殴り合い
「お!もしかして私を殺す決意できた?」
「うん。たった今ね」
「最近殺せば解決するっていう考え方の子多いよね。和乃といい夜端といい、ね。」
確かに、あの2人は人を殺しても特に何も思わないだろうな…
それが他人や大切な人を傷つける人だったらに限るけどね。
ふと、私はしゃがんだ。
すると、キオクの足が頭の上を通り過ぎた。
「避けるなや」
「避けるやろ」
「そりゃそうか」
「そりゃそうだ」
私はすぐに距離を詰め、右手で顎の下を殴った。
「痛っいなぁぁ!!」
気絶しないことはわかってたけど、長引きそうだな…
よし。
「30秒でお前を倒すよ」
「あ?」
ここで初めて笑みを浮かべていたキオクの顔が歪んだ。
「舐めてんのか?」
「舐めてないよ。それに、『誘発』が怖くて能力が使えないキオクなんて怖いわけない」
「…気づいてたんだ」
キオク。
私と同じ時に生まれ、原初姫として妖魔達の前に立つのを自らやめた存在。
創った概念は『記憶』。
そして、与えられた能力は『爆撃』。
与えられた能力というのは原初姫のみに与えられたもう1つの力のことである。
爆撃は爆発関連なら基本なんでも出来る。
普通なら相手をパンチした時に手を爆発させ相手に大ダメージを与えることができる。
私も相手にするのは疲れる。
でも、今は普通じゃない。
訳あってキオクは能力が使えない。
「楽しみにしててよ。面白いものが見れるよ。ところでさ、能力が使えないのはココロもだよね?」
「……私は使ってないだけ」
「嘘。怖くて使えないんだよ。君がみんなを不幸にするのが」
確かにそうなのかもしれない。
いや、そうだ。
確信できる。
「まぁ、今能力についてはいい。今から30秒で片ずける」
「やってみなよ」
さぁ。
腹をくくれ。
私はあの時の私だ。
ミィじゃない。
ココロとしての、英雄としての私だ。
「いくよ」
あの子の笑顔を取り戻すために戦う英雄だ。
キオクの目の前に立ち、蹴り上げた。
間髪入れずにもう1発横に蹴った。
「ぐっ、」
受け身が取れなかったのかとても痛そうにしていた。
残り25秒。
私をすぐにキオクの腕を掴み、柵の外に投げた。
私も柵を飛び越え、空中にいるキオクの腹を踏みつけてそのまま地面に落ちた。
「痛えよ…」
首を掴み地面に叩きつける。
今度は持ち上げて膝で蹴る。
反撃はさせない。
ここで確実に殺す。
「力…強くなったか?」
苦しそうにしながら聞いてきた。
私は答えない。
キオクの狙いは喋っている私の顎を蹴り、舌を噛み切らせようとしているんだ。
残り17秒。
ただただ抵抗出来ない相手を殴る。
気分がいいものでは無い。
でも、気分が悪くもならない。
「…」
ついに何も喋らなくなった。
なら終わらせてしまおう。
私は手刀をつくり、顔めがけて振り下ろそうとした時、
「ねぇねぇ」
「へ?」
肩をトントンされて振り返ると誰もいなかった。
急いでキオクの方を向くと、いなくなっていた。
「やられたね…」
まさか君も関わっていたとは…ね。
これも因縁かな、タマシイ。
君は、君とあいつは絶対に許さない。
タマシイとニンゲン。
てことは…目的はあれか。
「これは和乃さんを巻き込むことになりそうだね」
この殴り合いは横槍が入り、終わった。




