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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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浮き彫りの領地の弱み

ガリルから、柵が出来たと知らされたので、

荒地、改め牧場へ行くことにした。


「4日と言っていたのに、2日でよく出来たわね」

「牛が開墾の方で頑張ってくれてたんで、

早く、自由に歩けるようにしてやりたくてな」


愛着を持って接してくれていることを知れて、

無理したかいがあったと思えた。


「さっ!早く!お嬢様が牛を放してやってな」

「そうね!」


ガリルに促されて、牛の傍に行った。


「2日も繋いだままでごめんね」


牛に話しかけながら、杭と繋がっているロープを1頭ずつ解く。


自分を縛っていたロープから解放されたことを認識した牛は、

恐る恐る歩き出し、新しい居住場所を探索しだした。


「牛って、もうちょっと乱暴だと思っていたけど違うのね」

「あいつらは特別だと思いますぜ、

根っこを引かせるときも暴れねぇし、それ以外のときは草食って静かですぜ」


草を食べたり、座ったりしている牛たちを見て、

心の緊張がほぐされた気がした。


「そういや~、昨日領主様が来られましたけど、

牛を見て驚いてましたぜ」

「そうそう、夕食で聞かれたわ」


元々好きにして良いと言われていたので、

深くは突っ込まれなかったけど、「大切するように」と釘は刺された。


「それで、お嬢様が言ってたように、

牛で土地を改良しても、ライ麦が育つかはわかりませんぜ」

「あら、誰がライ麦って言ったの?」

「違うんですかい?」

「私は、小麦を育てるつもりよ」


これを聞いて、ガリルの顔が引きつった。


「お嬢様、小麦は無理です。ライ麦よりも栽培するのが難しいですぜ」

「わかっているわ、でもやらないことには、なにも変わらないわ」

「そうですけど⋯⋯」


長年、畑を任せられているからガリルだからこそ、

この領地で、小麦が育たないことは痛感しているんだろう。


「一気に小麦に切り替えるワケではないわ、

こっちの土が生き返ったら、こっちでライ麦を植えて

元の畑で一部で小麦を試してみたいの」


ライ麦は、土壌改良の作物だと元の世界では言われていたわ。


もしこれが、この世界でも同じなら今のライ麦畑は、

小麦が育つ可能性がある。


「言いたいことはわかりますがね⋯⋯」


それでも、うんとは言わない。

ガリルの立場的に、簡単には頷けないんだろう。


「この柵の中が生き返れば、単純に今の倍取れるようになるわ。

なら、1箇所くらい冒険しても大丈夫じゃない?」

「そりゃ、そうですが」

「挑戦しなきゃ、なにも変わらないわ!」


うーと唸りながら、下を向いた頭が左右に揺れる。

そして、頭の揺れが止まるとガリルの口が開いた。


「作付面積を倍にして、その上小麦の面倒もってなると、

結構仕事量的に厳しくなりますぜ」

「それはわかっているわ、それまでに人も増やす予定よ」


ここまで言っても、ガリルの中で引っかかるものがあるようだ。


「なにが不安なの?」

「不安じゃねぇんです、本音を言うと新しいことをするのが、

こえぇんです」

「大丈夫よ!責任は私が取るんだから、

その中で、やれることをやり切ってくれればいいだけよ」


やっと、ガリルの頬が緩んだ。


「そうか、そうですな、来年は忙しくなりますねぁ」


やっとやる気を出してくれたガリルに、

もう一つ、仕事を頼もうと思う。


「それでね、来週に20羽ほど鶏も買おうかと思うんだけど、

どうかしら?」


緩んだ頬を再度引きつらせてしまった。



ガリルとの話し合いが終わり、パン屋へと向かう道中。


「確かに、外の人が目立つようになったわね」

「そうですね、以前は誰も来られなかったのですが」


先日セバスが言っていたことを、

こうして見ると、実感できる。


ただ、どの人も向かう先はパン屋である。

パン屋の手前にある、八百屋には誰も足を止めない。


「こっちも、人が来てくれているうちに、

新しいことをしないと、乗り遅れそうね」



「順調そうね!」


工房に入ると珍しい子が居た。


「ジャンはここで何しているの?」

「なにって姉ちゃん、手伝っているんだよ」


ジャガイモを潰しながら、返事をしてきた。


