微笑み
その後、近くの公園で血を流してから学校に行った。
学校に行ってもどうせ楽しくないだろうけど…アレン達がいるからな
何かを考える度に心のモヤモヤはより大きくより深くなる。
考えても無駄ね。とりあえず学校に行こう。
学校についても授業をして、あいつらに呼び出されるくらいだけど、アレン達と話せるならどうでもいいと思えてしまう。
昼休み、私は急いで音楽室に向かった。
なぜなら少し遅れたからだ。
「おっ、来たね和乃ちゃん」
「遅いよ」
「もう半分食べちまったよ」
「ごめんごめん」
あぁ、やっぱり大切な人と過ごせるのはいいことだ。
ずっとみんなで過ごせたらいいのにな…
いや、暗いことを考えてないで明るい話をしよう。
「ねえ、みんな…」
ピコン
自分のスマホから着信音がした。
私の連絡先を知っているのはこの3人と安藤達だけ。
この3人は今スマホを触っていない。
つまり…
「わっ、和乃…ちゃん?」
「あんた…」
「なっ、なんでそんな顔してるの?」
顔?なんの事だ?
「何?普通の顔でしょ?みんなしてどうしたの?私は別に何も無いよ」
当然笑えているよね?
この3人と過ごせているんだから…
そうだよね?
「和乃…何も無い人はそんな怒りに満ちた顔しないよ」
怒り?
「それにあんた、苦しそう」
苦しみ?
「悲しいことがあったの?」
悲しみ?
そんなものはない。
そんな顔はしない。
そんな感情はない。
いや、わかってる。
自分が1番わかっているんだ。
これこそがモヤモヤであり、負の感情だと。
でも、認めたくない。
だから、今日…
今日で終わらせることにするよ。
「ごめん。少し用事を思い出した」
「え?あぁ」
「わかったわ」
「…」
「それじゃあね」
私は屋上に向かう。
屋上にはアイツらがいる。
「遅い。もっと早く来いよ」
「…」
こいつらのせいで…
「何?だんまり決め込むつもり?」
「…」
こいつらがいるから…
「答えなさい、よっ」
その瞬間私は理解するのが遅れた。
水をかけられたのだ。
「これはね、そこら辺の川の水。あんまり掃除されてない汚い水だよ」
「…それだけ?」
「あ?」
もうダメだよ。
君たちはやりすぎた。
「それだけなら…死ね」
私は右の拳を奴のお腹に突き出した。
「なっ!?」
別のやつらが驚いている。
心底どうでもいい。
「こっ、こんなことしししっしていいと思ってんの!?」
「確かにすみれが虐められるのは困るな」
「でしょ!だったら…」
でも…
「でも、ここで殺せば関係ない」
「ひっ!?」
私は全力の殺意を向けていたと思う。
不思議だな。
人を殴るのに何も抵抗がない。
今泣きそうになっているあいつらの方が、私よりよっぽど人間かもしれない。
「たっ、助けて!!!」
「無駄だよ。人気のない屋上を選んだのは君たちでしょ?」
私は左手で逃げようとする女の髪をつかみ、右手首を絞め、左手を離した。
「ヴぐっ…」
私はそのまま歩いて柵の付近まで近づいた。
「私ならここから落とせるよ」
「や…やめで…」
そんなの…
「やめるわけないじゃん」
私は柵の外に放り投げた。
投げたはずなのに…彼女は私の後ろにいた。
「よぉ、久しぶり」
「やっぱりお前が関わっていたか」
あの時の妖魔だ。
おそらく彼女はこいつに助けられたのだろう。
「妖魔がなんで私を狙うの?」
「おっ!私が妖魔だってこと気づいてるんだ!」
いやでも気づかされるよ、
このプレッシャー、気配、視線。
とても人間とは思えない。
「私たちに言葉はいらない気がするな」
「確かにね…じゃあ、行くよ!」
私は今全力で殴りかかった。
確実に顔を捉えたと思ったのに…
今地面にひれ伏せているのは私だ。
なんで?
なんで勝てないの?
「君じゃ足りないよ。もっと足掻いてくれないと…極限までね。そうしないと目的が果たせない」
足掻いてるよ。
妖魔という圧倒的な壁に。
でも届かない。
私じゃ足りないんだ。
「じゃあ、少し痛くするからね」
私は胸ぐらを捕まれ、何発も殴られた。
痛い?
いや、痛いを通り越している。
もう死ぬかも、そう思った時にふと紙飛行機が飛んできた。
妖魔はそれをキャッチして、紙を開いた。
すると気味の悪い笑顔になり、
「また会いに来るよ。もしこんなことがあったら、私が来るからね。あと、他の人にチクるのもなしね。私記憶の改竄は得意なんだ。それじゃあ」
完全な敗北だ。
私は負けたんだ。
私は抵抗できない渦の中に取り残されたままなんだ…
誰か…
誰か…
~夜~
夜の学校は不気味な雰囲気を持つ。
そんな夜の学校に立ち居ろうとする人はあまりいない。
でも、今日は2つの人影があった。
「あの紙飛行機は君だろう、胸守夜端」
「あぁ。お前を倒す。和乃の苦しみを終わらせるんだ」
「かっこいいね」
こんな夜は高ぶってしまう。
そんなことを思う妖魔が1人。
この夜に終わらせる。
そんなことを思う人間が1人。
そんな夜が始まった。




