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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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領地を変える一杯

パン屋の近くにある倉庫に領民10人を集めた。

資本8割ぶっ込んだ事業を開始するためだ。



「今日から、ヴェルデン領の命運を分ける商品を作るわ」


領民たちはざわめき立つ。


アシュに合図して、

一人ひとりにシードルを配った。


領民の反応はとてもわかりやすかった。


男たちは、


「酒というよりはジュースだな」


逆に女性たちは、


「これなら酔いつぶれないからいい」


と、意見が割れたがそれでいい。


「いい!1個40イェンのりんごが、

1個150イェンの価値に変わるわ」


それを聞いてざわめきがさっきより大きくなった。


「これがうまく行けば、みんなの夕食に毎日!!

肉が並ぶことも難しくなくなるわ」


「まじかよ!!!」

「肉だって」


肉と聞いて一気に騒ぎたった。


「あなた達には、りんごの選別、果汁絞りをやってもらいます」

「「はい!」」


やり方を説明すると、みんな黙々と作業をはじめた。



「おっ!やってるな」


作業を眺めていると、バンズが顔を出しに来た。


「今日は、暇そうね」

「一昨日が異常だっただけだ」

「本当は、その異常が続いてくれると私的にはうれしんだけど」

「やめてくれ」


苦笑いをして両手を挙げるバンズ。


「これが、昨日相談していたやつか」


バンズには昨日相談をしていた。

内容は、労働力の確保と樽の保存場所についてだった。


「パン屋の近くに、地下付きの倉庫があるなんてツイていたわ」

「ここは前の領主様のときに使っていた、税の保管場所だったんだ」


倉庫なのに、わざわざ石造りであることに納得した。


「皮肉ね、搾取した作物を保管する場所が、

今は、新しい事業の作業場になるなんて」

「俺はそっちのほうがいいけどな」

「それで、ただ見に来たわけじゃないんでしょ?」


ちょっと目を細めて、バンズに問いかける。


「シードルを作るついでに、酵母を作ってくれるっていうんだから、

そりゃ見に来ないと罰が当たるってやつよ」

「はいはい」


まぁ、わかっていたんだけどね。


「ちゃんと指示しているから心配しないで」

「頼りにしてぜ!」


他愛ない会話をある程度し終えると、

バンズはアレクが心配だとパン屋に戻っていった。


私も見ているだけだと暇なので、みんなに混じってりんごを潰した。



「4樽作るのにこんなに掛かるなんて」


作業をはじめてから6時間は経っただろう。

外はいつの間にか、赤色になっていた。


みんなも疲労が出ている様子だった。


「今日はこれで終わりだけど、3日後また4樽来るから、

またお願いね」

「「はい」」


ヴェルデンイモの外販の利益のほとんどを樽を買うために投入している。


地下室に並んだ樽を見て、うまくいきますようにと祈って、

今日の作業を終える。


帰り道、私はアシュに弱音を吐いてしまった。


「市場調査も完璧で、販売先の目処も立っているけど、

それでも失敗したらと思うと⋯⋯」

「お嬢様は失敗しません」

「それでも⋯⋯」


私が言いかけたとき、アシュが優しく抱きしめた。


「マリーたちが毎日頑張って稼いでくれて、

りんごだって大切な食料を無駄にしてしまうと可能性だってある」

「はい」

「税収の1ヶ月に近いお金を投じて失敗したら⋯⋯」

「またやり直せばいいのです」


アシュが迷いなく答えた。


「お嬢様は、転んでもまた立ち上がれるお方です」


その言葉に、弱気になっている自分が恥ずかしくなった。

こんなことで揺れるなんて、前の私ならありえなかった。


「そうね!そのために頑張ってきたのよね!」

「はい」

「アシュ、ありがとう」


暗い顔がアシュの胸の中で、やる気を取り戻した。




それから2週間が経ち、

夕方に樽を積んで、外販をしている街へと向かった。


今日は、シードルの先行販売の日だ。


女性の声を聞いて回っていたときに、

1軒の酒場の女将と仲良くなった。


試飲してもらうと、シードルに惚れ込んだということで、

ならその酒場で先行販売しようという話になった。


「女将さん、今日はお願いしますね」

「待ちに待った日だね」


私よりも待ち遠しかったと言わんばかりの女将が出迎えてくれた。


「うまくいくといいんですけどね」

「何いってんだ、私が惚れた酒なんだから自信持ちな」


大まかな作業内容をすり合わせする。


「半グラスはサービスで、

それ以降は、1杯250イェンで販売するわ」

「サービスなんて言わないで普通に売りゃいいのに」

「女将さんだって、試飲したから認めてくれたんでしょ」


どんなにいいものだって、飲まれなければ意味がない。


ヴェルデンイモも、今は試食無しで売れているが、

きっと試食がなければ、見向きもされなかっただろう。



「うんじゃ、店を開けるよ!!!」


女将の合図で従業員が店の扉を開けた。



最後までお読みいただきありがとうございます。

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