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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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人手不足

人手不足をどうにかするために、私はジャンたちに会いに来た。


外販をやめたときに、3人を領へ移住しないかと誘ったが、

仲間が居るからいけないと、断られてしまった。


「ジャン、元気にしてた?」

「何だ姉ちゃんか、いつも通りだぜ」


ジャンたちは、自由市場の中に居た。


「何をしてたの?」

「姉ちゃんみたいに、雇ってくれる人を探してた」

「そうなんだ」


バッグから、パンとイモを出して3人に渡した。


「いいのか?」

「今日は頼み事があって、これは駄賃よ」

「なんだよ?」

「仲間が心配でこれなら、一緒ならどう?」


頬張っていた手が止まる。


「移住するだけか?」

「家と食事は提供するわ、変わりに働いてほしいの」


ジャンは、一気にパンを食べて返事をした。


「それなら、みんなのとこ行こうぜ」


フックとアンも急いでパンを食べて、

私とアシュの手を引いて案内してくれた。



自由市場の奥にある細道を通った先は、

さっきまで居たところとは別物だった。


鼻を刺す腐敗臭が立ち込め、廃材で作った小屋が立ち並ぶ。

そこにいる人の目はどれも、光がなかった。



「ここだ!」


ジャンが指さした先にも、廃材の小屋があった。


「ちょっと待ってて」


ジャンたちは、私たちを置いて小屋に入っていった。


「お嬢様、私から離れないで下さい」

「えぇ⋯⋯」


ジャンたちが居たからここまで来れたが、

彼らが居なくなった瞬間、私たちは異物になった。


小屋や廃屋の隙間から、いくつもの視線を感じる。


ジャンたちが戻ってくるまでの時間が、

いつもより長く感じ、汗が顔を伝う。


「待たせたな」


ジャンの後ろから、4人が出てきて、

別の小屋に入っていた、フックのアンも2人連れてきた。


「こいつらが、俺達の仲間だ」


そう言って、彼らを私の前に立たせた。


私と同じかちょっと上くらいの男4人に女が2人。


「ジャンから話は聞いたかしら?」


無言で頷く6人。


「衣食住と1日300イェンの報酬を提供する代わり、

私の領地で働いてほしいんだけど、どうかしら?」


彼らに、労働条件を伝えた。


「なぁユル兄ちゃん行こうぜ」


ジャンが、1人の手を揺らしながら問いかける。


ユルと呼ばれた男が口を開く。


「なぜ貧民街で暮らす俺達なんですか?」

「ジャンたちが、あなた達を残して来たくないって言うから」

「仕事の内容は?」

「男は、りんごを潰したり畑を耕したり、

女は、イモとりんごを洗ったり腐ってないか見たりよ」


ユル以外は、落ち着かない様子だ。


「少し話をさせて下さい」


そう告げると、9人で固まって話し合い出した。



話し合いは3分ほどで終わった。


「あなた方が、ジャンたちに良くしてくれていたのは聞きました」

「それで?」


ユルがみんなを見た後に、


「働かせて下さい」


その言葉の後に頭を下げて、周りも遅れて頭を下げた。


「じゃ、決まりね。今からあなた達は私の領民よ」

「「はい」」

「やったぜ!」


人一倍喜んでいたのは、ジャンたち3人だった。



9人を連れて、領地へ帰ってきた。


「とりあえず、この3軒を好きに使って」


彼らに水浴びをさせて、空き家だった家と、

領民から集めた衣服を与えた。


「まじかよ!こんなとこもらっていいのか」

「おい、テーブルに食事があるぞ!」


ハルとナツに頼んで、食事を準備させておいた。


「これ、食べていいんですか?」


ユルが聞いてくる。


「好きなだけ食べて」


聞くやいなや、パンとイモを両手に持って食事を始める。


「食べながらでいいから聞いて、仕事は明日からしてもらうけど、

働かなかったら元の場所に戻って貰うわ」


これを聞いて手が止まった。


「仕事は他の領民と同じよ。

来てもらっていて悪いけど、無償で住まわすほど余裕はないの」

「それ以外にありますか?」


女性がはじめて聞いてきた。


「問題を起こすのはダメよ!物を盗んだり、他の領民と喧嘩したり」

「はい」

「明日は昼前に、ギータって人が作業場に案内してくれるから、

それまでには、起きて準備していたね」


必要事項を伝え終わると、私は屋敷に戻った。



ジャンたちが来て1週間。


「ギータ、彼らの働きぶりは?」

「悪くはないんですが⋯⋯」


含みがある口ぶりだ。


「問題でも?」

