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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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模造品の正体

6店舗の取引を失ってからの1週間は忙しかった。


別の街にも営業を掛けて取引先を探したが、

模造品が先に取引を取っていたため難航した。


どうにか、7店舗と契約を結ぶことが出来て、

赤字に陥らなくて済んだ。



「これが、噂の”ヤツ”だ」


女将が私の前に置いた1つの樽。

女将に頼んで、どうにか手に入れてもらった模造品だ。


「お手数おかけして、すみません」

「競合品が気になるのは、商売人としては当然さ」


女将は笑って苦労を流してくれた。


「はっきり言うけどね、嬢ちゃんが気にする相手じゃないよ」


女将は意味深な発言をして、調理に戻っていった。


樽を荷馬車に積んで、領地に戻った。



パン屋には、バンズ、マリー、ギータが集まっていた。

模造品を評価するためだ。


「色は、うちのと似ているな」


バンズがグラス越しに色味を観察した。


「ですが、りんごの香りがなくてアルコール臭が鼻に来ますね」


マリーは香りに嫌悪感を持つ。


「「ゴクリ」」


!?

口に含んだ瞬間、違和感が走った。

りんごの甘みがない。

代わりに、アルコールの味と苦みだけが残る。

「⋯⋯雑ね」

「うえ、なんですかこれ」


ギータが憤慨した。


「不味いなこれ、これがシードルかよ」


ジュースみたいだと言っていたバンズも、

模造品の味に苛立ちを滲ませていた。


「これで、安さの理由が判明したわね」

「味でわかったのですか?」

「不味い以外にわからないです」


マリーとギータが聞いてきた。


「発酵を早くするために温度を上げているわ。

だから、りんごの香りも甘さも飛んで雑味だけが残っている」

「味だけで、そんなことがわかるんですね」


女将が言っていた意味はこれだったのね。


「でも、まずいわね」

「あぁ、不味いぜ」

「味のほうじゃないわよ」

「へ!?」


バンズがきょとんとしているので説明する。


「シードルを広めている段階だから、

この味がシードルだと認識されてしまうのよ」

「そういうことか!」

「このシードルもどきを仕入れているお店結構ありました」


外販からシードルの営業を任せたマリーが心配する。


「売り込みに行った店だけでも、40店舗近くはこっちを仕入れているわ」

「じゃその店の客は、シードルはこういう味だって認識するのか」

「そうよ、ジャガイモのときと同じ事が起こるわ」


人が開拓した市場を好き勝手踏み荒らされたことに、

苛立ちどころか、殺意に近いものが込み上げた。


ただ、この味で40店舗以上も?

味と規模が釣り合わない。


「うちから仕入れていた店は、この味でなぜ乗り換えたんでしょうか?」


ギータも同じ違和感を感じていた。


「売り込むときはうまいのを持っていったんじゃねぇか?」


バンズの言葉を聞いた途端に、納入表が頭に浮かんだ。


「⋯⋯やってくれたわね」


すべての謎が、私の中で繋がった。



翌日、私たちはある店舗を見張った。

人目につかない路地裏で、息を潜めて裏口を監視する。


「この店が怪しい理由は何だ?」


バンズが、根拠を求めてきた。


「店の規模に対して、発注数が合わないのよ」


繁盛している女将の店でも、1日に1樽だ。

でも、席数も客数も劣るこの店が、途中から2樽発注して来た。


「うちのシードルで売り込んで、

実際に卸しているのは不味いやつってことか」

「多分そういう手口ね」


1時間。動きはなかった。


「来たか!?」


裏口に、1台の荷馬車が付けた。


御者がノックすると店主が顔を出し、樽を一つ渡し荷台に載せ、

御者が店主に小袋を手渡した。


「間違いないわ!うちの樽よ!」


そう言って、裏口の方へ駆け寄り、


「よくもやってくれたわね」


私たちの登場に店主は明らかに動揺している。


「なっ、なにを言っているんだ!」

「転売しておいてよく言うわ」

「転売だと!?言いがかりを付けるなよ!」


怒鳴れば萎縮すると思ってか、大声をあげる店主に対し、


「うちの樽をその御者に渡していますよね?」

「その樽は、こいつから仕入れている樽だ」

「なら、この印は何かしら?」


私は、荷台に載っている樽の印を指さした。


「これ、うちの家門の焼印ですけど?」


焼印を見た途端に、さっきまでの威勢が形を潜めた。


「わ、渡すのを間違ったんだよ」


この期に及んで、言い訳をする店主に、


「満杯の樽をどう間違うっていうのですかね?」


語気を強くして問う。


旗色が悪いのを察しって、

馬を出そうとした御者をバンズが制止する。


「兄ちゃん!どこに行こうとしてるんだ」

「俺はただ雇われただけだ」


と、ありきたりなことを口にする。


「誰に雇われたのかしら?」

「⋯⋯バリス商団です」


首を傾げ、バンズに聞く。


「バリス商団って?」

「隣領のバリス領が運営している商団だ」

「じゃ、頭は領主ってこと?」

「たぶんそうだ」


商団かどっかの領地が絡んでいることは予想していたけど、

両方なのは予想外だわ。


「これって罪に問えるのかしら?」

「難しいんじゃねぇか?転売禁止とは契約書に書いてないだろ?」

「そうよね⋯⋯」


あぁ、この世界の人に良識を求めたらいけないのかしら。


「そいつの言うとおりだ。仕入れたものを売って儲けて何が悪い!」


バンズを指さして、何故か威勢が戻る店主。


「そうね、小銭稼ぎもここまでよ。契約は今日で終わり」

「あんなもん、すぐに飲まれなくなるわ」


捨て台詞を吐いた店主の顔に近づき囁く。


「人の商品横流しして、このままで済むと思っているの?」


店主の顔から血の気が引き、腰が砕け、その場に座り込む。


「そっちも放してあげて」

「いいのか?」

「買ったんだからしょうがないわ、でも樽はちゃんと返して」

「は、はい」


返事をして去っていった。


「で、どうするんだ?」

「相手の手の内が見えたから、いくらでもやり方はあるわ。

それに、気づかない?」

「なにが?」

「これで、相手は新規顧客をもう望めないのよ」

「あぁ!!!」


それでも、久しぶりに腹わたが煮え返る。


「ただの競合相手だと思っていたけど、

人の商品をダシに使って市場を荒らすなら、こっちだって容赦しないわ」


私の中で、明確に敵と認識した。


「手を出さなくても自滅するけど、

そじゃ、私の腹の虫がおさまらないわ」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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