幼少期10
階下に目を向けると、さらっさらの茶色い髪。
オレンジ色の瞳を驚愕に見開いてこちらを見上げている少年。
第二皇子、ウィズレイ・トリハルトだ。
なんでこいつがここに居るんだ?っと思いながらも、相手は皇族。
さすがに階上から見下ろすのは失礼にあたるので、階段を降りようとしたら、私より先に階下へシエルが一目散へ駆け出した。
「レイ!!先触れも出さず押しかけてきて、その家のご令嬢に対する第一声が、気持ち悪いとはなんだ!!いくら、フェリア嬢とお前が友人だとしても、女性に対する態度ではない!」
「いや、でも兄上・・・」
「でもじゃない!まずは、フェリア嬢に対して謝罪!!それから、リドル夫人と、前リドル辺境伯夫妻へのご挨拶だ!!」
私が階下まで降りると同時に、母と祖父・祖母が玄関ホールへ集結した。
ウィズレイは、しぶしぶといった感じで私に謝罪すると、母と祖父母へ急な来訪になった事の謝罪と、受け入れたことへの感謝の言葉を口にした。
祖父母は、呆れながらもウィズレイの訪問を歓迎した。
先ほど、シエルは弟がきたといった。
弟は、ウィズレイだった。
ウィズレイは第二皇子。そのお兄ちゃんということは、シエルは・・・
「第一皇子殿下・・・?」
ぽろりと考えていたことが口から洩れてしまった。
母は頬に片手を添えて、眉がさがっている。
祖父は明後日の方向を見ながら乾いた笑いを浮かべ、祖母は額に手を当てながらやれやれという風に首を振った。
シエルは、気まずそうに頭の後ろをかいた後、私の手をとって目の前に跪いた。
「黙っていてごめんね。休暇中は第一皇子のシェインとしてではなく、一人のシエルとして接してほしいとお願いしていたんだ。その・・・フェリア嬢。私の身分も身分だから、もし怪我の件で責任をとってほしいという事であれば、私はそれに応じるつもりだ。」
シエル・・・シェインは下からのぞき込むようにして問いかけてくる。
普通なら、皇子様と結婚!!!と夢を見るのであろうが、今私の頭の中に渦巻くのはものすごい後悔である。
ヤバい。マジでヤバい。
知らなかったこととはいえ、自国の皇子に剣の練習相手させたあげく、自業自得で怪我したのに、ものすごい責任感じさせてるし。
責任とって。なんて言おうものなら、私将来は皇妃?いやいやいや無理でしょ。
勉強はしてるけれども、おしゃれや流行追うより、新しい武器とか防具みてるほうがルンルンする私には無理でしょ。
しかもよく考えると私、ここ数日シェインの武器やら防具やらを見せてもらうために、結構まとわりついてたよね。
そこまで考えたら、体が勝手に動いていた。
そう、日本の最上級謝罪スタイル、ジャパニーズ土下座だ。
床に正座し、額が床につくかのごとく深々と頭を下げる。
「大変申し訳ございませんでしたー!!!まさか、皇子殿下とはつゆ知らず。無理やり剣の稽古につき合わせたり、本当やりたい放題いたしました。この罰はわたくし一人が受けますのでどうか、どうか家族にはご温情をー!!!」
玄関ホールに私の声が響き渡った。
あわただしく動いていた使用人たちも何事かと動きを止めるくらい。
しかし、10秒たっても20秒たっても、誰もなにも言わない。
土下座スタイルのまま、そっと目線だけ上げて周りをうかがってみれば、祖父母と母は顔を青くして絶句。
ウィズレイは口元を抑えているが、肩がものすごいふるえてるから、きっと笑いをこらえている。
目の前のシェインは、私の手をとって跪いていた格好のまま固まってしまっている。
「・・・あの・・・?」
不安になってそっと問いかけると、一番先に我に返ったシェインが慌てて私の体を抱き起し、そのまま抱っこされる形になった。
シェインの金色の瞳がすごく近くにあってドキドキしていると、その瞳がキッと怒りを含んだ。
「女の子が何してるの!!!?」
シェインの声が玄関ホールに響くと同時に後ろにいたウィズレイが盛大に噴き出した。
誤字脱字報告ありがとうございます(*^^*)




