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幕間 00

特務検死官 ― 御堂弥勒


事件を追う刑事でもなく、

現場を守る鑑識でもない。


死体と“対話デート”する男。


御堂弥勒。

特務検死官。


――必要な時だけ、呼ばれる。

(勝手に入ってくることもある)


能力者事件。

異常死体。


その中でも、

「死体から情報を引き出す必要がある案件」に限って。


白衣を羽織った長身の男。

下は黒いスーツ。


無精髭。

整っていないのに、不思議と清潔感のある顔。


そして――

どこか、優しい目。


だが。


その耳は、死者の声を拾う。


死後、まだ時間の経っていない遺体に限り、

“最後の残響”を聞くことができる。


それは、言葉ではない。


多くは――悲鳴だ。


「やあ」


弥勒は、白骨化した頭蓋を両手で持ち上げた。

「久しぶりだね」


当然、返事はない。

「……ああ、だめだ。君は古すぎる」


落胆したように呟き、丁寧に戻す。


一つ。

二つ。

三つ。


そして、最後の一体。

まだ、わずかに“新しい”それに顔を寄せる。


静かに、目を閉じる。


――。


微かな音。


擦れるような、掠れた声。

『……いや……たべ……ないで……』


弥勒の口元が、ゆっくりと歪んだ。


「……ああ」


まるで恋人の囁きを聞いたように。

「そうか」


優しく、頬を撫でるように骨に触れる。

「君は――食べられたんだね」


くすり、と笑う。

「いいね……それは、初めて聞いた」


その声音は、喜びに満ちていた。



四年前――A県。


人の寄りつかない空き地で、

黒いビニール袋が見つかった。


一つではない。


7つ。


中身は人間の骨だった。


無造作に詰め込まれたそれらは、

やがて四人分の遺体と断定される。


だが。

幾つかの部位は、ついに見つからなかった。


通報したのは近隣住民。

処理は迅速だった。


だが捜査は、止まった。


手掛かりは出ない。

身元も曖昧なまま。


事件は――静かに沈んだ。


迷宮入り。

――のはずだった。


四年後

再び、骨が見つかる。


四年前と同じように黒いビニール袋に包まれて

類似する事件 

特務課の御堂弥勒が呼ばれる。


「……いや……たべ……ないで……」


弥勒は、ふと顔を上げた。

その、フレーズ聞き覚えがある。


四年前の、あの骨。


あの時は、断片的にしか拾えなかった声が――

今は、はっきりと。

「新しいね……そうか」


小さく、笑う。

「まだ、終わっていなかったんだね」


静かに、嬉しそうに。

「――また、始まるのか」


その目は、どこまでも優しかった。

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