「ジャガイモの仕訳を任せていなかった?」

「嬢ちゃん、それに関してはあっちと話は、

俺がしてあるから問題ない」

「あら、そうなの」


現場同士で納得してのやり取りなら、口を挟む理由はない。


「でも、なんでこっちに来たの?」

「うまいもんを自分で作れるって、すげぇことじゃん」


そう言ってきた目は、とても真っ直ぐだった。


「それなら、いっぱい頑張ってね」

「うん!」

「ちなみに、アンはリリィの手伝いをして、

フックはマリーと一緒だぜ」


いつも3人で行動していると思っていたけど、

各々やりたいことをやっているのね。


「おいジャン!あれを嬢ちゃんに食べてもらえ」

「あっ!」

「なに?」


バンズの一言で、ジャンは生地をこねて、

何かを作り始めた。


「出来るまでの楽しみってことで、

見守ってやっておいてくれ」


バンズが、すこし誇らしげにしていた。


「じゃ、今のうちに話をしたいんだけど、

セバスから聞いたけど、売上が1.5倍のようね」

「あぁ、毎日それなりに領外の奴が来ているお陰でな」

「一過性のものじゃなかったってわけね」


ただ、さっき見た光景を思い出す。


「来てくれるのはいいけど、

このままじゃ危ないわね」

「なんでだ?」

「この領地には、パン屋と八百屋しかお店がないの、

しかも、八百屋には誰も足を止めていない」

「じゃ、酒場とか飯処を作るか?」


その案は一理あるけど、リスクのほうが今は大きい上に、

領民の食事の質で言うと、まだの段階でやるのは違う気がする。


「食材を仕入れてやるほど、余裕はないわ」

「そうか⋯⋯」

「今は、シードルで外から稼いでいるけど、

ゆくゆくは、領地にお金を落としに来てほしいのよね」


バンズとアレクも考えてはくれるが、

これといった案は出てこなかった。



「姉ちゃん出来た!」


停滞した話し合いの空気をあどけない空気が和ませた。


「なにを作ってくれたの?」

「食べからのお楽しみだよ!」


手渡されたパンは、今までの長方形型ではなく、

丸っこいタイプの菓子パンのようだった。


「早く食べて、食べて」


ジャンに急かされて、焼き上がったパンを頬ぼった。


「うん!?」


外のパンはいつもと変わらなかったが、

中に、潰したジャガイモが入っていて、甘さを感じた。


「美味しいわね。これ、ジャンが考えたの?」

「考えたっていうか⋯⋯」


急に様子が変わった。


「こいつの家で、パンと一緒に食べるが流行ったらしくてな、

ジャンが、どうやったらイモの甘みが出るか考えて出来たのがそのパンだ」

「恥ずかしいから、言わないでくれよ」


ジャンが、バンズに種明かしをされて、

照れ隠しの八つ当たりをしだした。


「なんで、照れるの」

「照れてない、ただ、一緒に食べるのは俺が見つけたわけじゃないから」


なるほどね、誰かの発見を利用したって思っているのね。


「一緒に食べるのがジャンじゃなくても、

どうやったらもっと美味しくなるかを考えたのはジャンでしょ?」

「⋯⋯うん」

「なら、これはジャンが考えたパンよ!

下を向いてないで、胸を張りなさい!」

「わかった」


顔を上げて、泣き出しそうな目拭って、

小さく笑い返してくれた。


「じゃ、ジャンに宿題ね」

「宿題?」

「10個作るための材料と焼き時間、

それに原価をみんなに聞きながら、書き出すこと!」

「それをやったらなにかあるのか?」

「それは、出来てからのお楽しみ」

「やってみる!」


そう言って、作業に戻った。


バンズが私の耳元で囁く。


「おい、あれ売り出すのか?」

「結構いい線言ってると思うわよ」

「味の問題じゃない、釜の問題なんだ」

「大丈夫よ、そっちは考えがあるから」

「へ?」


声の大きさを戻して話しも戻した。


「2人にも宿題ね、どうやったら領地に人を呼べるか?

2日後までに考えておいてね」

「おい、まじかよ」

「いい案出ますかね⋯⋯」


バンズもアレクも弱気な声を上げている。


「2人も相談していいからね」


それだけ言い残して、パン屋を後にした。



そろそろ次のフェーズに進む時期だ。


ここで失敗すると、数カ月の努力が無駄になる、

みんなの働きを無駄にしないためにも、慎重に計画を練らないと。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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