幼少期8
頭が痛い。
なんだかすごい速さの映像が頭の中を駆け巡っている感じがする。
誰かに呼ばれている気がする。
呼んでいるのは誰?私は・・・誰?
「●●ちゃん大丈夫?!!」
顔もよく見えない。けれど誰かが私の後頭部をやさしくなでて気遣ってくれている。
そうだ。私、稽古中に頭ぶつけて、一瞬意識飛んだんだった。
あの時は、そう!杖術の稽古中だ!!
長い円筒形の杖をくるくる回しながら打ち合うのが好きで、小学生のころからずっと習ってて。
ただ、狭い室内での稽古だったから、後ろの子の杖が後頭部にヒットしたのよね。
確か、この人は師範だった。
いつもニコニコ笑顔なんだけど、稽古中は本当に厳しくて・・・。
杖だけじゃなくて、居合術も教えてもらったっけ。
私、居合より杖の方が得意だったけどね。
~◆~◆~◆~◆~◆~◆~
「せん・・・せい」
自分の口から洩れた声と、視界には空中に伸ばした手。
ふっと自分がどこにいるか一瞬わからなかった。
前世の記憶と、今の現状の混濁。
虚空に手を伸ばしたまま、ぼんやりと天井を見ていると、視界に鮮やかな太陽が映った。
キラキラのオレンジ、サラサラと柔らかく揺れていて・・・急に伸ばしていた手があたたかな何かに包まれた。
「フェリア嬢?気分はどう?」
ゆっくりと瞬きをして首を声のする方へ向けると、窓からの夕日を受けたオレンジの髪がキラキラと輝いていた。
さっき太陽だと思ったのは、この髪だったんだ。
「フェリア嬢?」
オレンジの太陽・・・シエルは不安そうに私の手を握って問いかけてきた。
あぁ、そうだ。ここは日本ではない。
私は、フェリアだ。
「フェリア大丈夫か?気持ち悪かったり、後頭部以外で痛いところがあったりするか?」
シエルとは反対側から、兄が私の頭をなでながら心配そうに問いかけてきた。
「大丈夫です。ご心配をおかけしっ!!」
ベッドに半身を起こそうとして、胸のあたりに激痛が走った。
息を吸い込んでも吐いても鈍い痛みが走る。
あぁ、これ肋骨いったかな・・・。
痛みに顔をしかめた私をみて、兄は廊下にいる誰かに声をかけているようだ。
「フェリア嬢、本当に申し訳なかった。いくら訓練といっても年下の、しかも女性を足で蹴るなど、男としてなさけない。」
私の手を両手で握ったまま、シエルに謝罪された。
そういえば、練習相手になってもらってて、蹴られて吹っ飛んで頭打ち付けたんだった。
よし、大丈夫!だいぶ頭がすっきりしてきた。
「シエル様、そのように謝らないでください。もともとは、わたくしの我がままで練習に付き合っていただいていたのです。」
「だが!!女性に怪我を負わせるなど、騎士として最低だ。」
「わたくしは、このリドル家が誇る国境警備隊の皆様の中で訓練しております。女性といえど皆様容赦なくしごいてくださいますので、怪我など日常茶飯事なのです。ですから、どうかお気になさらずに。」
ものすごく自分を責めているシエルに安心してもらうために、日々の訓練について話したのだが、ものすごいびっくりされている。
まぁ、普通はね。辺境伯家のご令嬢ですからね。
体に痣つくっただけでも、本来であれば大事件なのだ。
ただ、我が家はもともと軍事に強い家系なので、ご先祖様の中には女性でありながら1軍隊を率いた女傑もいる。
我が家では女性だからと甘やかされることはない。自分でやりたいといったのならば、最後までやりとおせ!がモットーです。
それでも、ものすごく気にしているシエルに私はいたずらっぽく笑いかけた。
「シエル様の騎士道精神が吹き飛ぶくらい、私は強かったですか?」
にんまりと笑った私に、シエルは声を立てて笑った。




