幼少期9
「はははっ!!さすがは、ジェイクの妹君だ!・・・正直9歳の女の子だと油断していた。なので、最後剣をよけられたときに焦ってとっさに足が出てしまった。」
「わたくしも最後は、勝った!!と思ったのですが、そこが油断になってしまったのですね。自慢ではございませんが、あの初手で避けてから攻撃する方法で、初めて手合わせする方には、負けたことがございませんの。だから今回、シエル様に負けてよかったのですわ。」
「けがをしても?」
片方の手を私の後頭部へそっと当てて、心配そうにシエルは顔を覗き込んでくる。
「えぇ、怪我をしても・・・ですわ。だって、もしこれが本当の争いの中でしたら、わたくしは死んでおりましたもの。今回、自分の欠点がわかってよかったのですわ。」
もし、このまま負けなしで育っていたら、私は本当に危険だっただろう。
今回は自分の慢心が招いたことだから、シエルを責めるのは間違いだ。
「本当に、変わったお嬢様だね。」
シエルはあきれたように笑っている。
後頭部に当てていた手を頭頂部に移動して、ぶつけたところに響かないようにそっとなでてくれる。
その手のやさしさが心地よく、されるがままになっていると、兄が医師を連れてもどってきた。
診断は、思った通り肋骨の骨折だった。
その診断を聞いて、シエルの顔が青くなり「やはり、男としての責任を・・・」などと言いながら部屋を出て行こうとするので、慌てて止めた。
14歳の男の子に男としてとってもらう責任などないし、これはあくまで自業自得だ。
そう考えた時、ふっと何か引っかかるものがあった。
“14歳の男の子”
14歳を年下のように考えている自分の感覚に、もしや前世の自分は結構年齢が上だったのかもしれないと考えた。
翌日、大人しくしていることに飽きた私は、痛み止めが効いていても鈍く痛む胸を押さえながら屋敷内を歩きまわっていた。
使用人達からは気遣う声が聞こえたが、ベッドに居るのに飽きたと伝えると皆一様に苦笑し、無理はしないことを条件に散歩させてもらっている。
玄関ホールの入り口付近までくると、何やら階下が騒がしい。
階段の上からひょっこりと姿を現すと、何人かの使用人が運び込まれてくる荷物をもってあわただしく動いている。
誰かお客様でもきたのかな?でも、私何も聞いてない。
通常、お客様がお見えになるときは、前もって祖父や母から教えられる。
それは、お客様に対して粗相のないようにするためだが・・・。
階上で首をひねって考えていると、使用人たちに指示を出しているシエルの頭が見えた。
シエルもこちらに気づいたようで、急ぎ階段をのぼってきた。
「フェリア嬢、もう動いて大丈夫なの?」
シエルは私の前までくると、私の頭にそっと手をおいた。
私は、スカートを軽くつまんで挨拶をし、大丈夫な旨を伝えた。
さすがに、「飽きた。」とは言えない。
私の返答にニコニコしながら、シエルは頭をなでてくれているが、私は階下が気になってシエルに尋ねた。
「シエル様、先ほどから何やら荷物が運び混まれてきているのですが、どなたかお見えになったのですか?」
私の問いに、シエルの手がとまり、ものすごい苦い顔をされた。
イケメンってどんな顔しててもイケメンだなと思っていると、
「すまない。弟が急に来たようで・・・。迷惑をかける。」
と謝罪された。
「まぁ!シエル様の弟君ですか?お兄様を追って我が家まで来られたのですか?!」
本来、訪問する時は先触れを出すのが当たり前だ。
受け入れる家にだって予定はあるのだ。
それにあの量の荷物だと、シエルと一緒に我が家に滞在する感じだし。
弟さん1人っていう荷物じゃないから、お付きの方も何名かいるようね。
シエル様も護衛の方が何人か付き従っていたから、たぶんそれなりのおうちの方だとは思っていたけれど、詳しくは聞いていないのよね。
でも、お兄様に会いたくて我が家まで来てしまうって、なんだかとても微笑ましいわ。
「ふふふ。お兄様が大好きなのですね。」
なんとも言えない顔をしているシエルに、微笑むと階下から聞き覚えのある声がした。
「うわっ!!フーが気持ち悪い!!」




