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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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ヘソを曲げた職人

昨日、お父様にジーノを任されてしまったが、

本音を言うなら、かまっていられない。


収穫までに、水車の完成は絶対条件だ。



「水車を2機作って欲しいの」

「お嬢様、水車は⋯⋯」


牛小屋を頼んだ若い大工のギルは、

困った顔をしてきた。


「作れないの?」

「やってやれなくはないですが、

なにぶん、自分も初めて作るので、どれくらい掛かるか⋯⋯」


一瞬、視線を逸らすギル。


「水車ってそんなに難しいの?」

「水車のキモは、軸と軸受なんですが、

この2つが悪いと、すぐに軸が折れます」


難しい顔をしている私を見て、

ギルが追加で説明してくれた。


「両方とも、硬い樫の木を使うのですが、

それを2m近く反りもなく削り出して、

芯を出すのは並大抵のことではありません」


ギルの言葉で、モヤモヤが晴れた。


「軸受も真円にするのが難しいと」

「そういうことです」


目を閉じて考える。


首を縦に振らないジーノを説得するか、

試行錯誤が必要なギルのどちらに任せるか。


時間を取るか、不確実でも今動かすか、

両方を天秤にかけて、


「ギル、とりあえずはあなたに任せるわ」

「わかりません、すぐに取り掛かります」


ギルとの打ち合わせを終え、

ジーノの作業場へ行く道中で、


「アシュ、念の為他領の大工に見積もりを取っておいてもらえる」

「かしこまりました」


ギルもジーノもダメだったための、

最終手段は用意しておかないとまずい状況だ。



「ジーノさん、居ますか?」


少しすると、奥の方からジーノが顔を出した。


「なんだ、昨日のお嬢ちゃんか」


私の顔を見て、あからさまに嫌な顔をした。


「それで、今日は何の用だ?」

「今日は、別の仕事を頼みに来ました」

「ほう」


水車のときは嫌がったのに、

他の仕事ならすんなり話を聞いてくれそうだ。


私は、簡単に描いた図面をジーノに渡した。


「それで、なんだこれは?」

「オセロってものです」


子供達が牛を見たり、ひまわりを見に行ったりしてるのを見て、

この世界には、子供向けの娯楽が足りないと思った。


「開墾で出た木材が余っているので、

それを使って、オセロを10個作って下さい」

「納期は?」

「3日でどうですか」

「こんなもんに、3日もいらんわ」


水車にそのやる気を向けてくれれば、

頭を悩まさなくていいのにと思ってしまった。


「材料はどこに取りに行けばいい?」

「”ギルさん”のところです」

「うんじゃ、材料を取り行くから、

帰った、帰った」


ジーノに、私とアシュは背中を押されて、

作業場から押し出された。



見積もりを見て、私は叫んだ。


「工賃だけで、200万!!」


水車が難しいのはわかるけど、


「家1軒と同じ値段って」


見積もりを放り投げ、肩を落とす。


「最終手段とは言え、本当に最終手段ね」


納期は、半月と書かれているので、

外注に出すなら、判断も早くしないといけない。


「ほんと、ままならないわね」


天井を見上げ、思い通りに進まないもどかしさを嘆いた。


「お嬢様、領地に行く時間です」

「わかった、今行くわ」



いつもなら、パン屋に先に行くのに、

見積もりの件もあって、ギルの作業場に向かった。


「調子はどうかしら?」

「思っていた以上に難しいですね」


汗を流し、必死に木を削るギル。

作業場の隅には、失敗した木材が重ねられていた。


「軸以外の部分を先にやったら?」

「そちらは、仲間の方で進めています」


私が心配することでは無かったようね。


「まだ3日しか経っていないのだから、

無理をして倒れたりしないでね」

「はい!気をつけます」


長く居ても、邪魔になるだけだと思い、

作業場を離れようとしたとき、裏から材料を抱えたジーノが出てきた。


「ジーノさんの方は順調ですか?」

「ふん、追加の30個なら夕方には出来上がるわ」

「本当に早いわね」


はじめの10個なんて、1日で作って来て、

追加分は2日で作ってしまうとわ。


感心していると、ジーノの視線がチラチラとギルに向けられていた。


「気になるかしら?」

「知らんわ!」


拗ねた子供のように、去っていった。


「完全に無関心ってわけではなさそうね」

「お嬢様、子供達との約束時間です」

「そうね」


まだ3日だと、言い聞かせてパン屋へ向かった。



パン屋の前には、ハルとナツに頼んで、

簡易的な長椅子と長テーブルを用意させていた。


祭りで、型抜きをするような感じだ。


「結構集まったわね」


昨日声を掛けたのに、20人以上が集まってくれた。


「それじゃ、今から新しい遊びを教えるわね!」


向かい合って座るように指示をすると、

さっきまで騒がしかった子供達が、すんなりと言うことを聞いた。


テーブルの上に置いてあるオセロを見て、

みんな不思議そうにしている。


「目の前にあるのを使うんだけど⋯⋯」


子供達に、オセロのルールを説明し、

実際に遊ばしてみると、飲み込みが早かった。



「いっただき!」

「あぁ~また負けちゃたよ」


方方からいろんな声が上がって、

楽しんでくれているようだ。


「リズ様、どうやったら勝てますか?」


女の子が悔しそうな顔でアドバイスを聞いてきた。


「そうね~⋯⋯」


女の子の耳元で、小さくアドバイスを伝えた、


「おいずるいぞ!リズ様に教えてもらうなんて」

「男の子は、小さいことを気にしないの」

「セコっ、それでも俺が勝つけどな!」


気がつけば、大人たちも気になって、

集まりだしていた。


夕方を前に、大人も混じってワイワイとオセロに興じている。


「子供だけかと思ったけど、大人も遊ぶのね」


中には、大人を負かす子供も居たりする。


「これなら、追加分が無駄にならなさそうね」



日が暮れ始め、オセロ広場の閉店の時間だ。


「今日はもうおしまいよ」

「「え~」」


子供だけじゃなくて、大人からも不満の声が上がった。


「明日も昼過ぎから、この時間まで置いておくから、

好きに遊んで」

「はーい!」


反応は上々だった。


明日これを見た、他領の人の反応が楽しみだ。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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