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## 第9話 「好き、と言った瞬間に壊れかける世界」



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## 第9話 「好き、と言った瞬間に壊れかける世界」


夜。


部屋の明かりはつけていない。


窓の外だけが、やけに明るかった。


朔とルナは、並んで座っている。


何をするでもない時間。


でも、その沈黙が今日は重い。


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「朔」


ルナが小さく呼ぶ。


「ん」


「今日、ずっと考えてた」


「何を」


ルナは少しだけ間を置く。


その間が、いつもより怖い。


「私が消える理由」


朔の指が、わずかに止まる。


---


「まだそんなこと考えてんのかよ」


「だって」


ルナは膝を抱えたまま続ける。


「私、あなたと一緒にいると、少しずつ“濃くなる”の」


「濃く?」


「存在が」


その言葉に、嫌な予感が混ざる。


---


ルナは朔を見ないまま言う。


「触れたり、見られたり、名前を呼ばれたり」


「そういうの全部で、私は“ここにいる”って思えるようになる」


「でも同時に」


少しだけ声が落ちる。


「それが増えるほど、壊れやすくなる」


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沈黙。


朔は一度目を閉じる。


そして言う。


「じゃあどうすればいいんだよ」


ルナはすぐには答えない。


長い沈黙のあと、小さく言った。


「たぶん、これ以上好きにならない方がいい」


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その一言で、空気が変わる。


朔は笑いそうになって、やめた。


「無理なこと言うなよ」


「……でも」


ルナの声が少しだけ震える。


「これ以上進んだら、戻れなくなる気がする」


---


朔は立ち上がる。


ルナの前にしゃがむ。


目線を合わせる。


「ルナ」


「なに」


間。


そして――


朔は言う。


「俺、お前のこと好きだ」


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一瞬、世界が止まる。


音が消えた気がした。


ルナの目が揺れる。


呼吸が止まる。


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「……今、なんて」


「聞こえただろ」


ルナはすぐには動かない。


まるで、その言葉を理解するのに時間がかかっているみたいに。


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そして小さく言う。


「それ、言っちゃダメなやつだよ」


「なんで」


「だって……」


ルナの指が震えている。


「それって、私をここに固定する言葉だから」


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朔は一歩も引かない。


「それでいい」


「よくない」


「もう遅い」


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その瞬間。


ルナの輪郭が、わずかに揺れる。


一瞬、透ける。


「……っ」


ルナが自分の腕を見て、息を飲む。


朔はすぐに手を伸ばす。


「ルナ!」


触れた瞬間、戻る。


でも、不安定。


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ルナは小さく笑う。


「ほら」


「だから言ったのに」


でもその笑いは、泣きそうだった。


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朔はそのまま言う。


「それでもいい」


「消えるなら、消えるなりに一緒にいろ」


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ルナはしばらく黙る。


そして、すごく小さな声で言う。


「……ずるい」


「お前もな」


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ルナはゆっくり、朔の袖を掴む。


さっきより強く。


離さないみたいに。


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## エピソードタイトル


**「好きは、存在を固定する呪いにも似ている」**


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