表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/29

## 第12話 「安定したはずの世界が、少しずつ歪む」



---


## 第12話 「安定したはずの世界が、少しずつ歪む」


朝。


ルナは、そこにいた。


昨日までの“薄さ”が嘘みたいに、はっきりと存在している。


ソファに座る姿も、呼吸の揺れも、ちゃんと“人間”だった。


朔は一瞬だけ安心する。


――成功した。


そう思ってしまうくらいには。


---


「朔」


「ん」


「今日、普通に眠れた気がする」


ルナは少し笑う。


その笑顔は、今までで一番自然だった。


「お前、やっと安定したな」


「うん……たぶん」


ルナは自分の手を見て、小さく握る。


「ちゃんと、ここにいる」


---


### 学校


教室。


誰もルナを“見ている”。


昨日までの「空白」が消えている。


クラスメイトが普通に話しかける。


「ねえ、その子誰?」


「転校生?」


朔の胸が少し軽くなる。


成功だ。


そう思った。


---


でも。


---


### 違和感


昼休み。


朔は気づく。


ルナが“笑いすぎている”。


いや、正確には――


**周りに合わせすぎている。**


必要以上に明るい。


必要以上に“普通”。


---


「なあルナ」


「なに?」


「無理してないか?」


ルナは一瞬止まる。


そして笑う。


「無理ってなに?」


その一瞬の“間”が、引っかかる。


---


### 反動


放課後。


朔が荷物をまとめていると、教室の空気が一瞬だけ変わる。


ざわり、とした感覚。


ルナが――一瞬だけ“重なる”。


二人に見える。


同時に、別の場所にもいる気がする。


「……え?」


朔の視界が揺れる。


ルナが二人いる。


いや、違う。


**ルナが“増えている”。**


---


「朔」


ルナの声が複数重なる。


教室の中に、同じ声がいくつも響く。


「朔」


「朔」


「朔」


---


朔は立ち上がる。


「おい……何だよこれ」


ルナは困惑している。


でも、その“困惑”すらズレている。


---


一瞬。


ルナの輪郭が崩れる。


“固定されすぎた反動”みたいに。


---


朔は気づく。


「安定って……こういうことかよ」


---


図書室の言葉が頭に浮かぶ。


> 観測・呼称・感情で固定される


でも今起きているのはその逆だ。


**固定されすぎた存在が、複数の可能性に分裂し始めている。**


---


ルナが小さく言う。


「朔……私、なんかおかしい」


「わかってる」


朔は近づく。


手を伸ばす。


---


触れた瞬間。


ルナが一瞬だけ“重なる”。


元に戻る。


でも――完全じゃない。


---


「これ、ダメなやつだろ」


朔の声が低くなる。


ルナはうなずく。


「うん……私、増えてる気がする」


---


沈黙。


安定の代償は、“過剰な存在化”だった。


---


ルナは少しだけ笑う。


「朔のおかげで、ここにいすぎちゃったのかも」


「ふざけんな」


朔は即答する。


---


でもルナは、少しだけ嬉しそうだった。


「でもね」


「ん?」


「いなくなるよりは、まだいい」


---


その言葉が、逆に怖い。


---


## エピソードタイトル


**「安定は、存在を増やしすぎると歪みに変わる」**


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