商団潰しの始め方
転売していた店を後にして、その足でとある店に向かった。
「へい、いらっしゃ⋯⋯」
店主は私の顔を見てバツが悪そうにした。
気にせず、カウンターに座る。
「別に、嫌味を言いに来たわけじゃないのよ」
「じゃなんだっていうんだ」
「私との取引を蹴ってまで仕入れたシードルを飲んでみたくて」
「飲んだら帰ってくれよ」
「もちろん!」
あからさまに喜んだ反応を見せた。
「なぁ嬢ちゃん、ここに来た目的はなんだ?」
言われるままに付いてきたバンズには、
ここに来た意図を話してはいない。
「ただ、飲めばいいのよ」
「さいですか」
程なくして、グラス3つが出された。
「これが、取引を奪ったシードルね」
「それを嫌味っていうんだ」
「あらごめんさない、つい本音が出たわ」
「白々しい⋯⋯」
軽いジャブを打ってシードルを口に含んだ。
眉間にシワがよる味をどうにか飲み込んだ。
「店主は自分で飲んでこれを仕入れると決めたの?」
「あ?当たり前だろ」
「飲んだのは、取引のときの1回だけ?」
意味深な質問に、店主は訝しそうに答える。
「あぁ、売り込みのときに飲んで、
嬢ちゃんとこと、変わらないから仕入先を変えたんだ」
「なるほどね~」
「安いのに、味が一緒で困ったか?」
はぁとため息をついて告げる。
「あなたと取引をやめれて正解だったみたいね」
「あぁ!もう一遍言ってみろよ」
店主が怒鳴ったせいで、賑わっていた店内は静まり返った。
「シードル売れる?」
「今関係ないだろ!」
「注文した客が再度注文しているの?」
「ど、どういうことだ?」
圧に押されないで質問をしてくる私に、店主は動揺する。
「飲んでみたらわかるわ」
それを聞き、私のグラスを取って飲む。
「⋯⋯なんだ、これ」
「私の質問の意図がわかったかしら?」
「売り込みに来たときは、こんな味じゃなかったぞ」
「だってそれ、私のシードルだもの」
「は!?」
「安さに目がくらんで、騙されたってことよ」
「う、嘘だろ⋯⋯」
「”バリス商団”のやり口は巧妙ね」
店主はカウンターを叩いて憤る。
「不味さがわかって安心したわ」
硬貨をカウンターに置いて、店を出る。
「なるほど、嬢ちゃんの意図が読めたぜ」
「本当?」
自信満々で、語り始めた。
「バリス商団が騙して売っていることを教えて、
嬢ちゃんの言う商売人同士の信用を無くすってことだろ」
「バンズにしてはすごいわ」
「おいおい、俺を何だと思っているんだ」
私とアシュは笑ってしまった。
「ごめんごめん、大まかには言うとおりよ」
「でも、それだけでどうにかなるか?」
「商売人同士の繋がりを舐めないほうがいいわ、
私は、バリス商団をここら一帯から締め出すわ」
「まじかよ⋯⋯」
そのためにはどうしても仲間にしないといけない人がいる。
「女将さん、お邪魔します」
「最近は、よく来るね」
「色々と、忙しいですからね」
不敵に笑うと、女将も一緒に笑ってくれた。
「それで、どうだった?」
女将に、これまでのことを全て話した。
「あそこのバカ店主がうんなことをね⋯⋯」
「転売禁止としてなかった私も悪いですから」
「ただ、私たちを騙して粗悪品を売りつけようなんて、
バリス商団がやっていたとはね」
「女将さんは、バリス商団と取引を?」
「うちはないけど、他の店からはいい話は聞かなかったね」
前科持ちの商団ってわけね。
「で、私バリス商団を締め出したいんです」
「!?、大きく出たね」
「うちの商品を使っていたとか、
取引先を奪われたとか抜きで、見過ごせません」
「どうしたてだい」
私は、厨房の片隅にあるジャガイモに視線を落とした。
「あれって、芽と変色した部分は毒なんですね」
「貰ったレシピに、重要!って書いていたね」
「仮に、それを知っているのに伝えないで卸していたらどうなります?」
女将は目を細めた。
「食材って、扱い次第で生死に関わります。
今回は不味いで済みましたけど、物が違えば大事でした」
横で、バンズが頷いている。
「安いからって飛びつく方も悪いけど、
信用を踏みにじって商売する人を放置しておけません」
「それだけを言いに来たのかい?」
私の意図を理解してくれた。
「力を貸して下さい」
「でも、私がやれることなんてたかが知れているよ」
「いえ、商売人同士の繋がりは貴重です。
今回のことを、同業に広げて貰うだけでいいんです」
「そんだけかい?」
私は少し間をおいてゆっくりと言った。
「それが、最強の武器です」
女将にお礼を言って、領地に戻ることにした。
領地に戻ると、すぐにマリーを呼んで新しい仕事を頼んだ。
「取引先探しは一旦中止して、バリス商団で断られた店を回り直して」
「もう一度声を掛けるってことですか?」
「ううん、騙されていることを教えて、
それがバリス商団の仕業だと伝えるだけでいいわ」
「なるほど!わかりました」
バリス商団は信用を捨てて、小銭を稼いだだけ、
信用がなければ商売が出来ないことを思い知るといいわ。
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