出てきたひまわりの種を見て、

ジーノが渋い顔をしながら唸る。


私は石臼で殻を割って、風選で実を選り分けて、

それを潰せば油が取れると思っていた。


でも、実際は殻だけじゃなく実まで潰してしまっていた。


「これじゃ、風選出来ないわね」


手に乗せた粉に息を吹きかけると、

殻も実も一緒に飛んでいった。


「バンズがライ麦の脱穀を石臼でやっていると⋯⋯」

「それ、勘違いしてんなぁ」


ジーノの言っていることが理解できなかった。


「どういうこと?」

「脱穀で石臼を使うなんて聞いたことねぇぞ」


やっぱり、聞き間違いじゃなかった。


「アシュ、バンズを呼んで来てもらえる」

「かしこまりました」

「あっ、それとガリルもお願い」


アシュは頷いて走っていった。


はじめから工程を勘違いしていたってこと?


殻を割るだけの工程を考えないと、

元の世界で見た工程を何種類も思い出す。



バンズとガリルが到着して、これまでの話を伝える。


「あぁ、多分ですが領民のほとんどが、

間違って覚えていると思いますぜ」


ガリルはよくあることだと答える。


「どういうこと?」

「ちげぇのかよ?」


バンズと一緒にどこが間違いかと聞き返した。


「ライ麦を叩くまでが脱穀で、石臼で挽くのは製粉ぜ」

「でもよ、ガキの頃からみんな言ってたぞ」

「まぁ、ここでは脱穀と製粉を一緒にやっていたから、

いつの間にか、一緒くたになったんだろな」


なるほどと思ったが、私は脱穀に石臼を使うと思っていた。


「まだ水車までしか作ってないなら、問題ないんじゃ?」


ガリルが笑って、取り返しがつかない段階ではないことを教えてくれた。

これを聞いて、やっと冷静になれた。


「そうね、とりあえず殻を割るだけの方法がいるようね」


それからは、みんなでどういう工程がいいかを思案しあった。


実際に、ジーノたちに小さい試作機を作ってもらい、

本当に油が絞れるのかを何度も繰り返し、


気がつけば、3週間が過ぎていた。



うなだれたひまわりが、収穫の時期を告げる。


「うん、種も固くなっていい感じね」

「これなら、天日干しもすぐ終わりますぜ」

「それじゃ⋯⋯収穫開始!!」


鎌を持った領民30人が合図とともに、ひまわりの茎に鎌を入れていく。


「早く収穫しないと、鳥やネズミに食べられてしまうわ」


私も鎌を手に、ひまわりを刈り取っていく。


計算すると、ここには1万5千本近くのひまわりが咲いている。

これを、5日間で全部刈り取る予定でいる。



30本ほど刈り取ると、鎌を握る手に力が入らなくなった。

何もしていないのに、右手が勝手に震える。


「15歳には、重労働だわ」


他の人達は大丈夫かしら。


「お嬢様、もうへばったのかい?」


ガリルが意地悪な言い方で聞いてくる。


前なら、負けん気が出て無理に頑張ったけど、

今の私は15歳のリズなのよね。


「もう、ヘトヘトよ」


肩の力を抜いて見せた。


「俺達がやるから無理しなさんな、

こっちは任せて、種取りの方を見てきてくれ」


ガリルの優しさに胸を打たれ、

お言葉に甘えてひまわり畑を後にした。



種取り場では、木製の網に押し付けて種を取ってもらっている。


女性たちが多いけど、

こっちもこっちで重労働そうだ。


一応念のために、お母様がいないか確認したけど、

こっちには来ていないようで、胸を撫で下ろした。


あまりジロジロ見ても申し訳ないので、

ついでに、ジーノたちの水車の方にも寄ってみる。



川に近づくと、涼しい風が熱くなった身体を癒してくれる。


水車の横には、小屋が出来上がっていた。


「順調ですか?」

「お嬢様、こちらは滞りありません」


小屋の屋根で金槌を振るギルが返事をしてくれた。


「ジーノは?」

「おやっさんなら、中にいます」


中では、ジーノが黙々と作業をしていた。


「順調かしら?」

「おう、こっちは最終段階だな」


ジーノが調整していたのは、殻割り用の設備だった。


最終的に、杵を打ち付けて殻を割って、

風選したあとに、木のローラーの間を通して軽く実を割る工程になった。


「試しに、動きを見ていくか?」

「お願いするわ」


ジーノがギルに杵を動かすことを叫んで伝ると、

杵を固定していたロープを取った。


水車の軸から伸びた棒が、杵を持ち上げて、

一定の高さまで行くと棒が外れて、杵が自由落下をして殻を割っていく。


数度の打ち込みをした種を見ると、

見事に殻が割れている。


「実も大きく割れていないわね」

「杵の高さ調整には苦労したからな」


その後に、風選と粗挽きの工程も見て、

これなら行けると実感できた。


「本当に、試しに石臼でやってよかったわ」

「あれがなきゃ、半月は伸びてたからな」


今だから笑って話せることだけど、

本当に冷や汗ものだったんだから。


「この水車って、これ以上の装置を追加するのは難しい?」

「ものによるんじゃねぇか、なにが希望だ」


今はひまわり油用に作っているけど、


「ライ麦の製粉とりんごの搾りがほしいの」

「そうじゃな、それらも使えたら楽になるな」


うーんと唸りながら考えてくれる。


「すぐにはわからんが、なんか考えておくわ」

「お願いね」


シードルに関しては、今や32件と契約を結んで、

月に350万イェン、1月で税収の3ヶ月分を稼ぐまでに成長している。


ただ、今の人力ではそろそろ限界に達しかけている。

会うたびに、ギータが泣きついてくるのが何よりの証だ。


それでも、シードルよりも先にひまわり油に投資したのは、

ひまわり油はそれさえも大きく凌ぐ見積もりだからだ。


シードルだけでは届かない、年間1億イェンが届く距離まで行ける。

そうすれば、やっと貧乏領地から脱出出来る。


そのためにも、脱穀を石臼するなんて、

ありえないポカはなくしていかないといけないわね。


種の天日干しが終わる、来週が楽しみでならない。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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