--- ## 第11話 「消えないように、名前を縫い付ける」
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## 第11話 「消えないように、名前を縫い付ける」
ルナは、消えかけたままそこにいた。
完全にはいなくならない。
でも、確実に“世界の外側”に引っ張られている。
朔はその夜、一睡もしなかった。
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### 図書室
翌日。
朔は学校の図書室にいた。
恋愛でも青春でもない本を片っ端から開く。
存在。認識。記憶。概念。
ルナを救う言葉を探している。
「……こんなの、あるわけねぇだろ」
つぶやいた瞬間。
後ろから声がした。
「あるよ」
振り向くと、司書の女性がいた。
「あなた、“消えかけてるもの”を探してる顔してる」
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朔は一瞬黙る。
でも、隠す意味がないと思った。
「……人です」
女性は驚かない。
ただ本を一冊差し出した。
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### “境界認識記録”
表紙にはそう書かれていた。
中はほとんど空白。
その中に、かすれた一文だけがあった。
> 「存在は、観測と呼称と感情の三点で固定される」
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朔の呼吸が止まる。
観測。
呼称。
感情。
ルナに全部関わっている。
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### 帰宅
ルナはソファにいた。
でも、朝より薄い。
まるで光が抜けていくみたいに。
「……朔」
「動くな」
思わず言う。
ルナは少し笑う。
「もう動いてないかも」
冗談じゃない。
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朔は本を机に置く。
「お前、条件がある」
「条件?」
「お前が消えないためのやつ」
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ルナは少しだけ目を細める。
「また難しいこと?」
「簡単だ」
朔は言う。
「名前だ」
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### 第一の固定
朔ははっきり言う。
「ルナ」
その瞬間。
空気が少しだけ“戻る”。
ルナの輪郭が、わずかに濃くなる。
「……今の」
「効いた」
朔は確信する。
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ルナは自分の手を見る。
「ちょっと、戻った気がする」
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朔は続ける。
「次は“存在の確認”だ」
「どうやって?」
朔は迷わず言う。
「毎日、俺が見る」
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ルナは小さく笑う。
「監視?」
「違う」
「保証だ」
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その瞬間。
ルナの目が揺れる。
ほんの少しだけ安定する。
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### でも
完全には戻らない。
むしろ、逆にわかる。
これは“治療”じゃない。
**維持だ。**
油断したら、また消える。
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ルナはぽつりと言う。
「朔」
「なんだ」
「それ、私がいなくならない代わりに」
「うん」
「ずっと必要になるやつだよね」
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朔は一瞬だけ黙る。
そして言う。
「それでいい」
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ルナは少しだけ笑う。
でもその笑顔は、前より優しい。
そして少しだけ、重い。
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## エピソードタイトル
**「名前を呼ぶたび、存在は少しだけ現実になる」**
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