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旅立ち1
人類が太陽系の辺境を越え、未知の宙域へと足を踏み出そうとしていた時代。
火星の赤い砂漠には、いまなお開拓の鉄骨と風化したコロニーの影が連なり、地球の蒼い光は遠い空に微かに揺らめいていた。
人類の繁栄は確かに進んでいた。だがそれは豊かさよりもむしろ、欲望と空白を埋めるための果てしない航海に似ていた。
その年、火星連合評議会は一隻の探査船を送り出す決定を下した。
名を《アストラル》。全長約800メートルの中型艦にして、最新鋭の融合炉を備えた調査船だ。
目的は単純でありながら、人類にとって挑戦的なものだった。
――小惑星帯を越え、既知の星図から外れた宙域に足を踏み入れ、そこに眠る新たな資源と知見を持ち帰ること。
火星軌道上に浮かぶオービタルリング〈ヴェスタ・リング〉。ヴェスタ・リングには造船機能を持つドッグがいくつも存在する。アストラルの母港となったのはその一つである。
火星の表面は、大部分が赤茶けた荒野のまま広がっている。そこに集う人々の瞳だけが、未来を夢見る輝きを宿していた。




