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水螢  作者: タケウマ
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第五.五話

救急車の中、目の前で眠る少女を見ながら冴木は何が起こったのかを考える。


鈴木と合流した後、冴木はそのまま車の中で志水澪音が出て来るのを待った。

尾行をするためだ。

なぜなら彼は知っていたから。

あれは心当たりはあるが、警察には頼らず自分で調べる。

そう考えているタイプの人物だと。

そしてそういう人物は大抵ほかの誰も知らない重要なことを知っている自信があるのだと。

ほどなくして志水澪音は学校から出てきた。どうやら学校は早退したようだ。

だが、自宅方向とは違う方向に進んで行った。

さっそく行動を起こしたのだと思い、尾行を開始した。

車は入れない山道に入ったので鈴木と二人、車を降りて尾行を続けた。

やがて吊り橋を超えたところで川岸に降りていくのが見えた。

だが川は昨日の雨で増水しており川岸は完全に沈んでいた。

すぐに引き返すだろうと思いみていたが志水澪音はそのまま真っすぐ進んで行きやがて見えなくなった。

それを見た冴木は急いで吊り橋を渡りあたりを見渡した。そして濁流の中で一か所だけ完全に流れのない淵があることとそこから泡が出ているのを発見した。

ちょうどその時、鈴木が車から縄を持ってきた。鈴木はそれを素早く自信に巻き付け木を滑車代わりにして端を冴木に持たせた。

そして自身は淵に向かって降りて行った。足元を濡れた苔で滑らせながらも到着し、なんとか志水澪音を引き上げることに成功したのだった。


ここまで振り返ってみてやはりおかしいと思いいたる。

志水澪音は真っすぐと進んで行った。足元は苔で滑るし横から濁流が押し寄せているのにだ。

そして引き上げられた彼女は無傷で少し水を飲んでいただけだった。

「今宗教勧誘にでも来られたらころっと入信しちゃいそうだね」

「たしかに彼女は本当に運がいいですね。あの状態の川に飛び込んで外傷はないですし、バイタルも安定してますからね」

「運ね~」

救急隊員の言葉に冴木は少し言い返したかったができなかった。

あれはどう考えても運がいいとかそういう話ではなかったのだが、見た人間にしか信じられないだろうと思ったからだ。

今頃鈴木も上に報告しただろうが信じてもらえるとは思っていない。親友が行方不明になってしまったことがショックで自殺しようとしたと考えるのが妥当だろう。

「はてさて、どうなることやら」

冴木のつぶやきは誰の耳に入ることもなく中に消えていった。

お読みいただきありがとうございます。

感想、意見などございましたら是非お書きください

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