血
帰り道、
「じゃあ私とアレンはここで」
「またね。和乃ちゃん、夜端」
「うん。また明日」
「バイバイ」
ミィは何者なのか。
ミィの過去には何があったのか。
それ以外にも聞きたいことがある。
だから話そう。
ミィと2人で。
「ところで夜端」
「ん?」
「気づいてる?」
「…あぁ。妖魔の気配が現れたと思ったら直ぐに消えるを繰り返してるな」
4人で帰ってるときからそれが続いる…
キオクの仲間か?
「おそらく声聞こえているよね」
「うん。聞こえてるだろうね」
「聞こえてるなら、ここに来なよ」
私たちはどの方向から来てもいいように、背中合わせになり構えた。
「来ないの?」
気配が消えた……?
「来ないのか?いつでも来なよ……」
「はい。来たよ」
「「!?!?」」
なぜ?
私たちはどこから来てもいいように構えていたはずなのに……
こいつは目の前に現れた。
どういうことだ?
「あれ?せっかく来たのに反応薄いね」
「……目的は?」
「うーん…。敵情視察みたいな感じ」
見た目は中学生くらいの見た目か。
「キオクの関係者か?」
「癪だけど、そうだよ」
「そうか……それじゃあ、情報吐いてけよ」
私と夜端は同時に拳を繰り出した。
拳には手応えがある。
「……嘘でしょ?」
「まじ…?」
手応えの正体は夜端の拳だったのだ。
「どうしたの?仲間割れ?それとも、不意打ちかつ至近距離で拳外したのかな?」
「こいつ……」
あれは避けられる要素がどこにもないパンチだった。
それなのに避けられた……
もしかして、こいつも原初姫?
「じゃあ、私は逃げるね。バイバイ!!」
「え?」
理解するのが遅れた。
彼女が逃げたのだ。
おそらく、相当の実力者なはずなのに逃げるとは……
「追いかけよう!」
「うん」
私たちは走り出した。
それにしても……
「夜端の拳、やけに痛いわね」
「僕には特別な力があるからね。……それがない和乃はなんでピンピンしてるの?」
「いや、ほんとは痛いよ。でも、お姉ちゃん程じゃないし……とりあえず平気だった」
「和乃のお姉様にお会いしてみたいね」
今は追いかけるのに集中しなきゃ。
まだ、ギリギリ追いつけている。
いゃ、遊ばれてるな。
舐めやがって……1回ひっぱたく。
「あいつ、倉庫に入ってったぞ」
もう使われていない倉庫に入っていった。
「罠じゃない?」
「罠だとしても、このチャンス逃せない」
行こう。
あいつに情報を吐かせるんだ。
「人や妖魔の気配は無い。今がチャンスだ」
「うん。行こう」
錆びて重たくなっているドアに手をかけた。
中に光が入っていく。
「誰かいるのか?」
「誰も…いない?」
おかしい。
気配が1つもない。
さっきのやつはの気配は……
「うわぁ!!?」
「夜端!?」
一体何があったの!?
「どうしたの!?返事して……」
ガシャン
ドアが閉まる音がした。
誰かがいる。
なのに、誰の気配もない。
「夜端!!どこにいるの!?」
「どこなのぉぉ!夜端ぁぁ!?」
「誰っ!?」
「どうも……」
同時に電気がつき、顔が見える。
その顔は何回か見た。
覚えている。
「キオクちゃんだよぉ♪」
「キオク!!」
ここにいるのはキオクだけじゃなかった。
見える限りだと50人くらいいるか?
「よぉ、和乃。元気してたか?」
「私がいない学校は楽しかった?」
安藤兄と安藤がそう話しかけてくる。
そうか。
私は嵌められたのか。
「キオク、何が目的なの?」
「何って、どういうこと?」
「私を狙う理由は何?」
「うーん… 本当は言わない方がいいけどさ、ヒントあげる!!」
さぁ、どんな情報をくれるの?
「私達には奪いたいものがある。それは明確な記憶と冷静な脳。わかった?」
なんの話だ?
さっぱり分からない。
私は少し右にずれた。
すると、そこにはバットが振り下ろされた。
「良けれるのかぁ。仕留めるつもりだったのになぁ」
「邪魔をしないで安藤兄」
「安藤兄って言い方面白いね」
私は次々と来る攻撃を避ける。
でも、避けても避けても攻撃はやまない。
そんなん50人くらいいるんだから当然だって?
違う。
この攻撃は安藤兄1人だけのものだ。
今まで簡単に倒せていた相手がめちゃくちゃ強くなっていたのだ。
「おかしい!こんな短期間で強くなれるはずがない!」
「お前は今どんな気持ちだ!!?」
安藤兄がバットを振り下ろした。
今だ!
私は腕をチョップし、バットを落とした。
左手の裏拳を顔に直撃させ、そのまま右手でこめかみを掌底打ちした。
「いっっってぇぇえなぁぁあ!!!」
これでも意識を失わないの!?
なんでだよ!?
「答えてあげよう。ここにいる50人全員に私は血を1滴あげたんだ」
「血?」
「知ってる?妖魔の血は、肉は、体内に取り込めば強くなるんだよ」
妖魔にまだこんな能力があったなんて……
「だけどね、摂取しすぎるとね、心臓が早くなりすぎて弾けちゃうんだ」
なるほど。
だから1滴か。
それにしても、強くなりすぎだろ。
「ここからは50対1だ。和乃ちゃん」
「…クソ」
一撃目をうける。
すぐに二撃目がくる。
三撃目、四撃と続く内に避けられなくなる。
ただ、体に痛みを感じる。
その痛みは段々と強くなっていく。
いや、なくなっていく。
おそらく感覚が麻痺し始めたのだろう。
あぁ、こんなところ来なければ良かったな。
アレンはまだ話したいことが。
すみれはスポーツで決着がついてない。次はサッカーって言ってたっけ?
夜端は……無事かな?
こんなところに夜端を連れてきたことは間違いだったな。
はぁ。
こんなところで死んじゃうのか。
『死は報い。今までの業が返ってきただけ』
あの人の言葉が蘇ってくる。
これも報いか。
今まで人を助けてこなかった。
もし、今まで人と信頼関係を築けていれば、助けてくれる人…いたのかな?
それでも、だとしても……誰か助けて欲しい。
誰か来て……
お願いします。
私はいいから、私のことはいいから夜端を助けて。
「誰も助けに来ない。残念だね」
何かがへこむ音がする。
「君は悲しいね」
何がにヒビが入る音がする。
「ところでキオクさん。さっきからしてる変な音何?」
「……どうしてここがわかった」
「キオクさん?」
「私は結界をはっていたのに……なぜだ!?」
ひょっとしたらこの戦場をひっくり返してくれるかもしれない。
そんなことを思ってしまうくらい……
完璧なタイミングだった。
「あんたの結界なんて簡単に見破れるよ、キオク」
天井に大きな穴があき、1つの人影が現れる。
「さぁ、終わらせようか」
「ミィ…」
敵多き戦場に現れるは謎多き妖魔であった。




