仕返し
「泣き止んだか?和乃」
「うん。泣いてスッキリしたよ」
「それなら良かったよ」
私には少し気になることがあった。
「ねぇ夜端。あなたキオクと戦ったって言ったけど、あいつが何者かと知ってるの?」
「詳しくは知らない。でも…人間じゃないことくらいはわかるかな」
「…そっか」
というか、キオクと戦ってそんなに傷がないのはなんでだろうか…。
「和乃ちゃん。もしかして妖魔の話?」
「うん」
「アレンも知っているのか!?」
「そうだよ。アレンは妖魔と関わりがある」
「あいつは妖魔って言うんだな…」
もしかして、夜端は妖魔のことあまり知らないのか?
ん?
視線を感じたので見ると、すみれが眉をひそめていた。
こんな時に「どうしたの?私に胸の大きさ負けて怒ってる?」なんて聞いたら殺されるんだろうな…
「どうした?和乃に胸の大きさ負けて怒ってる?」
「違ぇわ!!」
夜端…お前は良い奴だったよ。
こうして、夜端は星になったのであった。
こんな茶番は置いといて、
「すみれ、どうしたの?」
「…話聞いてて思ったけどさ、あんたら厨二病?」
「「「へ?」」」
「え?おかしいの私なの?」
「「「真面目な話してたつもりだったんだけど…」」」
「……嫌になりそう」
そっか。
すみれは妖魔のこと知らないのか。
私はすみれと夜端に妖魔についてと、今の状況について説明した。
原初姫のことや、冥界のことも話した。
「信じられないわね…。まるでラノベだよ」
それでも現実なんですよ。
「とりあえず、キオクの対策しないとね」
「あ、その件については大丈夫だ。心配ない」
「え?キオクに勝てるの?」
あれは、あれには勝てないだろう。
勝てるとしたら…姉くらいか。
「なぁ和乃。あんたの知り合いにココロって名前のやついるだろ?」
「ココロ?…あぁ、ミィの事ね。ミィがどうした?」
「昨日の9時以降、そいつを見たか?」
「?うん。見たよ」
「傷は?」
「特になかったよ」
「やはりか…」
夜端はミィのことを知っているのか?
何故だろう?
そんなことを思ってると、それに答えるように夜端が話し始めた。
「昨日の夜、この学校の屋上でキオクと戦った。結果は惨敗だったよ」
「え?でも夜端さ、今傷無さそうに見えるけど…」
「俺がトドメを刺されそうな時、ある女性がキオクを蹴り飛ばしたんだ。その女性のことをキオクは『ココロ』と呼んでいた」
ミィが夜端を助けた?
色々と疑問が増えた。
1つはなんでミィは夜端が戦っているところにちょうど助けに来れたのか。
2つは何故キオクと知り合いだったのだろうか。
3つはキオクに気付かれずに近づけたのか。
こんな感じだ。
「俺は話を聞かせないためだろうけど、気絶させられたんだ。でも、俺を傷つけないために手を抜いたんだと思うけど意識がギリギリあったんだ」
「で、どんな話が聞けたの?」
「キオクは元原初姫で、今は何者かに仕えている。訳あってキオクもココロも『与えられた能力』というものが使えない。という事は聞き取れた」
「与えられた能力?」
なんじゃそりゃ?
聞いたことないな…
ミィは自分のこと話さないからな。
ブキさんなら話してくれるかな?
「ここからは和乃の話やあいつらの会話を聞いた俺の立てた仮説なんだが、もしかしたら原初姫の作った概念はそのまま名前になるんじゃないか?」
「え?」
どういうことだ?
名前と概念が関係している?
「なんでそう思ったの?」
「和乃がキオクに殴られている時、最後にキオクが最後に言った言葉覚えてる?」
たしか…
「記憶の改竄は得意って言ってた気がする」
「そう!それだよ。俺にはそれが嘘に聞こえなかったんだ」
「でも、それだけ?」
「俺が知っているのはそれだけだよ」
「ならそれは…」
「でも、和乃には心当たりがあるんじゃない?」
心当たり?
