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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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お父様への収支報告

シードルの事業をはじめて、2ヶ月か経過した。


私は、お父様の書斎の前で深呼吸をしてから、

ゆっくりとノックをした。


「お父様、失礼します」


中には、お父様とセバスが待ち構えていた。


「今日は、シードルの事業について経過報告にまいりました」

「聞かせてくれ」


お父様に資料を渡し、中身の説明をした。


売上と支出、予定に対する達成率などを話し、


「バリス商団の妨害はありましたが、

それでも契約数は右肩上がりで、利益のみで税収の5ヶ月分になります」


説明をしている間、お父様とセバスは資料にくぎ付けで、

最後には、資料を持つ手が震えてさえ居た。


「リズ、間違いないのか?」

「はい、誤りがないように、何度も計算しました」

「13年間、私が出来なかったことをやってのけのか」


お父様は自嘲気味に、笑った。


「食堂で言ったことを、やり遂げたのか」

「出来ないことを私は口にしません」


希望的観測で走り出すほど、私は愚かではない。


「旦那様、それだけではありません、

リズお嬢様のジャガイモの事業のおかげで、

領に、旅人が立ち寄るようにもなり始めました」


セバスが、副次的現象を告げた。


「そうだったな、バンズのところも、

売上を1.5倍に伸ばしていたな」


パン屋の収支は私のところに来ないし、

シードルで忙しくバンズに聞きそびれていたけど、


「外からお金が入ってくるのは、いいことです」

「リズは、これも狙っていたのか?」

「そちらは間違いなくマリーの手柄です」

「そうか」


会話が途切れ、静かな時間が流れようとしたが、

お父様は、それを許さなかった。


「セバス、悪いが席を外してくれ」

「かしこまりました」


わざわざセバスを外したということは、

なにか重大な話でもあるかと身構えた。


「リズ、私は君に聞かないといけないことがある」

「なんでしょうか、お父様」


一呼吸置いて、お父様は口を開いた。


「君は、本当にリズなのか?」

「!?」


予想外の内容に、心臓が跳ねた。


いつかは起こり得ることだとは思っていた。

でも、こんなに早いとは。


「お父様は何を言っているのですか」

「リズは、昔から本を読むのが好きで、

小さい頃から、図鑑や伝記といったものを読んでいた」

「⋯⋯はい」


私が持っているリズの記憶でも、本をいつも読んでいた。

それに助けられたこともある。


「だから、普通の子よりは知識があるとは思う――」


ゆっくりと、でも重たくお父様は続けた。


「それでも、賢すぎるんだよ君は」

「な、なにを言っているんですか」


お父様に聞こえるほどに、鼓動が大きくなった。


「パンの利益改善もジャガイモの毒も、

シードルも、本で得た知識だとしても」


喉が締まり、息が出来ない感覚に陥る。


「ここまで迷いもなく、物事を進めるには幼すぎるんだ」


お父様の言い分はごもっともだ。


この世界の15歳は成人だ。

それでも、15歳はいくら背伸びをしても15歳でしかない。


だからといって、素直に認めるほど私はまだ、

お父様のことを信用できていない。


すーと息を吸って、ゆっくりと息を吐いた。


「幼いのと、出来ないは一緒ではありません」

「どういう意味だ?」

「私は15年間、知識を蓄えるだけでした。

ですが、知識を使って帳簿を見たとき胸が痛みました」


この領地の現状を知ったんだ。


「帳簿の中身をお父様に聞きに来たときに、

お父様はこう言いました。『責任は自分が取る』と」

「それが、領主の務めだ」


私は首を横に振って、否定した。


「やることをしてから取るのが責任です」


お父様がたじろぐ。


「お父様がしているのは、兄への償いと責任を盾にしたただの放任です」

「馬鹿なことを言うな、やれるだけのことはやったぞ!」


椅子から立ち上がり、両手を机に叩きつけて反論した。


「やることはしましたが、やり切ってはいません」

「何が言いたいのだ」

「バンズがパンを持って夜に来たのを覚えていますか?」

「あぁ⋯⋯」

「酵母を使うとパンが柔らかくなる知識は、持っていました。

ですが、酵母をどう使うかは知りませんでした」


お父様が、椅子に座り直し息を整えていた。


「それでも、パンを柔らかく出来たのは、バンズがいたからです」

「バンズのおかげというのか?」

「はい、アシュもマリーもギータも全員です」

「1人でやったわけではないと言うんだな」

「はい、私一人では間違いなく失敗していました」


お父様はパイプを取り出し吸い始める。


「わかった、疑ってすまない」

「いえ、私はみんなのために、やれることをやりたいだけです」

「あぁ、これからも頼む」

「はい」


書斎を出てすぐに、廊下の壁にもたれ掛かってしゃがみ込んだ。


「危なかった。もう少し突っ込まれたら、

ボロが出るギリギリだったわ」


掌を見ると、ものすごい汗をかいていた。


まだ、疑いは晴れ切っていないだろう。

だからといって、足を止めるわけにはいかない。


みんなのことが思い浮かび、掌を握り直した。


今以上に疑われたとしても、

私が居ないと困るっていうくらいまで突き進んでやる。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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