「一番奥で潰しているハシュが、サボり癖がありまして」

「どのくらい?」

「トイレと言って、普通に2時間とか戻ってこなかったり」

「ひどいわね、ユルには言ったの?」

「ユルからも言ってもらっているのですが、

あまり効果が内容です」

「他のみんなは問題ない?」

「ハシュ以外は本当にまじめで、他の作業員とも良好な関係です」

「わかったわ、ありがとう」


アリの法則なんて言われているけど、

早めに対処しないといけないわね。


その日に、私からもユルにハシュについて話をした、


「すみません、ギータさんにも言われて、

言ってはいるんですが」

「彼、体調が悪いとかではないのよね」

「それはないとは思います、食事は僕らの中でも一番多く食べていますし」

「数日は様子見るけど、改善されなければ覚悟してね」

「僕らは、追い出されるのでしょうか?」

「連帯責任とは思っていないわ」


それを聞いて、胸を撫で下ろしていた。


「ただ、みんなとはちゃんと話しておいて、

私だって、あなた達を手放したくはないわ」

「はい!」


1週間しか経っていないのに、

ここに居たいと言う思いはあるのね。



数日と言ったけど、問題はすぐに起きてしまった。


「道を開けて!」


シードルの作業場の前には、人だかりが出来ていた。


中には、ハシュと男性が胸ぐらを持ち合って、

ユルが2人を止めようとしていた。


「ギータ、状況は?」

「リズ様、ハシュがまた2時間ほどサボって、

それをボンタさんが注意をしたら⋯⋯」


数日様子見する前に、ボンタが我慢出来なくなったのね。


「ごめんね、後は私が引き継ぐわ」

「本当にすみません」


ギータが頭を下げるが、

問題が起きる前に対処できなかった私の責任だ。


「はいはい!2人とも手を離しなさい!」


手を叩いて私に注目するように仕向けた。


「リズ様!」


私を見て、ユルが泣きそうな顔をした。


ボンタは手を離したが、ハシュはまだ胸ぐらを掴んだままだ。


「手を離しなさい!」


語気を強めて命令する。


ハシュは驚いて手を離した。


「大まかな経緯は聞いているわ」

「すみません」


ボンタが頭を下げ謝ってきた。

その横には、不貞腐れた顔が並んでいた。


「ユル、みんなと話はしたの?」

「⋯⋯はい」

「それで?」

「みんなもここに居たいと、

だから、みんなでハシュにサボらないように言いました」

「わかったわ」


問題が起きなければ、まだ時間を与えられたんだけどね。


「ハシュ、なにか言うことは」

「なんで俺だけが悪者なんだよ!」

「あなたがサボるからでしょ?」

「俺が居なくたって、遅れないんだからいいだろ」


完全に話が通じない。


「遅れる遅れないじゃない、

あなたが真面目に仕事をするかしないかなの」

「他の奴らだって、手を抜いて仕事してるだろ!」

「それで?」

「別にここに来たかったわけじゃない、

みんなが来るって言うから来ただけだ」

「そう」


私はユルの顔を見た。

ユルは決心がついたのか、頷いてみせた。


「なら1人で戻りなさい、あなた1人の振る舞いが、

ユルたちにも迷惑を掛けているのよ」

「あぁ、こんな場所出ていってやる、

誰が好き好んで居てやるか」


エプロンを床に投げつけて、作業場から出ていった。


「本当にすみません」


それだけ言って、ユルは後を追っていった。


「はいはい、みんな作業に戻って」


場を解散させて作業に戻させた。


「ボンタさん、ごめんなさい」

「いえ、俺のほうがお嬢様に迷惑を掛けてしまいました」


作業場を出ると、ジャンたちが泣いていた。


「姉ちゃん、だめなのか?」

「はじめに言ったはずよ、真面目に働くことと、

問題を起こさないことを」

「だけど⋯⋯」


まぁ、この年だと理解はできても、納得は難しいのだろう。


「規則は規則よ」


厳しいようだけど、それが社会だ。



ハシュは1人で領地を出ていった。


「見送ったの?」

「はい、最終的には俺達にも当たって来ました」

「ジャンたちは、まだ泣いているの?」

「部屋に籠もっています」

「何人かは付いていくと思ったわ」

「リズ様」

「?」

「僕達、家で笑っているんです」

「いいことじゃない」

「はい、1週間前まではただ生きていました。

でも、今は笑って生きています」

「じゃ、私はもっと笑えるようにしないとね」

「お手伝いします!」


1人は去ってしまったけど、

かけがえないのない領民が8人増えた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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