そんなものあったっけ?
ミィの名前はココロだから、心に関係すること…
あるか?
あるのか?そんなもの。
思い出せ、今までのミィとの生活を…
「あっ、」
そうだ。
彼女は何度も私の心を読んだような発言をしていた!!
だとしたら夜端の仮説は、
「あってるってことだ」
「やっぱりそうだよね」
「うん」
夜端の仮説が当たっていると確定していいだろう。
なら、ミィの作った概念は『心』
キオクの作った概念は『記憶』
ブキさんの作った概念は『武器』
ってことになる。
「少し前に話を戻そう」
「?」
「キオクと戦うことになっても大丈夫という件についてだ。あれからココロは無傷だったらしいね」
「うん。さっきからそれがどうしたの?」
何が言いたいんだろうか。
「学校には戦った跡があった。つまり、ココロとキオクは戦ったことになる」
「!!!」
ようやく気づいた。
夜端が言いたいことは、ココロはキオクよりも強いということだと。
「そう。和乃の近くにココロがいる限り、キオクは絶対に俺達を傷つけられない」
でもそれには大きな穴がある。
「いつもミィがそばにいるとは限らないよ」
「和乃ちゃんの言う通りだよ。それに、ミィさんに何回も戦わせるのは良くないよ」
そうだ。
ミィにも体力がある。
何回も何回も戦えるわけじゃない。
「体力の面もある。でもそれは一旦置いておこう。いつでもそばにいれないというやつについて話そう」
「うん。それで?ミィさんに無茶を言うわけじゃないでしょ?」
「うん。最近のニュースで学校から3km離れた山に隕石が落ちてきたってやつ…見た?」
「見たけど…それがどうした?」
「その山の方向とココロが俺を助けに来た方向が一緒だったんだ」
それとこれの何が関係してるのか…
「ココロはキオクに気付かれずにそこまで来たんだ。それはとても離れていたということでもある。そして、蹴りには相当の威力があった。和乃、わかる?」
夜端が言いたいことは、普通ならありえない。
でも、ミィなら……
「あり得ると思うよ」
「和乃なら理解できると信じていたよ」
ほかの2人は首を傾げて眉を寄せている。
そりゃ当然理解できないよね。
「夜端が言いたいこと…」
それは、
「あの山はミィがそこから学校に飛んだ衝撃でクレーターができていたんだ」
「「???」」
山にできたクレーターは、ミィが勢いよく地面を蹴って飛んだ時にできたものだと私と夜端は思っている。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!!」
「どうしたの?」
「どうしたのって…もういいや。あんたたちの言っている3kmジャンプはいいとして、夜の暗闇に3km先に正確に飛ぶにはしっかりとキオクの位置がわかってないと飛べないよ」
「確かに…」
それはそうだ。
それほどの身体能力があっても、それが出来なければ夜端を助けることはできないはずだ。
「身体能力がそれほどあるんだったら、目が良くてもおかしくないよね」
「でも、目が良くても構造上、暗闇だったら見えないよ」
「あ!!」
私はあることに気づいた。
ミィが暗闇を問題なく見られることに。
「どうしたの?和乃」
「猫だ!猫だよ!」
「「「猫?」」」
私は自分の考えを3人に伝えた。
ミィは前まで猫耳やしっぽを生やしていた。
それはつまり、体の一部を猫の一部に変えることが出来るんじゃないかと。
「なるほど!目の部分を猫の目に変えれば暗闇でも問題なく見えるってことか!!」
「「ああ!!」」
猫の瞳は暗闇でも問題なく見られるような構造になっている。
なら、3km先の暗闇を見ることも可能だろう。
とりあえず、これで3つの謎が解けた。
1つ目は、遠くからその視力を使って監視していたから。
2つ目は、原初姫繋がりで。
3つ目は、遠くから飛んで来たから。
これで謎は解けたけど、1度ミィとは話し合う機会を作った方がいいなと思った。




