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転生少女は魔法の世界を『漢字』の力で生き抜きます  作者: 灰猫さんきち
第4章

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57/65

57:次の段階

 ヴィオラと男たちの間に立つ。

 ヴィオラは至って冷静な口調で言った。


「何です? プリムローズ。彼らは刃物で襲いかかってきたんですよ。殺意はあるでしょう。返り討ちにして何が悪いんです」


「いやだからって、いきなり殺さなくても。ねえ皆さん、もう懲りましたよね? あとは村長との約束通り、納屋を作ってくれますよね?」


 男たちは真っ青な顔で、ブンブンと首を上下に振った。


「ほら、みんなこう言っているし。殺すより働いてもらった方がいいでしょ。ね?」


 私がなだめるように言うと、ヴィオラは肩をすくめた。


「……仕方ないですね。でも、二度はありません」


 ショートソードの刃を男の首筋につきつける。軽く引くと薄っすらと血がにじんだ。

 この寒いのに、男の額から脂汗が吹き出した。


「次は確実に殺します。取引の約束を破ったということであれば、村長も殺しを許してくれるでしょう。あなたがたは村を救うはずの取引に泥をかぶせた。死ななかったのは、プリムローズの慈悲です」


 ヴィオラは剣を引いた。

 けれど男たちの手を縛ったロープは解いてやらない。鎌と鍬も返さなかった。


「農具は後ほど、次の取引の時に村へ持っていきます。私から事情は説明しませんので、どうぞご安心を」


 わざわざ事情をバラさなくても、怪我をした男たちと取り上げられた農具で予想はできそうなものだが。


「では、帰りなさい。くれぐれも行いには気をつけるように」


「わ、分かった」


 男たちは怯えきって、縛られた手のまま雪の向こうへ消えていった。

 念のため霊珠で確かめてみるけれど、本当に立ち去った後だ。


「やれやれ。こういうこともあるだろうと思っていましたが」


 ヴィオラが肩をすくめる。


「予想していたなら言えよ」


 シルヴァが文句を言うが、彼女は苦笑した。


「シルヴァに伝えると、大根役者で相手にも伝わってしまいますからね。……ただ、あそこの村は村長ぐるみでああいうことをやったみたいですね」


「え? そうなの?」


「農具を返さなかったけど、あっさり呑んだでしょう? もし村長が知らないで自分たちだけで判断したのなら、村長にバレないように必死で農具を取り返そうとしたはずです。それがなかったので、バレてもいいと考えていたのでしょう」


「なるほど……。どうする? 次回はもうあの村はやめておく?」


 気の重い話である。

 でも、全ての人が善人とは限らないか。ああして私欲で襲ってくる人がいると予想しながら、自分たちの身を守らなければならない。


「いえ。これで懲りたようであれば、目をつむりましょう。近隣の村が肉を得ている中、自分たちだけが飢えるのは我慢ならないはずです。子供たちに罪はありませんしね。もちろん、また歯向かうならもう容赦はしませんが」


「了解。……それにしてもヴィオラは強いね。五人相手にあっという間に勝つなんて」


「ミャオ!」


 私の足元で、コタローが得意げに胸を張る。


「おっとごめん、一人はコタローがやっつけたんだったね。それにしても四人」


「行商人は、自分の安全を確保できなければ商売ができませんから」


 ヴィオラは雪で血をぬぐって、剣を鞘に戻した。


「先ほどの人々はただの農民で、武術の心得などありません。これが冒険者やゴロツキになると、もう少し厳しいですね」


「そっか……。気をつけてね、ヴィオラ。私もできるだけ戦うけれど、目立ったらいけないから」


「僕ももっと力になれるといいのだが」


 シルヴァがお手製の魔道具の杖を手に取って、ため息をついた。

 私の霊珠と同じく、彼の魔族の技術も決して表に出せないものだ。

 表に立つ役割はヴィオラが中心になる。


「いいんですよ。適材適所です。ただ、プリムローズは戦闘訓練をした方がいいかもしれませんね」


「そうだね。今までは霊珠の力で押し切ってきたけど。ヴィオラみたいに剣の心得があれば、霊珠を使わなくても戦えるもの」


「霊珠を使った戦闘でも、より力を発揮できるはずですよ。私が教えてもいいけれど、大した腕前ではないので、師を見つけたいところですね」


 喋りながら足を進め、ロバそりを進める。

 最後にトラブルはあったが、近隣四つの村を回り切ることができた。

 丘の斜面に作った倉庫は、肉は完売。代わりに野菜類が詰め込まれている。

 野菜の他にも、少量の乳製品――ミルク(牛乳ではなくヤギや羊のお乳)、バター、チーズなども確保していた。


 野菜と乳製品を使えば新しい料理ができる。

 キャベツが多めだからロールキャベツもいい。

 そろそろ貴族へ売り込みが必要だから、凝ったレシピが必要になる。


「じゃあ、作戦の一段階目は完了ということで。次の打ち合わせをしようか」


 丘の斜面の倉庫に入り込み、それぞれ床に座って作戦会議を始めた。





「ドラゴン料理がすっかりなくなったから、次に村へ回る時までに補充しないとね」


 まず私が口火を切ってみた。


「肉はまだたくさんあるから。もらった野菜を足しながら、焼肉と角煮中心で増やせばいいかな。あと、貴族向けレシピ開発」


「そうですね。私はその間に、領都へ行ってご領主様の奥様に根回しをしてきましょう。できればレシピを一つ持っていきたいところです」


 と、ヴィオラ。シルヴァは居心地が悪そうに座り直した。


「僕はどうすればいい? プリムローズの手伝いか?」


「ええ、それをお願いします」


「ねえヴィオラ、領都は遠いの?」


 私が問いかけると、彼女は首を傾げた。


「この位置からですと、ロバそりで七日程度でしょうか」


「けっこう遠いね。往復だけで二週間か……」


 そんなに長い間、彼女を一人で活動させるのも心配ではある。


「ヴィオラ。私もついていこうか? 飛んでいけば片道一日未満で着くでしょ」


 霊珠の『翼』は放っておくとだいぶ派手に光るが、大きさや光り具合は制御できる。『刃』に意志を込めて大きさを変えるのと同じ要領だ。

 翼を小さく光らないようにしておけば、目立たずに飛んでいける。


「お前は追われているんじゃなかったか? 領都のような人の多い場所へ行っていいのか?」


 シルヴァが言うが、私は首を振った。



ここまでありがとうございます。

7月に入りましたので、毎日投稿から少しペースを落とします。


また、意地悪な感想が多かったので感想欄は閉じました。

では、今後もよろしくお願いいたします。


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