表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/29

--- ## 第10話 「好きの重さで、世界が崩れる」



---


## 第10話 「好きの重さで、世界が崩れる」


朝。


目が覚めた瞬間、違和感があった。


静かすぎる。


朔はすぐに気づく。


ルナの気配が――薄い。


リビングに行くと、ソファに座っているルナがいた。


でも、いつもと違う。


輪郭が、少しだけぼやけている。


「……おはよう」


声はある。


でも、遠い。


---


「ルナ」


朔が近づく。


ルナはゆっくり顔を上げる。


「ごめん」


最初の言葉がそれだった。


「何がだよ」


「昨日の、せいかも」


その瞬間、朔の胸が冷える。


---


### 異変の始まり


ルナは自分の手を見つめる。


指が、半透明になっている。


見えているのに、完全じゃない。


「朔」


「なんだ」


「私、今ちょっとだけ……“いない”」


冗談じゃない。


声は普通なのに、存在だけが崩れている。


---


朔は手を伸ばす。


触れる。


ちゃんと温度はある。


でも、指先がすり抜けそうになる。


「昨日の“好き”か」


朔が言う。


ルナは小さくうなずく。


「たぶん、それ」


---


沈黙。


窓の外の光が、妙に強い。


世界が現実感を失っていく。


---


ルナは苦しそうに笑う。


「ねえ朔」


「なんだ」


「私ね、嬉しかった」


「でも」


声が小さくなる。


「嬉しいって思った分だけ、ここが壊れる」


---


朔は拳を握る。


「ふざけんな」


「ふざけてない」


ルナの声は弱い。


でも真実だった。


---


### 限界


ルナの体が、一瞬だけ完全に薄くなる。


椅子の上に“影だけ”が残る。


「ルナ!!」


朔が叫ぶ。


その瞬間、ルナが戻る。


息を吸うみたいに。


---


「……まだ、いる」


ルナは自分に言い聞かせるように言う。


「でも、これ以上は無理かも」


---


朔は近づく。


両肩を掴む。


「何が無理だよ」


「私が“好き”になったから」


ルナの目が揺れる。


「朔のこと」


---


沈黙。


その言葉は、告白じゃなくて“崩壊の宣告”だった。


---


朔は強く言う。


「だったらやめるか?」


ルナは即答しない。


数秒後、小さく笑う。


「やめられないよ」


---


その瞬間。


ルナの右手が完全に消える。


袖だけが空を掴む。


---


朔の呼吸が止まる。


「おい……やめろよ」


でも、世界は止まらない。


---


ルナは静かに言う。


「朔」


「……なに」


「もう一回、言って」


「何を」


ルナは少しだけ笑う。


「好きって言葉」


---


朔は迷わない。


「好きだよ」


---


その瞬間。


ルナの存在が一気に崩れかける。


光が歪む。


音が遠くなる。


---


ルナは最後に小さく言う。


「それ、やっぱりずるい」


---


そして――


完全には消えない。


でも、確実に“境界線の向こう側”に落ちかけている。


---


## エピソードタイトル


**「好きは救いじゃなくて、存在を壊す引き金だった」**


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