--- ## 第10話 「好きの重さで、世界が崩れる」
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## 第10話 「好きの重さで、世界が崩れる」
朝。
目が覚めた瞬間、違和感があった。
静かすぎる。
朔はすぐに気づく。
ルナの気配が――薄い。
リビングに行くと、ソファに座っているルナがいた。
でも、いつもと違う。
輪郭が、少しだけぼやけている。
「……おはよう」
声はある。
でも、遠い。
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「ルナ」
朔が近づく。
ルナはゆっくり顔を上げる。
「ごめん」
最初の言葉がそれだった。
「何がだよ」
「昨日の、せいかも」
その瞬間、朔の胸が冷える。
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### 異変の始まり
ルナは自分の手を見つめる。
指が、半透明になっている。
見えているのに、完全じゃない。
「朔」
「なんだ」
「私、今ちょっとだけ……“いない”」
冗談じゃない。
声は普通なのに、存在だけが崩れている。
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朔は手を伸ばす。
触れる。
ちゃんと温度はある。
でも、指先がすり抜けそうになる。
「昨日の“好き”か」
朔が言う。
ルナは小さくうなずく。
「たぶん、それ」
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沈黙。
窓の外の光が、妙に強い。
世界が現実感を失っていく。
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ルナは苦しそうに笑う。
「ねえ朔」
「なんだ」
「私ね、嬉しかった」
「でも」
声が小さくなる。
「嬉しいって思った分だけ、ここが壊れる」
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朔は拳を握る。
「ふざけんな」
「ふざけてない」
ルナの声は弱い。
でも真実だった。
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### 限界
ルナの体が、一瞬だけ完全に薄くなる。
椅子の上に“影だけ”が残る。
「ルナ!!」
朔が叫ぶ。
その瞬間、ルナが戻る。
息を吸うみたいに。
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「……まだ、いる」
ルナは自分に言い聞かせるように言う。
「でも、これ以上は無理かも」
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朔は近づく。
両肩を掴む。
「何が無理だよ」
「私が“好き”になったから」
ルナの目が揺れる。
「朔のこと」
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沈黙。
その言葉は、告白じゃなくて“崩壊の宣告”だった。
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朔は強く言う。
「だったらやめるか?」
ルナは即答しない。
数秒後、小さく笑う。
「やめられないよ」
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その瞬間。
ルナの右手が完全に消える。
袖だけが空を掴む。
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朔の呼吸が止まる。
「おい……やめろよ」
でも、世界は止まらない。
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ルナは静かに言う。
「朔」
「……なに」
「もう一回、言って」
「何を」
ルナは少しだけ笑う。
「好きって言葉」
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朔は迷わない。
「好きだよ」
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その瞬間。
ルナの存在が一気に崩れかける。
光が歪む。
音が遠くなる。
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ルナは最後に小さく言う。
「それ、やっぱりずるい」
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そして――
完全には消えない。
でも、確実に“境界線の向こう側”に落ちかけている。
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## エピソードタイトル
**「好きは救いじゃなくて、存在を壊す引き金だった」**
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