一橋和乃
お皿洗いをしている途中に考えてみた。
①猫を拾う
↓
②人の姿(猫耳尻尾つき)になる
↓
③料理をつくる(美味しい)
と、今の状況はこんな感じだ。
冷静に考えて思う
どういうこと?
本当に意味がわからない
考え事をしているとお皿洗いはいつの間に終わっていた。
高校に行かなきゃ…
行きたくないけど行かなくちゃいけない…憂鬱だな
そんな気分を吹き飛ばすような声がした。
「献立は朝とほとんど同じになってしまいましたが、お弁当つくっておいたので是非持っていってください」
私はお弁当がいるなんてことこいつに話していない、
なのにこいつは知っていた
なぜだ?
「弁当箱が乾かしてあったからですよ」
また思考を読まれた。
ほんとになんなんだよこいつ
ということで1番気になっていることを聞いてみることにした
「なんで、こんなにしてくれるの?」
「え?」
さあ、どう答える?
あいつらと同じだったらすぐにわかる
どうせ恩を売るために、私の立場だけをみて近づいているんでしょ?
私は父が社長、母が弁護士の家に生まれた。
よくある漫画のように愛がなかったなんてことはなかった。
父も母も私を大切にしてくれて私は幸せに育った。
私を愛してくれると同時に厳しい一面もあった。
私が幼稚園の頃、
仲の良かった友達がいた。
その女の子は金髪で、あるキャラクターの描いてある水筒をすごく気に入っていた。
だけど、私が躓いて
水筒を落としてしまい、
割ってしまった。
その友達はその水筒がお気に入りなので当然泣きじゃくっていた。
私はその時その子に謝らずにこう言った。
「大丈夫。お父さんたちが新しいの買ってくれるから」
と。
家に帰りその話を父にしたら
ものすごい勢いで怒られた。
私はその時まで親に怒られたことがなかったので、
怒っている父を見て目の前に猛獣がいるような気分になった。
当然私は泣いた。
泣いている私に父はこう言った
「俺は弁償することに文句は言わない。ただその時にお前はその子に謝ったのか?
謝ってないだろ。それに文句を言っているんだ。」
私はこの時初めて怒られた。
その後、きちんと謝って仲直りをした。
そのままその子と小学校に上がった。
クラスはそこから一緒になることは無かったから全然話さなくなった。
私はたくさんの友達ができた。
とても嬉しくてその時は何も考えなかった。
でも気づいたんだよ、3年生になってから
こいつらは私を見ていない
私の“立場“を見ているんだと。
私は悔しかった。
そして憎かった。
この立場も、それ以外に魅力がない私も。
それから私は学校で誰とも話さなくなった。
仲の良かったあの子でさえも。
それは高校生になった今でも変わらない。
私は疑っている。
こいつだけじゃない、
みんな疑っているんだ。
きっと見ているのは私じゃない
「なんでって、助けてくれたからに決まってるじゃないですか」
「え、」
嘘に決まってる。
どうせこいつもそうなんだ、
立場以外何も見ていない。
嘘をついているに決まってる。
それでも彼女は考えを読んだかのように
「嘘じゃないですよ」
と、笑って言った。
それでも私は信じない。
絶対に
でも、これだけは…
「…名前」
「へ?」
「名前を聞いているの。早く答えて」
その質問に彼女は、
「ミィです。ミィと気楽に読んでください。ちなみにご主人様は?」
信用したわけじゃない…
「和乃。一橋和乃」
「わかりました。和乃様」
「さ、様はやめて。和乃でいいから」
「はい。和乃さん」
絶対に信用しない。
だけど…
「ミィ。その……弁当ありがたくいただくね」
「はい」
他の奴ら奴らより信用してもいいかもしれないと思った。