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1000年ぶりの勇者と魔王 〜魔法が使えなかった少年は"世界初のスキル"で覚醒する〜  作者: 土田土


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第八話:ステータスオープン

目の前にいる巨体に恐怖で拳が震える。


ゴブリンキングが吠える。


グォォォォォォォッ!!


巨体が腕を振るうたびに木が折れる。

いや、折れるじゃない。

根こそぎ抜けて空へ飛ぶ。


地面に叩きつけられた瞬間、土煙が爆発した。


(近づくのは危険だ)


ノアはいつかの日に聞いたあの単語を口にする。


「ステータスオープン!!」


光が走り、文字が浮かぶ。


――レベル3


――スキル《勇者》未覚醒

  身体能力・体術・剣術が最高峰になる。


――スキル《魔王》未覚醒

  魔力が無尽蔵、威力・精度が最高峰になる。


(本当に勇者で魔王だ。深いことは分からない。

でもこれだけはわかる。

今俺が持ってるのは"最強のスキル"だ。)


ゴブリンキングが吠えながら突進してくる。

地面がえぐれ、土が波のように盛り上がる。


ノアは手を前に突き出す。


(できるかどうかなんて知らない。

でも、やらなきゃ死ぬ)


あの日のミリアの動きを思い出す。

真似できる保証なんてない。

でも、他に手はない。


「ウォータースラッシャー!!」


空気が震えた。


次の瞬間――森が斬れた。


ズバァァァァァァッ!!


水の刃が放たれ、

ゴブリンキングの巨体を真っ二つにした。


上半身と下半身がずれるように崩れ落ちる。

水の刃はそのまま周囲の木々を薙ぎ倒す。


ドガァァァァン!!

バキィィィィ!!

ドォォォォン!!


森が一帯まるごと崩壊していく。


ノアは自分の手を見た。


(……これ、威力強すぎないか……

 精度も……こんなに?)


倒れたゴブリンキングの胸元が光った。

魔法石だ。


ノアはそれを拾い上げる。


黒い石の表面に古代文字が浮かび上がる。


「……のろい」


前に倒したゴブリンと同じ。

この世界の誰も読めないはずの文字。

俺が人類繁栄のために一番最初に作り出した文字。


ノアは魔法石を握りしめた。


(また……呪い)


倒れたゴブリンキングを見下ろし、

胸の奥が少しだけ軽くなった瞬間――


とてつもない気配を感じた。


森が静まり返る。

風が止まり、音が消える。


(……なに……?)


背筋が勝手に震える。

理由はいらない。本能が叫んでいた。


“来るな”

“見るな”

“逃げろ”


森の奥から、ゆっくり“それ”が歩いてくる。


黒いローブ。

布の端は地面に触れず、影のような輪郭。


ローブの隙間から覗く骨の装飾は魔力で動き、

カタ……カタ……と勝手に震えていた。


顔は見えない。

フードの奥は真っ暗で、光が吸い込まれていく。


なのに――視線だけは感じる。

見られている。心臓を掴まれているみたいだ。


ネクロマンサーが一歩踏み出す。


空気が重くなる。

肺が押しつぶされるような圧力。

視界が揺れる。


(……強い……ゴブリンキングなんて比じゃない……近づかれたら死ぬ)


ネクロマンサーの周囲だけ空気の色が違う。

黒い霧が揺れ、触れた葉が枯れていく。


ローブの裾がふわりと浮くたび、

地面の草が黒く焼けた。


ノアの足が震える。

逃げたいのに動かない。


(……怖い……本当に……死ぬかもしれない……)


ネクロマンサーは何も言わず、ゆっくりノアへ歩いてくる。

その歩みだけで森の温度が下がる。


心臓が握りつぶされるような感覚が走る。


(……来る……)


フードの奥で瞳が赤く光った。


その瞬間、ノアは理解した。


“この世界のどんな魔物よりも危険な存在だ”


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